成功事例に学び働き方改革に取り組む前に整理しておきたい考え方とは

ビジネス

働き方改革関連法の施行により、あなたの会社はどのように変わりましたか。まずは、勤怠管理などの労務の改善点を追うだけで、精いっぱいなのではないでしょうか。
働き方改革に振り回されることなく、むしろ取り組むことでその恩恵に与るためには、どんなマインドをもって臨めば良いのでしょうか。この記事では、事前に整理しておきたいポイントとともに、施行前から改革に取り組んだ会社の成功事例を7つ紹介していきます。

現状把握→施策→実施

働き方改革は、あなたの会社にどのように関わってくるのでしょうか。また、何から取り組めば良いなど、優先順位はあるのでしょうか?
改善をおこなうときは、まず「現状を知る」ことが大事です。ここで課題を良く洗い出さないと、次の「施策を立てる」が適切におこなえません。現場の従業員の声をヒアリングするなど、現状把握は丁寧におこないましょう。「実施」の段階では助成金対象の可能性も検討しますので、やはり現状把握は丁寧におこないましょう。

ホワイトペーパーから情報を得る

まずは、働き方改革に関する正しい情報を得ることが大事です。各公的機関や商工会議所のホームページを利用しましょう。
ミラサポという中小企業・小規模事業者の未来を支援するサイトをご存知でしょうか?下記のようなサイトですので、ぜひ利用してみましょう。

  • 中小企業庁の委託事業として運営されています
  • 補助金・助成金などの情報提供
  • 経営の悩みを先輩、専門家と情報交換する場の提供をおこないます
  • 専門家派遣はIT活用、事業承継、BCP(事業継続計画、テロや災害などの危機的状況下でも業務継続可能にする方策)、創業、雇用労務問題などについて実績があり、詳細をサイトで確認できます

労働時間の把握

今回の改正で労働時間の適切な把握が義務付けられたため、勤怠管理の体制は既に整備されている必要があります。時間外労働の規制だけでなく健康管理の観点からも、客観的で適切な方法による従業員の労働時間管理が義務化されました。記録の必要もあるため、PCやICカードでの勤怠管理がベストです。今回の法改正で、管理職や裁量労働制適用者に対しても、健康管理の観点から労働時間の状況の把握が義務付けられた点にも注意が必要です。

生産性の把握

残業時間削減を実現するには、生産性の向上も必要になります。それも一時的ではなく、継続的な施策を立てなくては、将来継続的な生産性の向上はのぞめません。
継続的な生産性向上を目指すためには、現状において非効率を招いている原因を洗い出し、労働者のモチベーションも高める必要があります。まずは、現場の従業員の声をヒアリングしてみましょう。現状把握が上手くできてこそ、有効な施策が生まれてくるものです。

システム活用など成功事例7選

システム活用など成功事例(7例)

以下では、働き方改革が施行される前から、改革ポイントを見越して改善策を実施していた企業を紹介します。
なかには、先駆けて「社内働き方改革」を実践した企業もあります。紹介する会社は、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得率アップを目指したところが多いですが、取り組みの結果として従業員の「多能工化」が進んだり、業務の標準化が促進されたりしています。そういう観点からも参考になる事例です。

業務改善で所定外労働時間の低減など:株式会社 九州タブチ

株式会社九州タブチは、2017年度のテーマを「九州タブチ働き方改革」と掲げ、生産性向上によるムダな残業の削減に取り組みました。機械加工作業の徹底改善を目指し、新たな加工方法の確立・効率よいプログラムへの変更、加工設備着脱時間削減などを実施し、結果1 人あたりの残業時間が19.4h/月だったところが2017 年には11.6h/月になりました。社員教育にも力を入れ、更なるスキルアップ、多能工化、講習費用・他社見学・資格取得などの費用も会社が全額負担しています。

IT 化による業務効率化で休暇取得促進:エースカーゴ株式会社

運送業を営む株式会社エースカーゴは、業務効率化のための施策を取り入れ時間外労働の削減に成功しました。

  • IT 化:伝票管理・配車管理・入出金管理などを、手作業から独自に開発した IT システムで一元管理
  • 共同配送サービスの導入:地域ごとに必要なトラックの数を配備し、複数の取引先を同じトラックで配送し、配送の効率化を徹底

