中小企業のIT化における課題とは?IT化のメリットやポイントについて解説
現代はテクノロジーやネットワーク技術の発展により、さまざまな業務をIT化できるようになりました。しかし、中小企業が業務をIT化しようとする場合、いくつかの課題に直面してしまうようです。
この記事では、IT化を行うメリットから中小企業がIT化を行う際の課題、そしてスムーズにIT化するための方法について解説します。適切なIT化に取り組み、業務の効率化を目指しましょう。
業務をIT化することによるメリット
業務をIT化すると、一体どのような恩恵を受けられるのでしょうか。まずは業務をIT化することによるメリットについて解説します。
利便性や生産性が向上する
業務をIT化すれば、利便性や生産性の向上に繋がります。現代ではさまざまな業務に対応したシステムやツールが開発されていますので、それらを取り入れることによって業務の効率化や自動化を図ることができるでしょう。
一例として、顧客管理のためのCRMや営業管理のためのSFAが挙げられます。これらを活用すれば従来はアナログな手法で行っていたことをデジタル化し、コストの削減や利便性の向上に繋げられます。
情報共有が容易になる
業務をIT化すれば、情報共有の難易度が下がります。必要な情報を随時入力することで社内のナレッジデータベースを作成することができますし、それをメンバー間で容易に共有可能です。
分からないことがあったら、誰かに聞く前にまずシステムを検索するというルールを設けることもできるでしょう。合わせて、自分の業務をデータ化することで、引き継ぎはもちろん、取り組んでいる業務に関する理解を深めることにも繋がります。
IT化のために導入するシステムは通常インターネットを介してアクセスできるため、必ずしも社内で作業する必要はありません。そういった柔軟さもIT化によるメリットです。
データの一元管理が可能
IT化を行えば、データを一元的に管理することができます。一元的に管理するというのは、例えば顧客データや売上データ、商品データなどを同じデータベース内に置くことで、それぞれのデータを紐付けられるということを意味します。
それにより、どういった恩恵が受けられるのでしょうか。一つは、一見関係なさそうなデータ間の繋がりを見つけやすくなり、販促や企画に役立てられることが挙げられます。
ただ、IT化を行えば自動的にデータが一元管理されるわけではありません。一元管理するためにはそれぞれのシステムが対応していなければならないため、製品選びには気をつける必要があります。
ITシステムの一例
では次に、ITシステムの一例をご紹介します。テクノロジーの進歩にともない、ここでは紹介しきれないほど多種多様なものが開発・リリースされています。
CRM
CRMはCustomer Relationship Managementの略であり、日本だと「顧客(関係)管理システム」と呼ばれています。その名の通り顧客との関係を管理するためのシステムであり、適切な関係性から売上や利益を最大化するのが目的です。
CRMには、下記のような機能が搭載されています。
- 顧客情報管理
- 分析およびマーケティング
- プロモーション管理
- メール配信
顧客の名称や所在地、電話番号といった情報管理から購買履歴における分析およびマーケティング。効果的なプロモーション施策や進捗の管理、キャンペーンなどに活用できるメール配信機能が搭載されています。
製品によってはこれらの機能が搭載されていないものもあります。CRMの導入を検討するのであれば、どの製品にどのような機能が搭載されているかを把握しておきましょう。
SFA
SFAはSales Force Automationの略であり、日本語だと「営業支援システム」と呼ばれています。こちらも名前の通り、営業活動を包括的に支援し効率化するのが目的です。
SFAには、下記のような機能が搭載されています。
- 顧客管理
- 案件管理
- 行動管理
- 予実管理
SFAにも、顧客情報を管理する機能が搭載されています。そして、案件がどのように進んでいるかの案件管理や営業パーソンそれぞれの行動管理、全体の予実管理なども可能です。
こちらも製品によって搭載されているものとされていないものがあるため、導入する際はしっかり調べておきましょう。
中小企業がIT化することによる課題
では、次に中小企業がIT化する際の課題について見ていきましょう。中小企業がIT化を行う際には、下記のような課題が発生する可能性があります。
ITやセキュリティに対する理解が浅い
企業や担当者のITやセキュリティに対する理解が浅い場合、IT化は難航することが予想されます。業務のIT化を行うためにはシステムの導入がほぼ必須となるわけですが、ITに対する理解が浅い場合、導入されたシステムを使いこなせないケースが考えられます。
システムを使いこなせないだけならまだしも、セキュリティに対する意識が甘い場合、不正侵入の可能性も生じるでしょう。システムやネットワークをインターネットに繋げるということは利便性を高める反面、リスクも上昇します。
適切な対策を行っていない場合、攻撃者の侵入を許し、思わぬ被害を被ってしまうかもしれません。
費用対効果という意識が薄い
「費用対効果」の意識が薄い場合もIT化に支障をきたしてしまいます。費用対効果とは、「投資した費用に対してどの程度のリターンが見込めたか」という指標のことです。
システムに限らず、ビジネス上の投資を行う際には費用対効果の考え方が欠かせません。何のために投資を行うかというと、それは業務を効率化したり生産性を向上させたりして、最終的に売上や利益を上げるためです。
その意識がないまま投資を行うと、投じた費用がただの無駄遣いになってしまう恐れがあります。IT化を行う際は、本来の目標を見失うことなく、本質に沿って行いましょう。
「IT化」という言葉が独り歩きしている
社内で「IT化」という言葉が独り歩きしてしまうと、適切なIT化を行うのは難しいかもしれません。ITというのは万能なツールではなく、あくまでも「問題解決のための一つの手段」です。
そのため、IT化したからといって全ての問題が解決するわけではなく、必ず成果が見込めるものでもありません。それだけに、IT化を行う際は慎重な製品選びや入念なシミュレーションが必要になります。
そういった予習を行わずに突発的にIT化を行った場合、現場の混乱を招き、システムの正常な運用に支障をきたしてしまう可能性があるでしょう。
スムーズにIT化するためにはどうすればよいか?
