製造業の生産を効率化!6つの課題確認と最適化方法

業務効率化

昨今の景気状況から製造業に求められていることと言えば、製品サイクルの短期化、コスト削減、納期短縮、品質向上など、現実の管理や作業からの視点で見ると相反するようなことが多い状態です。

しかし市場からは求められているため、何とかしてこれらを実現する必要が出てきます。もし放っておいたとすると、近い将来には経営にダメージが出てくるかもしれません。

そうなる前に、製造業の生産における課題を確認し、今よりも一層現場力を高め効率化を行う必要があります。

それでは製造業の生産における課題と現場力を高める効率化の方法を見ていきましょう。

製造業の生産における課題

はじめに製造業の生産における6つの課題を見ていきます。あなたの会社にも思い当たることがあると思います。

人材不足

経済の復調によって製造業は力を取り戻しつつあります。これは大変うれしいことですし、将来的に見ても安心できる材料です。しかし、ここで大きな課題が出てきています。それは人材不足という深刻な課題です。

いくら経済の復調によって製造業の仕事が増加してきたとしても、実際に現場で作る人材が不足していては生産が追いつきません。生産が追いつかないということは、手に入る売上を逃していることになります。

また、人材不足が直接の原因となっているのかはっきりはしていないですが、大手製造業で発覚した「検査不正」によって、製造業の根幹を揺るがしかねない「現場力の低下」も浮き彫りになっています。

標準化が難しい

製造業で生産を行う場合、全く同じ物ばかりを全社員が製造していることはありません。製造ラインや部門ごとに行っている仕事の内容が違っているため掛かる負荷も当然違ってきます。

これは誰もが頭では理解しているはずのことですが、自然と従業員の間では不公平感が出てきます。部門間でも仕事の負荷の違いから不公平感が出てきます。

その結果、放っておくとフラストレーションを溜めた職場となり、お互いを助け合うような理想の職場を期待することはできません。

このように製造業は他の業種とは違い、個々のやっていることを「見える化」することが難しいため、仕事を標準化することも簡単ではありません。これは仕事の効率化を考えたとき、大きな課題となります。

漏れや手配ミスが発生する

生産現場では、材料の手配漏れや手配ミスの発生をゼロにすることはかなり難しいことです。どうしても手配に関しては人の手で行われることが多いです。すべての手配を一人が行うことはなく、何人か、または、いくつかの部署を通して手配を行うため、途中で漏れやミスが起こることもあります。

そのため、このような手配漏れや手配ミスを防ぐ方法として、手配における承認フローの取り決めが行われているかと思いますが、手配ミスは少なくなるかもしれませんが、今度は承認という人の手間が必要となります。

不良率が把握できていない

製造業につきものの不良品。いくら気をつけていても出てしまうものです。理想はゼロにすることですが、残念ながらゼロにするために必要な、現在の不良率がわかっていないということもあります。

また、最終的な不良率がわかっていたとしても、どの工程で不良率が高いのかどうかを特定することは難しく、結果的に不良率の管理は難しいという課題があります。

部品調達が合わない

製造業では常に計画があります。経営計画、販売計画、生産計画、そして調達計画。経営計画や販売計画で出てきた数字が正しくなかった場合、生産計画も調達計画も間違った数字になってしまいます。

もし、間違った数字のまま生産を行うと、生産が追いつかなくなり販売の機会損失を招くことがあります。これは経営に大きなインパクトを与えます。反対に在庫を抱えてしまった場合、無駄に作ってしまっていますから、こちらも経営に影響を及ぼします。

製造業の生産には、こういった一連の計画を正しく伝える仕組みや環境を整備することが必要です。

他部署とのコミュニケーションが難しい

製造業の生産には多くの部署が関わっています。具体的には営業、製造、技術など、複数の部署が関わることで成り立っているのですが、これらの部署間が同じ会社であるにも関わらず「対立」してしまうことがあります。

お互いがスムーズにコミュニケーションできない。コミュニケーションの場がそもそもない。コミュニケーションのタイミングもない。こういったことが続くと、多くの場合は生産部分を担う部署が板挟みになることが多いです。

このような状況は、製造業の生産における大きな損失だと言えます。おかしな対立によって、先ほどの計画の数字が正しくなくなったということが起こらないとは言えません。コミュニケーションは生産における重要な課題でしょう。

