コスト削減と品質向上は両立できる?可能性や改善のためのプロセスをご紹介
コスト削減と品質向上を両立することができれば、顧客満足度や生産性の大きな上昇が見込めます。しかし、そのようなことが本当に可能なのでしょうか。
この記事では、コスト削減と品質向上の両立が可能かどうかについて解説します。合わせて、両立のための改善プロセスや実際の事例をご紹介します。
考え方や手法を学び、事業体質の強化に努めましょう。
コスト削減と品質向上の両立は可能か?
コスト削減と品質向上は一見相反するファクターですが、果たして両立は可能なのでしょうか。まずは、その辺りについて見ていきたいと思います。
必ずしも不可能というわけではない
結論から述べると、コスト削減と品質向上の両立は必ずしも不可能というわけではありません。長い歴史の中で見ると、品質を向上させながらコストを削減した例はいくつも存在し、それは時に「イノベーション」と呼ばれることもあります。
イノベーションが起こると従来の価値観や手法が変わり、生産性の多大な向上に繋がります。それにより、品質が向上しつつ新しい生産方式によってコストも削減できるというわけです。
一般的にコストと品質には相関関係がある
とはいえ、コスト削減と品質向上を両立させるのは簡単なことではありません。一般的にコストと品質の間には相関関係があり、コストを下げると品質も下がり、コストをかければ品質も向上するのが通常です。
コスト削減と品質向上を両立させるためには、その法則を捻じ曲げる必要があるでしょう。幸いなことに、数学の公式や化学式とは異なり、ビジネスにおける法則は不変的なものばかりではありません。
両立させるためには工夫が必要
コスト削減と品質向上を両立させるためには、工程を工夫する必要があります。普通にやっていたのではコストと品質には正の相関関係があるため、両者を並び立たせることはできません。
両立させるためにはプロセスを見直し、テストや改善を繰り返すことが大事です。一度のトライでうまくいくことは稀であり、通常は何度も仮説を立て検証するプロセスを辿ることになるでしょう。
困難な道ではありますが、現代のように市場が成熟した中ではそれも欠かすことのできない企業努力の一つです。より良い商品を低コストで消費者に届けることこそ、ビジネスの本懐と言えるのではないでしょうか。
両立させるための改善プロセス
それでは、次にコスト削減と品質向上を両立させるための改善プロセスについて見ていきましょう。下記のような点を重視することで、コスト削減と品質向上の両立に近づけます。
業務を見直し、「価値のあるもの」にリソースを集中させる
まず一つ目のプロセスとしては、「業務を見直し、効果の高い部分にリソースを集約する」ことです。会社の事業というのは多くのタスクから成り立っているものであり、その中には重要なものからそうでないもの、緊急度が高いものからそうでないものまで多種多様に存在します。
また、尺度の一つとして「投資対効果」というものも挙げられます。投資対効果とは、「投資したリソースに対して得られた効果」という意味であり、投資対効果の高い業務を多く行えば事業の収支改善に役立つというわけです。
では、どのように投資対効果の高い業務を見分ければよいのでしょうか。そのためには、下記のようなプロセスを辿るのが有効です。
現状分析と改善策の立案
業務の効果を探るためには、まずどのような業務があるのかを把握しなければなりません。そのための現状分析、そしてその結果から改善策を立案します。
業務を全て洗い出すと膨大な数になることもあるため、部署や分野でカテゴライズするのもよいでしょう。そして、洗い出した業務一つ一つの効果を測定し、より良いプロセスになるような改善策を考えます。
PDCAサイクル
改善策の立案が終わったら、PDCAサイクルを回し始めましょう。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとった言葉であり、これら一連の流れを何度も繰り返す手法です。
改善策を立案した時点では、それが正しいかどうかは分かりません。効果を判断するためには実際に行ってみるしかないでしょう。
そして、「行った結果どうなったかを記録し、その結果を参考により良い案を探る」ことを繰り返すのがPDCAサイクルです。適切なPDCAサイクルを回せば回すほど、プロセスの改善が期待できます。
専用システムの導入も検討しよう
品質向上とコスト削減を両立させるためには、専用システムの導入を検討するのも手です。現代はインターネットやテクノロジーが進化し、多くの業務をITに頼ることができるようになりました。
コンピューターが行った方が好ましい仕事はコンピューターに任せ、人間は人間にしかできないことに集中すれば生産性の向上が見込めます。また、人間の目視より機械によるチェックの方が精度が高いのであれば、業務スピードと商品品質の向上の両立も期待できるでしょう。
短期ではなく、長期的な目線で行う
コスト削減と品質向上の両立は簡単なことではありません。一時的に成立したかのように思えた場合でも、時間の経過と共に効果が弱くなってしまうケースもあります。
そのため、業務プロセスの改善は短期ではなく長期的な目線で行うように心がけましょう。一度行ったら終わりというものではなく、何度も繰り返し精査し、常により良いものを求めることが大切です。
市場が常に変化するものである以上、事業スタイルや業務プロセスもそれに合わせる必要があります。激変するグローバル市場では、「常に変化し続けられる組織」こそ強い企業と評価されるのではないでしょうか。
コスト削減と品質向上を両立させた事例
では、最後にコスト削減と品質向上を両立させた事例をご紹介します。どのように両立を実現するかは事業内容や業界によって大きく異なるところですが、一つの例として参考にしてみてはいかがでしょうか。
IPCと自社規格を併用し、品質向上とコスト削減を達成した事例:日本精工
日本精工は、自動車部品などを製造・販売しているベアリング国内トップシェアをほこる会社です。日本の製造業は技術が高いものの、国際的な評価基準にそぐわないため世界市場でシェアを獲得できていない傾向があります。
日本精工は自社製品にIPC規格(グローバルメーカーによる標準規格)を導入し、品質基準の統一とコスト減を図りました。合わせて、IPCではカバーしきれない部分を自社規格として活用しています。
まとめ
コスト削減と品質向上は一見相反する要素ですが、両立が必ずしも不可能というわけではありません。もちろん簡単なことではないため、実現には創意工夫や弛まぬ改善努力が必要になるでしょう。
そのコツは、「業務プロセスの洗い出し・見直し」「PDCAサイクル」です。そもそも、自社にどのような業務があるのかを知らなければ改善のしようがありませんので、まずはそこからスタートする形になります。
場合によっては、専用システムの導入が功を奏するケースもあります。現代において、インターネットやテクノロジーを正しく使うことができれば強力な武器になるのではないでしょうか。
激変するグローバル市場では、変化に対応できる企業こそ強い企業であると言われています。自社の業務を正しく把握および測定し、品質向上とコスト削減の両立を目指しましょう。