決して万能ではないITテクノロジーですが、スムーズかつ適切にIT化を成功させるためにはどのようにすればよいのでしょうか。続いて、その辺りについて解説します。
「どの業務をIT化するか」を明確にする
IT化を行う際は、「どの業務をIT化するのか」を明確にしておきましょう。IT化という言葉は少々抽象的な面があり、「我が社はIT化を行う」と声高に宣言しても、具体的に何をどうするのかが見えにくいケースがあります。
対して、どの業務をIT化するのかが確定的であれば、やるべきことが固まりやすくなるでしょう。どのシステムを選ぶべきか、そしてどのような特徴を持った製品を選ぶべきかが明確になるため、スムーズなIT化に繋がります。
専門家に相談する
自社のITに対する知識が浅い場合、専門家に相談するのも手です。ITの分野は専門的な面が強いため、知らないまま闇雲に手を出してしまうと失敗に繋がる恐れがあります。
特に、セキュリティの部分に関しては慎重かつ入念に対策する必要があります。こちらのミスで攻撃者の侵入を許してしまった場合、自社のみならず顧客や取引先に多大な迷惑をかけてしまう恐れがあるでしょう。
「IT化」にこだわりすぎない
IT化には多くのメリットがありますが、場合によってはIT化を行わないことも重要です。上述の通り、IT化にはコストがかかるため、上手く運用できない場合はそれらがサンクコストになってしまう可能性も生じます。
IT化は、問題解決のための一つの手段であるに過ぎません。であれば、より良い問題解決方法があればそちらを優先するのも手です。「何が何でもIT化」という固定概念があると、逆に視野を狭めてしまう結果になるかもしれません。
デジタルにはデジタルならではのメリットがあるように、アナログにもアナログならではのメリットがあります。両者の特性をしっかりと見極め、適切な方法を選びましょう。
抑えておきたい。ITセキュリティを高めるポイント
次に、ITセキュリティを高めるポイントについて解説します。近年サイバーアタックに悩まされる企業も多いため、しっかりと学んでおきましょう。
適切なツール導入や設定を行う
適切なツールを導入したり設定することで、ITセキュリティを高めることができます。基本的に高性能なセキュリティツールは導入しただけで効果を発揮してくれますが、適切な設定が必要なケースもあります。
設定を誤ってしまっている場合、思わぬリスクが生じる恐れもあるでしょう。導入したツールはどのような効果や機能があり、自社のどのようなリスクを防いでくれるのかをしっかりと理解することが大事です。
万一の際に備える
どれだけ堅牢なセキュリティを構築したとしても、不足の事態は起こりえます。それだけに、万一のケースを想定して業務スタイルやワークフローを構築するのもセキュリティ対策の一環と言えるでしょう。
たとえば、下記のようなものが挙げられます。
- 業務の冗長性を担保する
- 侵入者の行動を細かく追跡できるようにする
- システムに頼らないワークフローを構築する
どこまでいっても完璧にはなりませんが、さまざまなケースをシミュレーションして備えることが大事です。
100%セキュアな構築は不可能であることを知る
セキュリティを高める方法にはさまざまなものがありますが、どれを行っても100%セキュアにはなりません。たとえば、外部からの侵入を100%ブロックすることができても、情報が内部から流出してしまう可能性があるからです。
ITセキュリティを考える際は、100%堅牢な環境構築は不可能であるという前提に基づいて行うのがよいでしょう。そうすることで、いざという時にも業務を停止させず、攻撃者の利に寄らない業務体制を築くことができます。
まとめ
業務にITを取り入れれば利便性が高まり、業務効率化や生産性の向上に繋がります。しかし、中小企業がIT化に取り組む場合、いくつかの課題が発生することに注意しましょう。
それらをクリアし、かつ「IT化する業務の明確化」「専門家への相談」を行えば、スムーズなIT化を図れます。しかし、業務をIT化する目的を忘れず、時にはIT化にこだわりすぎない姿勢も重要です。
ITやセキュリティに対する理解を深め、適切なIT化を行い業務効率化に励みましょう。