仕事の質を落とさない業務効率化の「基本的な考え方」と「進め方」

業務効率化

「業務効率化」について考えたことのない経営者、現場責任者はいないのではないでしょうか。

よく聞くムリ・ムラ・ムダの排除は、経費の削減に繋がることは確かでも、どこまでが必要でどこからがムダなのかの考え方でさえ、曖昧です。また、「単にコストを削るだけで会社の売り上げは本当に伸びるのだろうか」という疑問もおありでしょう。

この記事では、業務効率化の基本的な考え方と、進め方を紹介します。

業務効率化の概念とは?

業務効率化の概念とは?

早速ですが、業務効率化の概念は「業務をより早く、より低コストでおこなえるように改善すること」です。

業務効率化は、しばしば「生産性向上」と混同されて使われるのですが、この二者は厳密には目指すところが違っています。この記事では、業務効率化の考え方と進め方にフォーカスしていきます。

業務効率化のキーワードは、とにかく「低コスト化」と「スピードアップ」です。

コストの側面を重視

Webメディア「SELECK」の記事に、コストカットの成功事例が紹介されています。具体的には下記のような成功実例です。

株式会社オークワ 年間9,000万の間接経費削減

間接経費(公共料金、家賃、備品費、税金など)は適正値が曖昧です。これを見直し大幅なコスト削減を図りました。

NKアグリ Kintoneで経費申請業務をフロー化

経費申請、業務管理などのフローをIT化することで人件費削減を図りました。

日本郵便 名刺をデータで管理

紙媒体で必須だった紙代、印刷代、ファイル代、保管スペースなどのコストを、ペーパーレス化で削減しました。

スピードも重視

業務がスピードアップできても、仕事の質を落としていては本末転倒です。時短だけでなく、仕事の「質」の維持・改善も兼ねたスピードアップが求められます。

提案例として「情報の一元化」があります。

例えば、営業資料が一元管理できていないとしましょう。これがバラバラに管理されている状況では、営業業務に無駄な時間が生じやすいのです。もし担当者が不在で代行することになった場合、取引先の担当者の名前も分からなければこれまでの取引履歴も把握できないといった事態も起こり得ます。

KPI(Key Performace Indicator)で数値化

KPIの定義を引用します。

KPI:Key performance indicator
重要業績評価指標。企業などの組織において、個人や部門の業績評価を定量的に評価するための指標。達成すべき目標に対し、どれだけの進捗がみられたかを明確にできる指標が選択される。これをもとに、日々の進捗把握や業務の改善などが行われる。
コトバンク

目標達成に向かって、適切なプロセスが実行されているかを計測するための指標です。達成が見られない場合は、改善策への移行が求められます。

仕事の質を落とさずに業務効率化を図るには?

業務効率化が目指すものはコストカットとスピードアップであり、そこにKPIという指標を用いると効果的であると申し上げました。

KPIを用いて、目標達成まで理想的な上昇を各数値において示せるように、段階的に管理していきます。数、時間からムダをあぶりだし、排除していくやり方です。

しかしこれだけでは、顧客を満足させるのに最も重要であろう「仕事の質」まで担保されるでしょうか。質がないがしろにされると客離れにつながってしまいます。

標準業務の設定見直し(工程のスリム化)

業務の標準化とは、簡単にいえば「誰がやっても同じ成果を出せるような仕組みをつくること」です。

そもそも、属人的に業績を上げるのではなく、誰が担当しても成果が出せるような仕組みがないと、引継ぎや新人育成が難しいだけでなく、会社規模の拡大も困難になります。

業務の標準化には、以下の内容が必要になります。

  • 「進め方」や「目標」や「役割」を明文化(文書化)すること=マニュアル化すること
  • 工程をできるだけスリム化すること

マルチタスク、同時並行処理はしない

マルチタスクと聞くと、処理能力が高くデキる人がおこなうことというイメージが浮かびますが、近年ではこういってた印象を覆す研究データが多く露呈するようになりました。

例として、米雑誌Entrepreneurの記事に引用された“Single Task”著者デボラ・ザック氏の見解を引用します。

神経科学者がいうところの「タスク・スウィッチング」で、2つのことを同時に行っているのではなく短期間で行き来しているに過ぎない。
Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking.

マルチタスクは非効率なだけでなく、精神と肉体両面にダメージを与えるという研究結果もあるのです。

業務効率化の目的はあくまでも生産性アップ

業務の効率化を図るうえで、仕事の質を度外視した改善ははかれないことを既に述べました。

業務効率化のキーワードは、低コスト化やスピードアップですが、人減らしやひとりの仕事量をキャパオーバーなほどに増やすことと勘違いするのは危険です。それでは一時的な低コスト化しか図れません。

正しい業務効率化の指標は、「長期的・恒常的な生産性アップが図れたかどうかである」ということができるでしょう。プラス、モチベーションも向上するなら最高です。

業務効率化をどのように進めていくか

業務効率化をどのように進めていくか

現状分析

業務改善の第一ステップになるのが「現状分析」です。

これは現状に数値でメスを入れる作業といえるでしょう。現場担当者としては、通常業務をおこないながら様々なデータを取っていくこの作業は、厄介で取り組みたくないものかもしれません。

