生産性向上は業務効率化となにが違う?ボトルネック洗い出しとその進め方

業務効率化

「生産性向上」は、近年よく聞かれる言葉となりました。その具体的な定義とは、どのようなものでしょうか。

「業務効率化」もよく聞く言葉ですが、生産性向上とは違った意味で使われているのでしょうか。すべての会社は、売り上げを伸ばし付加価値の高い商品を生産したいと思っています。

そして、会社の将来性までも担保できるようなイノベーションを願っています。それはどのようにしたら遂行できるのでしょうか。

生産性向上の概念とは?

政府推進の「働き方改革」でも注視されているのが、この生産性向上です。生産性と、1人の労働者で得られる生産性「労働生産性」の算出方法は次の通りです。

生産性=得られた成果(付加価値)÷投入した資源
労働生産性(1人の労働者で得られる生産性)=得られた成果÷資本(労働量)

労働生産性とは「1人あたりの労働者が、どれだけ効率的に成果を生み出しているか」をあらわす指標です。生産される付加価値が高いほど、労働生産性は上がります。

生産性が高い=少ない資源で多くの成果を上げられている

残念ながらOECD加盟国中では、日本の時間あたりの労働生産性は、35か国中20位です。

主要国G7のなかでは最下位となっています。(下図参照)

出典:『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017年版

労働生産性を向上させることは、もはや国家的な課題ともいえます。世界における国の国際競争力を上げることに直結するからです。もちろん、会社の労働生産性が上がれば、国内での競争力が上がるのはいうまでもありません。

政府が「働き方改革」で生産性の向上について強く訴えたのは、このような背景があるからなのです。

生産性向上のメリットとは(利益、労働の質向上、国内外競争力アップ)

生産性を向上させると、様々なメリットを持つようになります。特に下記のような効果が得られます。

  • 利益が上がること
  • 労働の質が向上すること
  • 国内外の競争率がアップすること

納期短縮や粗利が上がるなどの成果が出て、「利益」は当然上がります。「労働の質向上」とは、勤務時間の短縮や労働者の仕事に対する満足度が上がり、良い循環をもたらすという意味です。

「競争力アップ」は国家的課題です。日本の国際競争率は、生産性の低さゆえに下落傾向にあるため、生産性の向上でこれを食い止めることが願われています。

「業務効率化」と「生産性向上」と違いとは?

「業務効率化」と「生産性向上」と違いとは?

生産性の向上というワードは、政府が「働き方改革」を推進してから、ニュースなどでもよく聞かれるようになりました。生産性向上は、もともと多くの会社が目指すところなので、ビジネスで頻繁に使われる言葉ではありました。しかし問題は、近年「生産性の向上」と「業務効率化」が時として混同して使われていることです。

業務効率化の記事で、業務効率化のキーワードは「低コスト化」と「スピードアップ」であると申し上げましたが、この二者は、生産性向上までを絶対的に約束するものではありません。

「業務効率化」と「生産性向上」のゴールは違う

まず、業務効率化と生産性向上の意味の違いを明らかにしていきましょう。二者の意味を混同せずに、目的の違いを良く知ったうえで取り組んでいくと効果的だと思われます。

業務効率化のゴールとは(スピード、コスト)

業務効率化の目指すところは、仕事が早くなり、残業時間が無くなり、経費削減の遂行を目指すことなどが業務効率化の意味です。

生産性向上のゴールとは(会社の成果、レバレッジ)

WebマガジンのBooks&Appsが、「生産性が高い」の意味について解説していますので抜粋します。

生産性が高いこと=成果に直結するアクションに対して、レバレッジを効かせて取り組むこと
Books&Apps

成果とは?

それでは「成果」とは何を意味するのでしょうか。成果とは、会社の業種によっても意味するものが違ってくるでしょう。

  • 商品、サービス
  • 売上
  • 利益
  • 付加価値

これらが成果として上がってこそ、会社が存続できます。業務効率化も生産性向上も、「成果」を生み出すのが最終目的です。前述のBooks&Appsは、成果の定義にもう一つ付け加えています。

「成果=会社のミッションに寄与する価値」

たしかに、会社のミッションステートメントは掲げるだけでなく、実体的に近づいていかなくてはいけません。

レバレッジを効かせるとは?

では「レバレッジを効かせる」とは、どういう意味で使われているのでしょうか。レバレッジは「テコ」という意味です。「テコ入れする」とは「小さな力で大きな成果を得る」という状況を表現しています。

会社において「レバレッジを効かせる」ことは、成果に繋がる「コア業務に特化する」ことになるでしょう。

コア業務の内容は各会社の業種によって違うわけですが、たしかに、コア業務が強化されれば「より生産性が高い状態」を維持できるようになります。

生産性向上を図るには

生産性向上のカギとなるのは、「コア業務に特化すること」であると申し上げました。たしかに、会社の成果に直結する業務にのみ、会社のリソースを使うことができたらどんなに良いでしょうか。

実際には、段取りや連携の悪さからタイムロスがあったり、貴重な人材がかなりの手作業に充てられていたりと、コア業務だけにフォーカスできない現状があることでしょう。しかし、会社の将来性を確保するためには、コア業務ファーストに体質改善すべきです。

ボトルネックとなる業務の洗い出し

ボトルネックとは、文字通り「瓶の一番細い部分の、中身が出にくい部分」を指します。現場ではよくこのボトルネックが使われますが、それは「作業効率を最も下げる工程」という意味で使われます。

ボトルネックの探し方ですが、次の場所を洗い出すと発見に近づくといわれています。

  1. 仕事が停滞している工程
  2. 問題やトラブルが頻繁に発生する工程
  3. ラインの中で最も作業時間が長い工程
  4. 稼働率が高い工程

ボトルネックを探し出し原因を究明して、解決策を探しましょう。

周辺作業の外注化、システム化検討

先ほど申し上げた通り、会社の生産性を向上させるためにはコア業務に特化すべきです。しかし、実際には現場の諸業務に追われて、貴重な人材をなかなか中枢業務に集中させてあげられないのが現実ではないでしょうか。そこで、周辺作業の外注化や、システムの導入を視野に入れることをおすすめします。

システム導入の目的こそ、会社が「コア業務に特化」し「生産性をあげる」ようにサポートすることです。

会社の将来性アップも視野に入れると、ぐっと必要性が増す解決方法だと思われます。

スキルアップ、モチベーションアップも重要

会社の生産性を上げるためには、労働者のスキルアップやモチベーションアップも図らなければなりません。たとえば、システム化すれば解決するのに、ヒューマンエラーの出やすい作業に人手で取り組ませ、頻繁にやり直しをしている状態があったとします。

このような状況では労働者のモチベーションは下がる一方です。他の会社の労働環境と比べて、退職してしまうかもしれません。また、労働者に新しいスキルを習得させてあげるのも、モチベーションアップに有効なのです。

まとめ

生産性向上の概念や進め方について、紹介して参りました。あなたの会社に早速取り入れてみたいご提案はありましたか?
業務効率化は、作業工程におけるムリ・ムラ・ムダを洗い出すなど、非効率の排除を主に目的としています。

対して生産性向上は、そもそも会社の提供する商品やサービスの「質」を見直し、維持・向上させるところを目指していますので、会社の存在理由のより本質的なところに迫っているといえるでしょう。