企業活動における業務システム導入の目的と果たす役割とは?業務効率化を実現した成功事例
業務システムがあれば楽になるだろうな、と考えたことはありますか?
システムがあれば入力ミスが減り、大量のデータを格納できていつでも引き出せます。そこに社内メールもついていたら便利そうだ、などと考えたことがあるのではないでしょうか。
業務システムというと、会社の業務で使うシステムというイメージが浮かぶでしょう。しかし一方で、「基幹業務システム」や「情報システム」という名称も聞いたことがあるでしょう。これらのシステムには、どんな違いがあるのでしょうか。
業務システムの主な役割とは
業務システムは、ひとことでいえば「業務を円滑に進めるためのシステム」だといえます。会社経営上不可欠なシステムといえば、製造業では「生産管理システム」や「在庫管理システム」ですが、これらは基幹業務システムと呼ばれ、広義的には業務システムに入ります。
業務システム | |
基幹業務システム
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情報系システム (業務システム) |
生産管理システム 販売管理システム 在庫管理システム 購買管理システム 会計システム 人事システム |
社内SNS メールソフト スケジュール管理 グループウェア データハウスウェア |
業務システムの定義
現在、基幹システムという言葉の浸透もあって、業務システムは「基幹システム以外のシステム」を意味する場合が多いようです。業務システムの定義が「業務を円滑におこなうためのシステム」なら、対して基幹システムの定義は「経営上不可欠なシステム」です。
つまり、業務システムは「業務の効率化や意思決定支援に繋がるが、なくても支障はない」システムといえます。細かく定義するとそうなるので、これからシステムを発注する時があれば参考にしてください。
業務システムの種類
業務システムには、次のようなものが入ります。
- グループウェア
- メールソフト
- スケジュール管理ツール
- 社内SNS
- データウェアハウス
業務システムとはこのように社内の情報共有、意思決定を促進するシステムを指すので、ここに顧客管理システムや営業支援システム、ドキュメント管理システムなども該当します。
しかし、顧客管理システムと営業支援システムは、その導入効果の高さから「基幹システム」に分類されることも多いのです。
基幹システム・情報システムとの違い
基幹システムの定義とは「経営上不可欠なシステム」であると申し上げました。基幹システムとは「経営に直結するシステム」です。たとえば製造業にとっての在庫管理システムは、経営上不可欠な基幹システムです。情報系システムは業務システムとも呼ばれ、社内SNS、メールソフト、グループウェアなど、情報共有や社内コミュ二ケーションを円滑にするシステムのことです。
業務システムの中にも「バックオフィス系の基幹システム」と呼ばれるものがあり、勤怠管理や財務管理がそれに当たります。
業務システムを導入する目的とは
業務システムを導入する目的は、いうまでもなく「業務効率化」とそれによる「生産性向上」でしょう。本記事の最後にご紹介しますが、勤怠管理や見積もり・帳簿作成をシステム化すると、仕事を効率化できるだけでなく業務標準化も図れ、会社全体の生産性が向上します。
情報を一元化したり可視化することは、思いのほか社員の士気を高めるといわれます。売上や経営状況などの共有は社内統制の透明化に繋がり、近年叫ばれる健全な会社経営の実現に大きく貢献します。
作業の迅速性・正確性
まず、コンピューターの迅速性と正確性で、入力などのヒューマンエラーを減らすことができます。業務に寄り添ってシステムを組めば、入力エラーがあると警告するようにもできます。働き方改革で設けられた新たな規制に引っかからないように、アラート付きでしっかり勤怠管理してくれるシステムも存在します。
メールの宛先間違いや誤送信を防止するシステムもあります。システム化とは「誰がやっても同じにできる仕組みつくり」をすることです。質的にも量的にも同じ成果を出す手伝いをするのが業務システムなのです。
情報管理の一元化
情報という経営資源の一元管理ができることも、システム化の大きなメリットです。膨大な情報量を格納できるため、ファイルの収納場所を確保する必要がなくなることも然りです。
従来は、顧客の注文を電話、メール、FAXとバラバラの形式で受け、営業担当者がそれぞれ紙ベースで管理していました。そして、もし営業担当者が休んだら誰も顧客情報を探せないということも多かったのです。あらゆる経営情報やノウハウを一元管理することは、会社の資産を管理することになります。
情報共有のスピード化
情報共有のメリットは、非常に大きいといえます。システム化の成功事例を見ていると、最も喜ばれている内容の一つが「情報共有化」です。問題が発生しても早期解決でき、社員の一体化も促進してくれます。
情報共有にもレベルがあり、初歩的なものではマニュアルの共有やプロジェクトの進捗具合共有、会議での決議の共有などでしょう。もっと革新的な事例になると、製造機器にIoT技術を搭載し、不具合が発生したらスマホにアラートが送信されるといった例もあります。
業務品質の平準化
業務システムを導入することで、業務品質の平準化も狙えます。従来はこみいった業務になればなるほど個人のノウハウや経験といった属人的な要素に頼ることが多く、人によって対応や品質が大きく異なっていたのではないでしょうか。
システム活用により、その差を埋めることができます。100%というわけにはいきませんが、個人の持つノウハウや経験、判断軸などを形式知化してシステムに集約でき、それを元に各人が業務を進められるようになるでしょう。
それにより、教育コスト低減も見込めます。
収益性の向上
