ITを活用した業務改善には課題の明確化が大事。業務改善のプロセスやポイントを事例つきで解説
ITシステムやツールを活用することで、大幅な業務改善を行うことが可能です。この記事では、ITを利用した業務改善のプロセスやポイントについて具体的事例をまじえつつご紹介します。
ITを活用して業務改善を行うには?
ITを活用して業務改善を行うには、どのような流れで行えばよいのでしょうか。まずは、業務改善プロセスについて見ていきましょう。
課題を明確にする
まずは、自社にとっての課題を明確にしましょう。システムを導入する主目的は「現在起きている課題や問題を解決する」なので、課題が明確でないと正しいシステムの選定や運用ができません。
その一例としては、下記のようなものが挙げられます。
- 営業活動を効率化し、同じ労力とリソースで売上を向上したい
- 顧客単価を上げ、財務体質を強化したい
- マーケティングプロセスを自動化し、販売強化に繋げたい
この辺りは各企業の特徴や置かれている状況によって異なるため、自社を俯瞰することが大事です。
課題を解決するためのシステムを選定する
課題が明確になったら、次はそれを解決するためのシステム選びに入ります。業務システムは種類も製品数も多数存在するため、どれが自社にとってベストかという判断は難しいものがあります。
見るべきポイントとしては、下記のようなものが挙げられるでしょう。
- 必要十分な機能が搭載されているか
- ベンダーの対応は迅速かつ誠実か
- システムの将来性はあるか
- 現場への浸透はスムーズにいきそうか
もちろん自社の特徴によって重視すべき点はさまざまです。なるべく多角的かつ長期的な視野でシステムを選びましょう。
実際に導入、運用する
システム選びが終わったら、次は導入および運用のフェーズです。導入予定のシステムが納品されてから実際の運用フェーズに進んでもよいのですが、できれば事前に運用シミュレーションや現場の啓蒙を行っておきましょう。
システムの運用は現場のワークフローを大きく変えることも多いため、反発を招くケースも考えられます。業務システムは導入して終わりというわけではなく、実際に使われて結果を出して初めて意味をなすものです。
それだけに、現場への浸透がスムーズに運ぶよう取り計らうことが重要です。
業務改善に役立つITシステム一例
では続いて、業務改善に役立つITシステムの一例をご紹介します。
情報共有システム
情報共有のためのシステムを活用すれば、情報をチーム内で瞬時に共有可能です。情報を複数人で素早く共有することにより、さまざまな面での漏れが生じにくくなります。
現代では情報の重要性が増しているため、いかに重要情報をメンバー間で適切に共有するかが重要になっています。情報共有システムを導入し適切に利用すれば、メンバー間での情報共有を効率化することができるでしょう。
全員と共有することも可能ですし、部署や職域によって閲覧可能な情報を制限することもできます。情報閲覧に正しく制限を加えることで、セキュリティの強化にも繋がるわけです。
コミュニケーションツール
コミュニケーションツールを活用すれば、コミュニケーションにおける業務改善を図りやすくなります。一口にコミュニケーションといってもさまざまな意味がありますが、ITシステムが得意とするのは「情報共有」および「遠隔コミュニケーション」でしょう。
情報共有は前述の通りですが、それに加え遠隔的なコミュニケーションを行えるようになります。従来、会議を開く際に出席者が全て同じ場所に集まる必要がありましたが、今はそうではありません。
オンライン会議ツールなどを活用すれば、メンバーが異なる場所にいても会議を開くことが可能です。
各種管理システム
他にもさまざまな種類の管理システムを活用することで、業務改善に繋がります。管理システムの例としては、たとえば下記のようなものが挙げられるでしょう。
- 顧客管理システム
- 勤怠管理システム
- 文書管理システム
それぞれ何を管理するかは異なりますが、対象になるものをデジタル化して保管および取り扱い可能な点が共通します。顧客管理システムの場合、顧客情報や購買履歴、商談内容などがシステムに保存される形になります。
必要に応じてそれらを活用すれば、業務遂行において多くの利点が生じるわけです。
ITで業務改善を行う際に注意したいポイント
では、次にITを活用して業務改善を行う際に注意したいポイントについて解説します。システムの選定や導入・運用をスムーズに行うためにも、下記のような点に注意しましょう。
有名なものではなく、問題解決できるものを選ぶ
システム選びに慣れないうちは、どうしても有名なシステムや客観的評価の高いものを選んでしまいがちです。それはそれで間違いではないのですが、有名だからといって、また客観的評価が高いからといって必ずしも自社の課題を解決してくれるとは限りません。
有名なものや評価の高いものは、おおよそ汎用性を高めた設計が行われています。それゆえに自社にマッチする確率も高いのですが、自社業務の特性が一般的なものでない場合は注意が必要になるでしょう。
システムも相性やマッチングが重要です。
システムについての基礎知識を学ぶ
システムについての基礎知識をあらかじめ学んでおくことで、ITを使った業務改善がスムーズに運びます。業務システムは万能ではなく各々できることとできないことがあり、また種類や製品によって得意なことと不得意なことが存在します。
