長時間労働は離職率に直結!その原因とシステム導入などの対策事例を紹介

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人手不足により社員一人一人の負担が増大し、長時間労働化して労働環境が悪化する。すると新たな離職者が産まれるという“負のサイクル”は、なかなか抜けられなくなります。そして慢性的な人手不足に苦しむようになるのです。離職率を高める原因でもある長時間労働は、なぜ起こるのでしょうか。また、長時間労働の是正には、どのような対策が有効なのでしょうか。成功した事例も含めて、紹介していきます。

長時間労働の原因と問題点とは

長時間労働の原因と問題点とは

出典:BizHint

上図は「週49時間以上」の労働を長時間労働として、各国長時間労働者の割合を算出した「データブック国際労働比較2017」のデータを基に、日本と欧米諸国を比較したものです。日本は、2010年から2015年の間に23.1%から20.8%と、2.3%の減少を見せました。しかし、いまだに欧米諸国と比べると長時間労働の割合が高いことが分かります。「日本人は働きすぎ」とよくいわれますが、長時間労働になりやすい原因は何なのでしょうか。

社会問題化した過労死・過労自殺

政府は過労死をなくすため、2015年度に「過労死防止大綱」を策定しました。下記は2017年度の調査ですが、いまだに多くの人が過労や仕事のストレスで亡くなっている状況を示しています。厚生労働省発表の「過労死等の労災補償状況」から分かるデータを引用します。

  • 2017年度の過労死・過労自殺(未遂を含む)による労災認定:計190人(前年度より1人減)
  • 「脳・心臓疾患」による過労死:92人(15人減)
  • 「心の病」による過労自殺・自殺未遂:98人(14人増)

離職率と人手不足

少子高齢化でどの業界も人手不足に陥っている状況が、現場の長時間労働に拍車をかけています。若者の間では、勤務時間などの労働条件は、離職理由のなかでも大きなウェイトを占めます。平成30年版「子供・若者白書」によると、初職の離職理由は「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」が23.4%と3位で、「仕事が自分に合わなかったため」43.4%、「人間関係がよくなかったため」23.7%に次ぎます。長時間労働の是正は、労働力獲得のためにも解決が急がれます。

長時間労働の原因とは

下図は、経済産業省が実施した「働き方改革に関する企業の実態調査」に協力した回答者が、自社の長時間労働の原因として考える要因の上位4つです。

管理職の意識・マネジメント不足 44.2%
人手不足(業務過多) 41.7%
従業員の意識・取り組み不足 31.6%
社員の生産性・スキルの低さ 29.6%

「働き方改革に関する企業の実態調査」を基に作表

上位2つは管理職の意識・能力や人員数が問題だとする回答です。一社員が頑張っても如何ともしがたい構造的な要因が、長時間労働を余儀なくしている様子が分かります。

長時間労働の対策

長時間労働の対策

現場においては「業務効率化」「生産性向上」の概念が独り歩きしがちな働き方改革ですが、そもそもは「一億総活躍社会の実現」を目指すために、抜本的な労働条件の改善を図ることが目的です。長時間労働の是正は、「多様な働き方」や「非正規雇用の待遇改善」と共に働き方改革の主軸にあります。これまで、長時間労働の是正のために策定された制度とともに振り返ってみましょう。

罰則つき時間外労働の上限規制

「罰則つき時間外労働の上限規制」が、平成31年4月(中小企業は2020年4月)より施行されます。働き方改革の目玉である法改正といえます。

残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
施行:大企業 2019年4月~
中小企業 2020年4月~
厚生労働省

業界によっては特例があり、自動車運転業務、建設事業、医師に対しては5年間の猶予期間があります。

過労死ラインとは

「過労死ライン」には、法律的な定義はありません。しかし、医学的に確認された過労死などが起こりやすくなる目安を用いて、月平均で80時間以上の時間外・休日労働時間数を「過労死ライン」と呼んでいます。なお、過労死には定義が、労災には認定基準が設けられています。厚生労働省ホームページによると過労死の定義には「業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡」も含まれています。

36協定とサービス残業

36協定は、労働基準法第36条規定にちなみ「サブロク協定」と呼ばれている労使協定です。この協定は長時間労働と深い関係があり、締結して労働基準監督署長に協定書を届ければ、従業員に限度内であれば時間外・休日労働をさせることが可能となるものです。また「サービス残業」も労働基準法違反なのですが、残業代未払い問題とともに、解決に至るまで時間がかかる問題とみられています。

長時間労働対策 システム導入事例

長時間労働対策 システム導入事例

それでは、長時間労働の是正のため、システムの導入で改善を図った例を見ていきましょう。経団連はホームページで、働き方改革を加速させるため「働き方改革アクションプラン」の策定・提出を呼びかけています。働き方改革アクションプランは、以下3つの視点から「KPI」と「行動計画」を策定します。

  1. 長時間労働の是正
  2. 年次有給休暇の取得促進
  3. 柔軟な働き方の促進

このプランに基づいてPDCAサイクルを回し、働き方改革の深化・継続を図るのが狙いです。提出されたアクションプランから、取り組み事例を紹介していきます。

株式会社オリバー

株式会社オリバーは愛知のインテリア会社です。世の中の「働き方改革」の流れが後押しし会社の将来性を考え、従業員満足度を高めていくことに取組むことを決定しました。業務ノウハウやデータの最大限の電子化、イントラネット整備、情報共有化で業務効率化を促進。 新しい勤怠管理システム導入でノー残業を推進。立ったままの会議で時間を30分以内にするなどの取り組みをしています。

ブラザー工業株式会社

ブラザー工業株式会社は労働時間の適正化に取り組みました。社員はパソコンから専用のシステムに打刻すると、本人と上司が始業、終業等の時刻と、IC入門証の入退時間との差異時間を確認します。業務外で30分以上会社にいる場合も、理由の報告を必須にしました。またTV会議の利用などで、在宅勤務を現在30名が実施(うち男性3名)しています。

株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは、労働時間の見える化に取り組みました。社内イントラネットを使い、労働者全員のシフトや休暇の取得状況を誰でも確認可能にしました。時間外労働超過者をリスト化し、労働協議の場で共有をおこなっています。

株式会社パロマ

株式会社パロマは時間外労働に対する意識改革と時間外労働時間の『みえる化』に取り組み、ワークライフバランス実現を目指しました。紙ベースだった時間外労働の事前申請は、社内システムを電子化することで、パソコン申請が可能になりました。集計も容易となり、時間外労働をおこなう社員をリアルタイムで把握できるようになりました。部門長が部署の時間外労働実績の確認をしたり、会議などで分析を情報共有することも可能になりました。

まとめ

長時間労働は、会社の長年のやり方や組織の在り方から起こってしまうものでもあり、根本的な是正をおこなうには、まずデータ化の力を借りて労働時間を「見える化」しなければならないことが分かりました。そうしなければ改善点も見えてこないし、有効な対策を立てられません。また、社員の労働状況の情報共有化も、長時間労働の是正をおこなっていくためには必要な取り組みです。「見える化」「情報共有化」の両方が、システムでデータ管理をおこなえば可能になります。