結果、ドライバーの時間外労働の平均が52 時間だったところ、平成 30 年には36 時間に削減できました。

社員に『改善』への意識が芽生えたことが最たる成果:ダイワエレクス株式会社

製造業を営むダイワエレクス株式会社は、ノー残業デイとノー残業ウィークを設け、作業管理を徹底しました。各社員の作業管理を1 週間単位で実施、毎日昼休み後のミーティングでは不必要な残業の発生防止を徹底しました。
社員のプライベートの充実も図り、「土日あわせて9連休」の年次有給休暇の計画的付与や休暇の「見える化」で取得しやすい雰囲気を醸成しました。1か月平均残業時間は約10 時間削減し、年次有給休暇取得率は40%から約 70%になりました。連続休暇者のフォローや業務の割り振りは、社員の「多機能化」も徐々に促進しました。

業務管理システム導入で労務環境の改善成功:株式会社シンコーメタリコン

業務管理システム導入で労務環境の改善成功:株式会社シンコーメタリコン

製造業を営む株式会社シンコーメタリコンは、社員の満足度の向上を心掛け、全員を正社員雇用し、資格、誕生日手当など手当充実を目指しています。
業務管理システム『シン魂』を構築し、生産工程管理、在庫管理、原価管理、作業時間管理、日報・週報管理をシステムで一元化しました。業務効率化の他、所定外労働の削減など労務環境の改善も実現しました。売上高は、平成 24 年は15%増加を果たし「この会社で働けて良かった」と感じる従業員の割合は 86%を達成しました。

システム導入により年次有給休暇の取得率が 99.5%に:JSRマイクロ九州株式会社

製造業のJSRマイクロ九州株式会社は、働きがいがあるワーク・ライフ・バランスが実現された職場を目指し、社全体で年次有給休暇の取得促進、時間外労働の削減に取り組んでいます。年次有給休暇取得目標は100%とし、勤怠管理システムの導入を機に、休暇申請は「システム端末に入力するだけ」にして申請しやすくしました。多能工化の推進で、休暇を取得しても他の労働者がフォローできる体制を整備し、2014年は年次有給休暇取得率99.5%と目標に近づきました。毎月実施している安全衛生委員会では、所定外労働が多い職場に業務標準化を求めるなどの施策も実施しています。

ドライバーの待ち時間を55%減に:大塚倉庫株式会社

大塚倉庫株式会社は大塚製薬の商品管理などをおこなう運送会社です。同社は、アプリ開発や伝票の電子化でドライバーの待ち時間削減に成功しました。ドライバーは大塚倉庫の社員ではないものの、今後のドライバー不足を考え彼らの労働環境の改善に着手しました。独自開発したスマホアプリで納品手続きができる「e-伝票」の開発や、納品伝票や受領印の電子化を実施した結果、物流センターのトラック滞在時間が約55%減、「e-伝票」を利用するドライバーにおいては約70%もの削減に成功しました。

年次有給休暇取得率が50%以上に:株式会社永和システムマネジメント

株式会社永和システムマネジメントは情報サービス業を営む会社です。「多様な働き方」の実現のために、「半日有給制度」や「3日間連続で有給を取得できる制度」を開始しました。土日やゴールデンウイーク、年末年始に合わせてまとまった休暇が取れるため、多忙なプロジェクト後のリフレッシュにも利用されています。
年次有給休暇の取得率が全部署で50%以上になり、中には取得率が70%近い部署も登場するようになりました。

まとめ

働き方改革に対応するために始め、残業時間削減や有給取得率目標達成などを数値的に達成した成功例を紹介しました。興味深いのは、同時に社員の満足度も向上した例が多かったことです。
休暇の申請は堂々とはしづらいものなので、社員に配慮しオンライン申請を可能にし従業員の心的負担を減らした会社の例も、その一つです。有給休暇取得者をカバーしあうなかで、結果的に社員一人一人の力量が向上したというレポートは、働き方改革に希望を感じさせてくれました。