大企業でなければ、データの一元化や業務の文書化にはノータッチで、放置され続けてきたというケースも多いでしょう。現場の担当者様の協力が不可欠で大変な作業ですが、やる価値は大いにあります。

目標と現実とのギャップから課題を抽出(目標設定は適切か)

先ほど申し上げたように現状分析は業務効率化のための重要なステップです。なぜなら、現状を把握したデータの中には問題を生み出している原因が、必ずあるからです。

これまで現状把握をせずに放置してきたことで、「可視化」されなかった問題点が、明らかになります。

そのなかには、目標設定が適切でないという改善点が含まれ、クリアしていける目標値の再設定が求められる場合もあります。漠然ではなく、達成可能な目標設定は、生産性を向上させるからです。

業務改善の考え方

現状分析をおこなったら、次は「業務改善」にステップアップしましょう。業務改善は、コスト削減のように、数や時間で「節制」の度合いを測るものではありません。

そもそも業務とは「会社の “資源”(人材、技術、ノウハウなど)を “価値”へと変換すること」を指します。

ですから業務改善とは、より高い価値を提供するために、会社の資源の活用方法を最適化することをいいます。そして、結果的についてくる会社の利益向上も目指しているのです。

業務効率化の強い味方となるシステムとは?

システムを活用することで、業務効率化を大きく進めることができます。ここでは、業務効率化の強い味方となるシステムについて解説します。

システムを導入すれば大幅な効率化が得られる

システムを導入することで、大幅な業務効率化を達成できるでしょう。システムを活用すれば従来手作業で行っていた処理を機械に代替させることができるため、人的リソースの節約に繋がります。

余ったリソースを人にしかできない重要なものに割り当てれば、時間あたりの生産量が増加し業務効率化に繋がります。この場合「どのような業務をどのようなシステムに代替させるか」という部分が問題になるため、しっかりと精査しましょう。

ITを上手く使いこなすことで売上増にも繋がる

ITを上手くつかいこなすことができれば、業務効率化だけでなく売上増にも繋がります。前述した業務自動化はあくまでシステムの一つの役割でしかないため、ケースによってはより幅広い活用方法が考えられます。

たとえば、下記のようなものが挙げられるでしょう。

  • 熱量の高いリードを見極め営業担当者に渡すことで、成約率が向上する
  • システムに蓄積されたデータを活用することで、市場ニーズに沿った企画やキャンペーンを打てる

ITを上手く活用すれば、個人の知見や勘とは異なる客観的な根拠を用いて各種判断を行えます。それが100%上手くいくとは限りませんが、失敗した際に原因を突き止めやすいため、改善に繋げることも可能でしょう。

システムを導入するメリット

システムを導入するメリット

それでは次に、システム導入のメリットについて詳しく解説します。

既存業務を自動化することによるリソースの集約化

システムを導入することで、既存業務を自動化し人的リソースの節減および集約化を図ることができます。業務がデジタル化されたとはいえ、まだまだ人の手を要する分野は存在します。機械に任せられる部分は任せ、人間の手はそれが必要とされる処理に集中的に回そうというわけです。

システムにより自動化できる処理としては、下記のようなものが挙げられるでしょう。

  • 特定期間の売上合計や平均、顧客別単価などを抽出
  • 従業員の勤務時間および残業時間の集計、給与や残業代などの計算
  • コールセンターやカスタマーサポートの初期対応

定型的な処理はシステムに代替しやすく、逆に柔軟性の高い対応は人の手で行う必要があります。

さまざまなデータを収集することで客観的な判断材料を得る

システムを導入すれば、さまざまなデータを収集することが可能です。それらを見やすく意味のある形に整えることで、経営判断などに活用することもできるでしょう。

デジタルテクノロジーの発展により、従来では取得の難しかった各種データを収集することができるようになりました。データを上手く活用することができれば顧客や市場の本質的なニーズを可視化することができ、売上向上などに役立てられます。

業務を可視化することで管理しやすくなる

システムによりタスクやワークフローを可視化することで、業務管理の効率化が見込めます。従来は担当者の経験や勘で業務を進めていた部分を可視化できれば、質の標準化を図れるでしょう。それにより、誰が対応しても一定の成果を上げられるようになることが期待できます。

営業を例に挙げれば、従来は担当者個人の力量により結果を得ていた部分も大きかったのではないでしょうか。システムを上手く活用すれば個人ではなくチームで営業プロセスを進捗・管理することができるようになるため、より安定した結果を得ることが可能です。

まとめ

業務効率化に必要な考え方について、ご理解いただけたでしょうか。

経営者様ならば、現場のムリ・ムラ・ムダといわれる元凶を数値化するだけで、業務プロセスは大きく改善の方向に向かうことは既に感じておられるでしょう。特に、現状把握して数値化したデータを可視化すると、業務を改善する必要性がありありと伝わるものです。飛躍のためには是非とも必要な一歩といえるでしょう。