社内間の情報共有が生産性を向上させる理由と、事例から見るその重要性

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生産性の向上を目指そうと思ったら、社内の情報共有はうまくできているかを振り返ってみましょう。情報を制すことの重要さは良く知られるところですが、情報共有が円滑になされる環境の構築は、多くの会社の課題となったままです。日本人特有の「あ、うん」の文化も、情報共有の徹底化が芳しくない原因のひとつともいわれています。しかし、その先にある会社規模の拡大や将来性ある人材の採用を考えると、社内の情報共有は急がれるべき課題です。

情報共有すると生産性が向上する理由

生産性の向上を阻害する要因について考えてみましょう。第一の要因は、日々の業務に追われて、業務分析や業務改善がなかなかできない現状かもしれません。現在の生産性について振り返ってみると、生産性を落としているのが「コミュニケーションの質の悪さ」であることは少なくないでしょう。情報共有がうまくできないと、作業の手戻りが出たり、在庫が正確に把握できなかったりしてタイムロスが生じます。そして、緊急事態にも適切なオペレーションが取れません。このように、情報共有は生産性向上に大きく関わっています。

本社と各拠点の情報を一元化・同期化できる

規模を拡大してきた企業であれば、拠点が数か所になることもあるでしょう。工場の増設、海外移転、営業拠点の新設などをおこなうと、「情報の共有」が課題になります。仕入れ、生産の管理や進捗状況などを、一元化して情報共有できていないとトラブルが勃発した時に大事になりやすいです。手元の資料を見ながら電話やメールをするのでは、時間がかかり過ぎます。問題発生時は特に、解決が急がれなければなりません。共有化された資料を見ながら対策できる環境が必要です。

メールや電話で生じる齟齬が減少

電話やメールで情報管理をおこなう場合、「タイムラグ」も生じますし、何といっても人手によるコミュニケーションは、認識の齟齬(そご)をきたしやすい点が問題です。
数量や価格などを共有する場合、口頭で伝達するのも危険だといえます。データは、一元化されたシステムで管理される場合に最も正確性が担保されます。また、トラブルが生じやすい「言った」「言わない」の問題も、やり取りを時系列でデータ保存できる状態が理想的です。

一対一からグループコミュニケーションに

いま、情報共有化には「グループウェア」という発想があります。いまや日常生活でも、チャット電話やグループチャットなど、一対一ではないグループ間のコミュニケーションが一般化しています。画像や映像、データをフォルダに入れ共有するのも一般的です。ビジネスをおこなう社内でも、顧客情報、議事録、営業履歴などをグループウェアで共有できないでしょうか。情報共有が効率的になるのは確実で、グループ全体を対象とした情報発信が可能になります。

情報共有でおさえるべきポイントとは

情報共有でおさえるべきポイントとは
既に導入済みの既存のシステムがあるのに、うまく活用できていない会社も多いといわれています。システムの導入による情報共有を検討する際、おさえておくべきポイントとは何でしょうか。
そもそも社内の情報伝達が課題である場合は、拠点が増えたり企業が合併したりしたら余計混乱します。会社の経営も様々な変化を余儀なくされる時代にあって、情報の管理能力は、会社の生命線であるといえるでしょう。これからの時代にあった情報共有とは、どのようなものでしょうか。

在庫や責任者の所在など頻度の高い情報を共有

情報共有を始めるにあたって、まずは優先順位を決めるべきです。例えば、社員、特に管理職のスケジュールを共有すれば、所在が分からず電話をかけまくるタイムロスが減ります。営業の顧客情報も情報共有化すれば、営業担当が退職しても、スムーズに引き継げます。システムを導入する際にありがちなのが、システムに人間が使われてしまうことです。多機能でいろいろと盛り込まれているシステムでも、現場の人が使いづらいなら無用の長物と化してしまいます。

クラウド活用も視野に

社内の情報共有を始めるなら、クラウド化も検討しましょう。クラウド化のメリット1つめは、クラウド上にデータが保存できるため、社内パソコンの容量を減らさなくていいことです。
2つめは「シャドーIT」による、情報漏えい・ウィルス感染のリスクを回避できることです。シャドーITとは、会社が知り得ぬところで社員が外部サービスを利用して会社の機密情報を共有することで、情報漏洩の危機にさらされることです。「クラウド化にはセキュリティ上の問題がある」のは、もはや過去の話になっています。

モバイル活用も視野に

モバイル化とは「場所を問わずにどこでも仕事ができる環境を整備すること」です。モバイル化することで、例えば営業が受注した案件をその場でエントリーできます。契約を結んだあと会社に戻り営業補佐が入力する、といった手間を省けますし、クライアントと対面して契約内容を最終確認できるため、ヒューマンエラーによる入力ミスなども軽減できます。
モバイル化はビジネス活動の場を確実に拡大してくれるため、会社が将来的に規模を拡大する場合も、業務を十分にフォローアップしてくれます。

システムの導入による情報共有の成功事例

システムの導入による情報共有の成功事例
システムを導入して情報共有をおこなえば、情報伝達の正確性が強化され、現場のオペレーションもスムーズになります。すなわち、生産性の向上が図れます。これまで現場を煩わせていたタイムロスややり取りの齟齬などは、激減するでしょう。また、情報の共有化が図れた労働環境でなければ、会社規模を拡大して有能な若い人材を採用していくことは不可能です。情報共有化は現在の課題のみならず、会社の将来の発展性も担保するということです。
ここで、システムを導入による情報共有の成功例を紹介します。

株式会社佐々木冷菓

株式会社佐々木冷菓(食品卸売業)は、新システム導入時に各地のチェーンストアごとに電子会議室を設置しました。これにより、課題であった日々変化する「顧客のニーズ」を吸い上げることに成功しました。また、スケジュールやToDo案件を登録し共有することで、全営業所が同じレベルのサービスを提供できるようになり、サービスの均一化が図れました。経営陣からのトップダウンのみならず、営業所からも情報があがる情報基盤構築に成功しました。

興和工業所

「金属の総合加工会社」興和工業所は、11の国内工場と海外の工場・営業拠点を持っています。外注先との情報共有が人手では限界に達し、新システムを導入。従来のExcelによる生産管理と、電話やFAXでのやりとりは正確性に欠けていました。現在、工場では日常業務をこなすだけでデータ入力されるシステムを敷いています。また、手作業だった在庫管理は「在庫確認アプリ」を導入し外注先はリアルタイムで在庫チェックできるようになりました。これまでのメールや電話が不要となり、やりとりの齟齬がなくなりました。

ESMシステム株式会社

電気・通信・計装の設計施工会社であるESMシステム株式会社は、グループウェアとビジネスチャットの導入で、口頭伝達による「言った」「言ってない」のトラブルを解決でき業務に関する情報伝達の確実性を強化できました。既存のツールがありましたが設定が面倒だったため、活用しきれませんでした。また、膨大な申請書の入力や申請・承認の情報管理に長い時間がかかっていましたが、ワークフローや業務アプリ作成ツールを導入したことによりスムーズ化でき、生産性向上につながりました。

まとめ

情報共有がいかに生産性を向上させるかについて、事例も挙げながら説明してまいりました。会社が取り扱う情報は膨大にありますが、まずは使用頻度の高さや重要性から選んで、情報共有化を検討されてはいかがでしょうか。モバイル化、クラウド化というオプションもあります。社内の情報共有化は、目標達成に大きく貢献するでしょう。