会社の利益増には業務効率化が外せない?その理由とIT導入事例を紹介
「業務効率化」の目的とは何でしょうか。詳しく後述しますが、「コストを削減」することが業務効率化の目的です。そのためには「ムリ・ムラ・ムダ」の排除が必須なのですが、これは一度きりではなく、ムダが生じる度におこなう必要があり、いわば「永遠の課題」だといわれています。アウトソーシングも業務効率化の方法の一つで、コスト削減につながります。固定費を変動費に変えることができるうえ、社外の専門スキルも活用できるメリットがあります。
利益増には業務効率化が外せない?
今月も目標をクリアできない。会議でどうすればいいかと改善策を考えていく時、必ず登場する言葉が「業務効率化」です。業務を効率化する、と聞けばだいたいイメージは湧きますが、具体的にはどういう内容を指すのかお分かりになりますか?
業務効率化の目的をひとことで言えば「コストカット」です。現場の長年の課題とされながらなかなか上手くいかないのが業務効率化ですが、成功させるコツは「現場目線」に立つことです。
「見える化」で業務のスリム化
まず、業務の「見える化」(可視化)をおこないましょう。それには「フローチャート」や「スキルマップ」の作成が必要です。この2つについて説明していきます。
フローチャート
業務の流れ、優先順位を書き表した図のことです。フローチャートは、難解な作業を進める場合に大変役立ちます。
スキルマップ
業務で必要なスキルをリスト化し、従業員の持っているスキルを一覧にした表のことです。力量管理表、力量表、技能マップと呼ばれることも。英語では、Skills Matrixです。
出典:SKILL NOTE
業務効率化の目的:ムリ・ムラ・ムダの排除
まず、業務工程を見直して「ムリ・ムラ・ムダ」を探していきます。ムリは「キャパオーバーの仕事をしてかえって効率を落としていること」、ムラは「仕事の質が一定でないこと」です。ムダは「余計な工程にコストがかかっていること」を指します。
この時、現場に第3者が入ってみた方が、どこがムリ・ムラ・ムダな部分なのか分かりやすいです。作業工程全体を可視化することによって、改善すべき工程が見えてきます。これを「ムリ・ムラ・ムダの洗い出し」といいます。
新しいチャレンジができる余力ができる
コスト削減が目指すのは、経費の削減と人件費の削減です。コスト削減が達成できれば、経費を抑えることができるのと同時に、会社の財産である貴重な人材をもっと将来的で生産的な仕事にまわすことができます。
今、日本は国を挙げて生産性の向上に取り組んでいますが、今後労働生産性を上げるには、より高付加価値的な商品・サービスの開発・製造が必要になります。コスト削減を実現すれば、そのプロジェクトのための人員を新規採用なしに確保できることになります。
業務効率化がもたらすメリット
経営者の目標は、良い人材を確保し長く利益を上げていくことですし、労働者の目標は、十分な給与を得ることができ、ライフワークバランスも実現できて能力も評価されることです。業務効率化がもたらすメリットを、経営者と労働者両方の視点から考えてみましょう。業務効率化のメリットはコスト削減なのですが、経営者側と労働者側からでは違ったメリットが得られます。以下はその説明です。
経営者視点のメリット:コスト削減
業務効率化の実現で文字通りコストが削減できても、それで終わってしまっては大きなメリットとはいえません。コスト削減で得られた資金で、より将来的で会社の経営強化につながる施策をおこなうことに意義があるのです。
たとえば、今まで手いっぱいで残業も多かった部署にシステムを導入するなどして、業務の効率化を図ります。すると余った経費や労働力を新規プロジェクトや顧客開拓にまわせます。能力のある社員も無駄な作業から解放され、より能力を発揮してくれます。
労働者視点のメリット:労働時間短縮
労働者視点でのメリットとは、労働時間の短縮によって残業から解放され、自分の力をより能力の発揮できる業務に充てることができることです。ライフワークバランスの実現とともに、自分のキャリアアップも図ることができれば最高です。
日々効率が悪い業務に追われて自分の能力を活かし切れていないと感じ、離職してしまうケースもありますが、業務プロセスを見直すことで、有能な社員の定着化も図ることができます。人手不足で若い労働力の確保が課題である今、業務効率化は急がれる課題の一つです。
ITツール導入などで刷新を図れる
利益を上げて目標達成を果たすため業務効率化をおこなうことは、業務フローや人員の配置、設備の充実などを見直す良い機会になります。日々の業務に追われていると、全体像を見直す余裕はなかなかありません。しかし、業務効率化をおこなうのに合わせて、これまでできなかった人員の再配置や、時代に合った新しいITツールの導入などをおこなうことができます。アウトソーシングの導入は、固定費の抑制やサービスのさらなる充実を合理的に進めることができます。
IT導入事例
「2018年版中小企業白書」には、業務プロセスの見直しを、IT導入と同時に図ったことが功を奏した事例が多く紹介されています。逆にいえば、業務プロセス見直しとIT導入、どちらかだけをおこなっても十分とはいえず、両方を的確におこなうことで十分な結果を得ることができるといえます。事例の中には、あなたの会社の課題と似たものを抱えていた会社もあるかもしれません。是非、今後の業務効率化の参考にしてみましょう。
システム導入で1日3時間の業務時間削減:株式会社太陽商工
株式会社太陽商工は、ITシステムの導入で社内の情報共有化を実現しました。部門間での情報共有を IT 化し、時間がかかっていた部門間での打ち合わせを効率化。また、総務部門からの工事部門の進捗状況確認や、資金繰りや資材発注等もおこなえるようになり効率的になりました。また、現場からの移動時間も非効率的で課題でしたが、ミニPCとタブレット導入で現場からの報告を可能にしました。図面・申請書類等も電子化し、検索可能にしました。 ITシステム導入は、1 人 1日当たり3 時間の業務時間削減を実現しました。
自社システムの更新と生産工程のIoT化:株式会社日東電機製作所
株式会社日東電機製作所は、自社システムの更新と生産工程のIoT化を実現しました。自社開発の統合生産管理システム(NTMOL)に不具合が目立つようになったので、オートデスク社提供のビジネス・プロセス・アセスメント(Business Process Assessment)という手法を用いて、生産管理工程見直しを視野に入れた課題の洗い出しをおこないました。その結果を踏まえてシステムを更新し、また生産工程の IoT 化も計画中です。システムの Web 化によるタブレット活用や、ロボットとNT-MOL の連携も検証しています。
SFA導入による収支の「見える化」:エコー電子工業株式会社
システム開発事業を手掛けるエコー電子工業株式会社は、約 20 年前に自社開発で SFA(Sales Force Automation)を導入し、業務の属人化からの脱却と情報の「見える化」を実現しました。SFAは役員以下全員が仕事内容を入力・閲覧できるので、業務日報等から日々の活動が「見える化」され、業務の属人化が回避できます。顧客の課題は全従業員で共有して迅速な解決に臨みます。業務の代替要員も容易に確保できるため、育児休暇等の取得率が向上し、従業員のライフワークバランスの実現に貢献しています。
まとめ
事例にある通り、業務効率化とIT導入を同時におこなうことで、長年解決できなかった課題も解決に至ることが分かります。非効率をなくし労働の質を上げると、社員の労働に対する充足感がアップし、その結果社員定着率が上がるメリットがあります。
働き方改革の主眼は労働条件の是正ですが、効率化された業務プロセスが敷かれた職場ならストレスなく働くことができ、従業員は残業のない職場で効率的な仕事をしている充足感を得ることができます。