業務システムを適切に活用すれば、収益性の向上にも繋がります。種類にもよりますが、システムの主な役割として下記のようなものが挙げられます。
- 作業の自動化
- 情報の集約
- データを元にした判断や提案
今まで手作業で行っていた業務を自動化することにより、人的コスト削減に繋がるでしょう。また、情報をシステムに集約しておけば教育コストの低減や対応品質の平準化が見込めます。
そして、システムに蓄積されたデータを元にさまざまな判断を行うことにより、業務の再現性を高めることも可能です。運や偶然といった要素を排除し「勝つべくして勝つ」といった営業・マーケティング・経営をサポートしてくれます。
業務システム導入の方法と事例紹介
業務システムを導入したい!と思ったら、次はどんな開発会社に発注するかと、どんな手順を踏んで開発してもらうかが重要になってきます。初めて業務システムを発注する会社にありがちなのが、「システムがあれば全て解決する」と錯覚することと、多機能でなければダメだと信じいろんな機能を搭載することです。
業務の全てを自動化し、システム化することはほぼ不可能です。現場を助けるためにどこまでをシステム化するか、この判断をする段階が、最も重要といって過言ではありません。
導入のフローとは
既に申し上げましたが、システム導入を成功させるためには、現場に寄り添った業務の把握がとても重要なのです。これがないとシステムが独り歩きし、役に立たない無用の長物が出来上がってしまう恐れがあります。
まずエンジニアはヒアリングをおこない、業務を洗い出します。上司目線だけでなく、現場の担当者の声も聞く必要があります。そして業務を「可視化」してみると改善すべき課題(ムリ・ムラ・ムダ)が見えてくるのです。システム以前の徹底した業務改善が、システム化の成功の鍵です。
労働時間の把握で充実した人生を:株式会社吉田機械
これまでのタイムカードから、専用ICカードやスマートフォンでの打刻に変更した吉田機械。 記録はすべて自動で集計され、給与システムに連携されます。打刻漏れが改善され勤怠管理が効率的になっただけでなく、社員の労働時間に対する意識が高まり残業時間が減少しました。
スマホの勤怠管理が可能となり残業時間を意識しやすくなったので、「指定期間中に全員が2日休む」の目標も達成。導入したシステムの活用で、社員の幸せな人生を支えることができる会社を目指しています。
帳簿作成業務などの標準化:株式会社エス・ディーひかり工芸
株式会社エス・ディーひかり工芸は、見積作成の自社システムを導入しました。完全カスタマイズして、顧客名、業務内容、積算内容などを入力すると、見積書や発注書が自動作成される仕様にしました。納品実績の画像も登録できるため、営業先で制作物をイメージしながら概算料金を提示できるうえ、帳票作成業務を社内全体で標準化して業務の効率化を図り、進捗状況も共有できるようになりました。
営業以外の社員でも簡単に見積りが出せるうえ、社員全員で原価率や利益率の感覚も共有できるようになりました。
失敗しないために。業務システムを導入する際の注意点
業務システムは大変便利なものですが、導入を誤ってしまうと本来の効果を発揮することができません。次に、業務システムを導入する際の注意点について解説します。
事前に自社のニーズを明確にする
システムを導入する主目的は「自社に起きている問題や課題を解決するため」です。なので、まずは自社の課題を洗い出しニーズを明確にすることが求められるでしょう。
一例として、下記のようなものが挙げられます。
- リピート率や顧客単価が低いため、CRMを導入して改善を図る
- ルーチンワークに時間をとられているため、RPAを導入して効率化を目指す
- リードの成約率が低いため、マーケティングオートメーションを導入して成約率を上げる
自社の業務がどのように進行し、どのような結果を出しているかをしっかりと精査しましょう。
ベンダーと密なコミュニケーションを行う
ベンダーとの密なコミュニケーションを心がけることで、システム導入の失敗を防げます。既に完成しているパッケージシステムを導入する分には問題になりづらいかもしれませんが、システムをゼロからスクラッチで開発するような場合はコミュニケーションの成否が鍵となるでしょう。
自社に合ったシステムを開発するには、問題解決のためのニーズから使い勝手や機能を決めなければなりません。もちろん自社のみで決める必要はなくベンダーとの共同作業になりますが、完全に相手任せにしてしまったり、逆に完全に自分達で決めるとミスが生じる恐れがあります。
ベンダーはシステムに関するプロであり、自社の大事なパートナーです。適切なコミュニケーションを行い、間違いのないシステム構築を目指しましょう。
プロの手を借りる
システムのプロであるシステムコンサルタントの力を借りることで、適切なシステム選びの助けとなります。前述のベンダーもシステムのプロには違いありませんが、あくまでも彼らの手掛けている製品のプロであり、他の商品と比較してアドバイスを得るといったことは難しいかもしれません。
システムコンサルタントであれば、豊富な知見の中から自社のニーズに合ったものを提案してくれることが期待できます。ITは非常に専門性が高いため、自社のみで全てを察知するのは難しいところです。
プロに俯瞰的なアドバイスを仰げれば、正しいシステム選びに近づくことができるでしょう。
まとめ
記事冒頭では、「業務システム」「基幹業務システム」「情報システム」の違いについてまとめてみました。これからシステムを発注する予定があれば、参考にして下さい。多くの企業では、受注や在庫の管理といった会社の経営に関わるデータの管理をExcelでおこなっていることでしょう。
そのイメージからかけ離れることなく、使い勝手はそのままでシステム化し、あと一歩便利にすることも可能なのです。