健康経営の説明とそのメリットをIoT活用による事例を交えてご紹介

ビジネス

「健康経営」という言葉を聞いたことがありますか?
健康経営とは、自社社員を対象に戦略的に実践される健康管理のことです。社員の健康が促進されれば収益にも良い結果が出るという、経営的な考え方がベースになっています。昨今のIoT活用などのイノベーションが、その実施を後押ししているともいえます。身近な企業で実践された健康経営の事例を挙げながら、その意義をまとめてみました。

健康経営とは

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
経済産業省

「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人認定制度」を創設した目的は、優良な健康経営に取り組む法人の「見える化」です。そういった企業の社会的評価が上がるようにするのが狙いです。

「健康経営銘柄」とは

「健康経営銘柄」とは、経済産業省が東京証券取引所と共同で選定しているものです。候補の企業は東京証券取引所の上場会社の中から選ばれ、おこなわれた調査から「健康経営」に優れた企業が選定され「健康経営銘柄」として紹介されます。「健康経営銘柄」として選定される企業は、長期的な視点から企業価値の向上を重視する会社であるとみなされるため、投資家にとって魅力的です。
選定はすべての上場会社に対して調査をおこない、従業員の健康に関する取組についての調査を行います。

「健康経営優良法人認定制度」とは

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みを基にして、なかでも特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を表彰する制度です。
健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」し、社会的に評価を受けることができるように環境整備するのが目標です。
「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」があり、それぞれで「健康経営優良法人」を認定します。

「健康経営」ガイドブックと 健康経営ハンドブック

健康経営ガイドブックと 健康経営ハンドブックが発行されています。それぞれ発行元は違います。

健康経営ガイドブック

経済産業省が策定した、企業による「健康経営」を促進するためのガイドブックです。厚生労働省が進める「データヘルス計画」と連携しており、企業・経営者向けに「健康経営」のポイントをまとめてあります。

健康経営ハンドブック

東京商工会議所が発行しており、中小企業における健康経営の普及・促進のため、健康経営の実践事例や、健康経営に取り組む企業へのインセンティブ情報などがまとめてあります。

健康経営のメリットとは

健康経営のメリットとは

健康経営ハンドブック2018は、冒頭で健康経営のメリットについて記載しています。健康経営については、「健康管理は個人の問題」でありその経費は「コスト」であるという従来の考え方を修正し、かかるコストは将来の収益性向上に向けた前向きな投資であると捉え実践することと説明しています。これを実践することにより慢性疲労、うつ病などの予防や、生産性向上、社会的評価の獲得といったメリットがあることも挙げています。

働く人の能力を引き出せる会社に!

同ハンドブックは、働く「人」の能力を引き出せる会社になり、業績と企業価値を向上させようと喚起しています。働く人の能力を引き出せる会社は、次のようであると述べています。
「従業員を大切にし、長く働ける、働きたいと思う会社」
「従業員の意欲が高く、いきいきと働ける会社」
このような会社になるためには、下記のようなノーコストで実践できる取り組み「まずできること」10例の実践が大事であるとしています。

まずはできることから

同ハンドブックには、以下の10項目が「まずはできること」として推奨されています。

  1. 健保組合等へ40歳以上の従業員のデータ提供
  2. 階段使用・社内でストレッチ
  3. 社員食堂・弁当で栄養バランスを取る
  4. ノー残業デー・有給取得促進
  5. 分煙環境整備や禁煙プログラムの導入
  6. 定期検診や再検査の受診勧奨
  7. 保険師・管理栄養士から生活習慣改善指導
  8. 睡眠とアルコールの知識習得
  9. ストレス・メンタルヘルスに対する正しい理解
  10. 感染症対策(インフルエンザ予防接種の費用負担など)

人材確保、リスクマネジメントにも有効

同パンフレットは、健康経営がもたらす他のメリットについても言及しています。

人材確保

健康経営は「人に関する経営課題」を解決する効果的な一手であるとしており、その理由として生産性向上、社会的評価の獲得、企業イメージアップにつながる点が挙げられています。

リスクマネジメント

健康経営ドットコムによると、「プレゼンティーティズム」とは「出勤はしているが健康上の問題で労働に支障をきたし最善の業務ができなくなる状態」で、原因としては慢性疲労、うつ病、腰痛、頭痛、花粉症などがあります。これらを早期から予防することは、健全な会社経営という評価につながります。

IoT活用事例

IoT活用事例

健康経営の実践には、データの取得や活用といった観点からもIoTの活用が有効です。また、取得したデータを端末でチェックできるような環境整備が、健康経営のメリットを最大限に享受していくためには必要だといえます。下記では、我々の生活になじみのある企業である医療機器製造の企業であるテルモや、健康経営の先進企業である花王での実践事例から参考となるポイントを紹介していきます。

活動量計で運動量を「見える化」:テルモ

日経XTECH記事によると、テルモは「そもそも社員が健康でないと恥ずかしいし、テルモが成長するには社員が健康でないといけない」と2014年度から本格的に健康経営を実施しました。主軸は以下の通りです。

  1. 喫煙率とメタボリックシンドローム対象者の減少
  2. がんの早期発見・治療・職場復帰の促進
  3. 「ウィメンズヘルス」と呼ばれる女性特有の健康への課題に対する配慮
  4. 社員の自発的な健康増進の取り組みの奨励

このうち1と4で、活動量計で各社員の歩数と運動強度を「見える化」するなどITを活用しています。

pontaポイントで95%の取り組み率に:ローソン

日経XTECH記事によると、ローソンは『マチの健康ステーション』とも謳っているのに社員が不健康でどうする』と、健康経営のプロジェクトを開始しました。働き盛りの部長2人が相次いで倒れたことも背中を押しました。新商品の試食も仕事なうえ、車が移動メインなので肥満になりやすい状況を打開するため、Webサイトで肥満・高血糖・高血圧などと診断される社員の比率や喫煙率の現状と目標を公開。ディスインセンティブも設定し、健康への取り組みを「健康白書」としてまとめました。pontaポイント1万円の景品で、取り組み率95%を達成しました。

健康経営の先進モデル企業:花王

健康経営銘柄に4年連続で選定されているのは、花王や、一例目に挙げたテルモなど6社です。花王の健康づくりの取り組みは古く、2000年から全社的に開始されました。健康診断標準化に始まり、見える化を中心としながら現在のデータの活用実践に至りました。「花王グループ健康宣言」には、5つの取り組みが明文化されています。

  1. 生活習慣病
  2. メンタルヘルス
  3. 禁煙
  4. がん
  5. 女性の健康

この5項目は健康経営の先進モデルとなっており、多くの企業で取り入れられています。

まとめ

ローソンの事例では景品として社員にpontaポイント1万円が支給されましたが、仮に7000人の社員全員が1万Pontaポイントを獲得すれば、単純計算で7000万円かかることになりました。しかし「そのくらい稼いでくれればいい」とローソンは考え、ヘルスケアポイントを機に社員が健康的に活躍できれば、十分に元が取れると考えました。
健康経営は、会社の財産である従業員の健康的な将来性を担保し、社会的からの評価も獲得できる取り組みであることが分かりました。