現場力を高める効率化の方法

現場力を高める効率化の方法

課題の次は、現場力を高める効率化の方法を見ていきます。どれもすでにご存じのことかもしれませんが、知っているとやっているでは違います。

もう一度見直しながら、実際に出来ているかを確認しながら読み進めて頂きたいと思います。

5Sから行う

製造業の方ならご存じ「5S」。整理、整頓、清掃、清潔、躾をアルファベットへ置き換えて頭文字をとったものです。

5Sは製造業が抱える、ムダ、ムリ、ムラを可能な限り排除し効率化するために定評のある考え方です。そのため大手製造業であるトヨタやキャノンなどでも導入され、「5Sは当たり前」という前提で仕事を行っています。

ただし「5S」には落とし穴があります。それは5Sの本質である「なぜやるのか」を理解せず、ただ

  • 掃除すればいいんだろう
  • 整理整頓すればいいんだろう
  • 言われたからやっておこう

くらいに考えていると、いくら続けても効果を感じることができません。

「大手がやっているから導入すれば同じように効果が出る」という考え方ではなく、本当に効率化を考えて5Sを導入するなら、「なぜやるのか」を理解してもらった上で実施されるのが良いでしょう。

動作の分析

現場力を高める効率化として、わかりやすいのが動作を分析することです。作業を行っている人たちの動きを観察・記録し、ムリな作業やムダな動き、ムラのある待ち時間などを分析しましょう。

特に次のような動作を発見し改善することは効率化を後押しします。

  • 手待ち作業が意外にある
  • 長い時間を必要とする作業が入っている
  • AさんとBさんでは同じ作業なのに作業時間が全然違う
  • 必要のない動きをしている
  • ムリな姿勢や体勢で作業して時間が掛かっている

動作の分析は作業効率のアップにも役立ちますし、今後の事故防止にも役立ちます。

段取り時間の効率化

生産現場が扱うものにもよりますが、金型の交換やラインの変更などは時間を使います。また交換や変更中は作業者が待ち状態になっているため、時間も人ももったいない状態になってしまいます。

そこで生産計画を立てるときから、同じ製品はまとめるように計画しましょう。また生産の順番を適切に組み替えることで、金型の交換やラインの変更の機会を少なくする計画を立てましょう。

段取り時間を効率化するためには、他部署とのコミュニケーションが大切になってきます。「自分の部署だけが良ければいい」では、生産計画を工夫することはできません。

設備のレイアウトを検討

生産するものによって設備のレイアウトが使いやすいかどうかを検討しましょう。生産現場では様々なレイアウトがありますが、如何にして作業をする人の無駄な動きやムリな動きを削減できるのかを考えることが大切です。

工程の分析

生産の現場では、どこかの作業が遅れると全体的に遅れが出ます。いつも同じところで遅れが出るのか、決まった作業者の時だけ遅れが出るのか。一定の生産数を超えると遅れが出るのか。遅れの原因となっている工程(ボトルネック)を分析しましょう。

ボトルネックを改善することで、効率化も進みます。

効率化を進める際のポイント

では次に、効率化を進める際のポイントについていくつか解説します。

ワークフローを可視化する

生産を効率化するには、ワークフローの可視化が重要です。ワークフローとは業務の一連の流れを示したものであり、さまざまなタスクや処理が内包され構成されています。

ワークフローを可視化することにより、業務がどのような流れで進んでいるのかを確認できるでしょう。その中に明らかに無駄と思われる業務が混ざっている場合、それをカットすれば効率化に繋がります。

カット刷る場合は「本当に不要かどうか」をしっかり精査することが大事です。一見不要だと思われたが実は重要なタスクだった、となれば逆に生産性が下がる恐れもあるからです。

PDCAサイクルを回す

PDCAサイクルを回し続けることで、生産の効率化に繋がります。PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったものであり、PDCAの流れに沿って業務改善を行うことで効率化を図ろうといった考え方です。

PDCAサイクルを適切に回すことができれば、業務フローの継続的な改善が期待できます。PDCAを扱う際に大事な点としては「定量的な評価を行う」「評価軸が正しいかどうかを適宜チェックする」などが挙げられます。

評価が定量的に行われないと、客観的な判断ができません。また、評価軸そのものが狂っていては業務改善に繋がらないため、軸そのものを定期的にチェックすることも求められます。

システム化する

業務をシステム化することで、大幅な業務効率化が見込めます。従来業務をシステムに代替させることができればその分人的リソースに余裕が生まれるため、他の重要性の高い業務に人手を回せるようになるでしょう。