それらを大まかに学んでおけば、自社の課題に対してどのようなシステムを導入すればよいかイメージしやすくなるでしょう。また、ケースによっては業務システムではなく他の有益な選択肢があるかもしれません。
大事なのは、状況を俯瞰して総合的に判断することです。目的に対しベストな判断を下すのは難しいものですが、その心がけを持ち続けることでさまざまな選択肢が浮かび上がってきます。
現場に浸透させるための努力は怠らない
繰り返しになりますが、システムは導入してそれで終わりというわけではなく、現場で活用され結果が出て初めて意味をなします。それだけに、現場に正しい使い方をしてもらうことが重要です。
現場の心理として、慣れ親しんだワークフローを変えることに抵抗を感じたとしてもおかしくはありません。経営者としては柔軟に変化に適応してほしいと思うのものですが、なかなかそうもいかないのが現実です。相手も人間なので、理屈では理解できても感情が追いつかないといったこともあるでしょう。
であれば、システムのスムーズな導入には、ロジックだけでなく情緒面からのアプローチも有効です。他人ごとではなく自分ごととして認識してもらうためにも、「現場の負担を減らすため」や「より価値のある業務に集中してもらうため」のような理由付けで捉えてもらいましょう。
正しいシステム選びに必要なこと
続いて、正しいシステム選びに必要なことをいくつか解説します。システムは活用されてこそ意味が生じるため、自社にとって使い勝手のよいものを選びたいところです。
自社業務との相性を重視する
システムを選ぶ際には、自社業務との相性を重視しましょう。有名なシステムや高機能なシステムを選ぶのも悪くはありませんが、自社業務との相性が悪い場合は使い勝手に難が生じます。
相性のよいシステムを選ぶためにも、まず自社がどのようなシステムを欲しているかを明確にしなければなりません。そのためには、自社がシステムに何を求めているか、もう少し遡ると自社にどのような課題があるのかを分析する必要があります。
ITシステムの多くは、何らかの課題を解決するために作られています。自社にどのような課題がありそれをどのように解決したいかを模索することで、自ずと相性のよいシステム選びに繋がるでしょう。
プロに相談する
プロに相談することで、間違いのないシステム選びに繋がるのではないでしょうか。ITの分野は日進月歩であり、その全てを把握するのは困難を極めます。
プロといえど、ITの全部門について詳細に知っているわけではありません。「じゃあ相談する意味はないんじゃないか?」という声が聞こえてきそうですが、自社が導入したい種類のシステムを専門に扱っているプロに相談するのが一つの手です。
プロに適切に相談することで、自社の知見では及ばなかったところに手が届くようになるでしょう。加えて、陥りやすいポイントを回避したり、実運用における有益なアドバイスも期待できます。
ITを活用し業務改善を行った事例
それでは、最後にITを活用し業務改善を行った事例をいくつかご紹介します。
チャットツールでコミュニケーションを改善:イオンドットコム
イオンドットコムは、小売大手であるイオングループのEコマースなどを手掛けている会社です。同社は業務領域が多岐に渡っていることから組織が複雑化しており、拠点も三箇所に分かれていたため、従業員間のコミュニケーションに問題を抱えていました。
一例としては、「コミュニケーションツールが統一されていない」「まとまった文化を持てていない」などです。そこでコミュニケーションの一本化を図るために柔軟なセキュリティ設定が可能なチャットツールを導入しました。
結果として、メールが減り社内のコミュニケーションがカジュアル化。セキュリティレベルを確保しながなら、リアルタイム性のあるやり取りが可能になりました。
情報共有ツールでナレッジ管理を改善:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は、インターネット上でさまざまなサービスを運営している大手企業です。会社にはさまざまな情報やナレッジが眠っているのですが、それらをうまく使いこなせず暗黙知の状態にしてしまっている企業も多いかもしれません。
同社では、ナレッジやノウハウを一元管理するために情報共有ツールを導入しています。導入当初は動作速度やトラブルの発生など問題も多かったのですが、メンテナンスを重ねて現在では7000名を超える全ての従業員がツールを活用しており、一日に15000回もの投稿がなされています。
その結果、「新しいことを行う際にはまずツール内で検索」といった文化が馴染み、色々な面で応用がきいたり先人の知見を活かせるようになりました。
タスクを可視化し、業務管理を改善:リクルートライフスタイル
リクルートライフスタイルは、「ホットペッパー」や「じゃらん」などの有力メディアを手掛けている会社です。同社では、メールを利用してタスク管理を行っていましたが、大量に届くメール中から該当のものを見つけスレッドを遡ってステータスを確認するなど、大変な手間がかかっていました。
そこでプロジェクト管理ツールを導入し、タスク管理の効率化および可視化に着手しました。結果として、業務の偏りや処理能力などが目に見えるようになり、業務の適正配分が可能となりました。
まとめ
ITを利用した業務改善では、まず「課題の明確化」を行い、それに沿ったシステムやツールを選ぶことが大事です。自社に合ったシステムやツールを導入し、効果的な業務改善を目指しましょう。