人間の目視による判断より、機械による判断の方が素早く正確なことも多いです。全ての判断をシステムに委ねるのはリスクがあるかもしれませんが、可能な範囲でシステムの恩恵を受けることができれば、リソース削減だけでなく売上や利益向上も期待できます。

業務をシステム化するメリット

業務をシステム化することによるメリットについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。業務をシステム化すれば、一般的に下記のような利点が生じるでしょう。

ルーチンワークの自動化

業務をデジタル化すれば、ルーチンワークの自動化に繋がります。誰がやっても効果の変わらない定型的な処理はどんどんシステムに任せ、人の手をより重要な業務に費やすようにすれば生産性の向上が見込めるでしょう。

簡単な自動化であればエクセルなどのソフトでも可能ですが、専用の業務システムを導入すれば幅広い範囲の自動化が期待できます。合わせて、入力したデータから経営判断のサポートを受けることもできるでしょう。

「システムによる自動化」というとプログラミングなどが頭に浮かび、「難しいのでは?」という懸念を持つ人もいるかもしれません。もちろんそういったケースもありますが、システムによっては簡単な操作で複雑な処理を行えるものもあります。

リソースの効率化

従来は人の手でやらなければならなかった業務をシステムで自動化することにより、人的リソースをより重要な業務に集中できます。いくらテクノロジーが進んだとはいえ、未だに人の手でやらなければならないことも多々あるのではないでしょうか。

人的リソースを必要とする業務例として、下記のようなものが挙げられます。

  • フェイストゥフェイスの方が効率的に進むもの(営業や接客など)
  • 複雑な判断を必要とするもの(経営判断や稟議など)
  • きめ細やかなサポートを必要とするもの(ヘルプデスクや顧客対応など)

もちろん、これら業務の一部を自動化し効率化することも可能です。自社が行うべき業務の本質を見極め、「何をシステムに代替させるか」を正しく測りましょう。

さらに現場力を高めるシステム導入事例

さらに現場力を高めるシステム導入事例

最後にシステム導入を行うことで現場力を高めた事例を紹介します。今回は、アパレル製造業、機械製造業、加工食品製造業の事例を取り上げていきます。事例はITトレンドから引用します。原価削減・コスト削減、在庫に関する悩みや生産効率の向上を改善したいと願う会社は多いはずです。これらの事例には、あなたの会社に活かせる内容もあるのではないでしょうか。

原価削減・コスト削減:アパレル製造業

あるアパレル製造業では、手作業による計画原価と実績原価に大きな差があることが課題でした。この課題を人が改善しようとすると、管理のためにコストが掛かるという負のサイクルに入ってしまっていました。そこで生産管理システムを導入したところ、これまでの実績から原料所要量を導き出すことで計画原価の予測精度がアップ。その結果、適切な量の材料を仕入れることができ、原価削減・コスト削減を実現することにつながりました。

生産精度アップ・過剰在庫不良在庫の減少:機械製造業

多品種少量生産を行う機械製造業では、繁忙期と閑散期の生産ラインのコストダウン、閑散期の見込み生産による在庫の管理に課題を抱えていました。そこで生産管理システムを導入したところ、発注手配や納期確認などの工数を削減できたことで、受発注業務の効率化に成功。結果、得意先からの需要が適切に読めるようになったことで、生産ラインのコストダウンにもつながりました。また、適切な需要を読むことで、閑散期の見込み生産の精度もアップし、過剰な在庫、不良在庫の減少にもつながりました。

原価の見える化によりコスト意識アップ:加工食品製造業

ある加工食品製造会社では、生産管理を紙ベースで行っていました。紙ベースの管理ですから、生産効率は向上しなくなり、不良在庫を抱えるようになりました。そこで加工工程や生産を管理できるシステムを導入したことで、紙ベースでは管理できなかった、すべての製品の情報を一元管理。一元管理された情報から生産効率と在庫管理が適切に行えるようになりました。また、生産管理システムによる「原価の見える化」により、会社全体にコスト意識が広がるというメリットにもつながりました。

まとめ

製造業には人の不足や標準化できない作業など、簡単に解決できない課題が多くあります。しかし、そのまま放っておいては市場のニーズに応えられなくなり、いつの日か会社がまわらなくなってしまいます。

そうなる前に、今回の課題を確認し、現場力を高める効率化の方法を取り入れられないか検討してください。そして将来のことを考えるのなら、生産管理システムなど、ITの力を上手に取り入れていくことで効率化を進めて頂きたいと思います。