基幹システムクラウド化の業務改善におけるメリットと成功事例を紹介

システム開発

基幹システムをクラウド化するメリットについて、考えたことはありますか?
「AWS/Amazon Web Services」や「Azure/Microsoft Azure」の名前も、パブリッククラウドの代表格として広く知れ渡るようになりました。
サーバーなどを会社に設置して運用することを「オンプレミス」といいます。「クラウド化」とは、自社に据え置いていたサーバーが担っていた内容を「クラウド」というコンピューター資源に移行させ、メンテナンスなどもお任せすることを意味します。

基幹システムのクラウド化が進む背景

現在のシステムでも事足りているなら「クラウド化って何が良いの?」と思う人も多いはずです。しかし「いずれは我が社もクラウド化しよう」と思っているなら、システムの入れ替え時はその良いきっかけではないでしょうか。ある調査会社の調べでは「2020年度にはクラウドがオンプレミスを抜く」という予測もされているほどです。

オンプレミスとは

プレミス(premise)は「構内」「店内」の意味。オンプレミスは、サーバーやソフトウェアなどの情報システムを、使用者が管理している施設の構内に機器を設置して運用することを指す。「オンプレ」と略されることもあるほか、「自社運用」とも呼ばれる。大塚商会

オンプレミスの課題が表面化

クラウド化のニーズが高まっている背景には、現在「オンプレミスの課題」が表面化している問題があります。

  • ネットワーク機器やハードディスクの頻繁な交換で、運用コストがばかにならない
  • システム障害対応のために保守要員を確保する人件費やハードな復旧作業が負担
  • サーバーを社内に置き続けることでセキュリティ対策が必要になる
  • 海外展開のときは、ローカライズするエンジニアを採用する必要がある

サーバーや保守/運用のコストがかさむ

サーバー障害への対応と復旧のため、保守業務の人員は常に確保しなくてはいけません。”障害”は24時間発生する可能性があるため、彼らは夜間でも呼び出されれば駆け付けます。にも関わらず、景気が悪くなると真っ先に削減されるコストのひとつにITコストがあり、不景気になると大企業でもごくわずかな保守人員しか採用せず障害対応をおこなうこともあります。こうなると、オンプレミスでシステムを維持すること自体が難しい状況になります。

BCP(事業継続計画)対策の一環

BCP(Business Continuity Plan)とは、事業継続計画のことです。地震や水害が多い日本では、BCP対策はどの企業においても重要課題です。しかしクラウドであれば、万全のデータ保全に努めているため災害時も安心です。
またバックアップですが、毎日おこなうことを考えると、多くの時間を取られていることになります。この作業に充てる時間も、クラウドであれば自動的にバックアップされるため、その分のリソースが確保できます。

業務改善も果たすクラウド化のメリットとは

業務改善も果たすクラウド化のメリットとは

これまでオンプレミスの課題を挙げて参りましたが、その中にはネットワーク機器などの購入コストや保守業務の人件費発生などが含まれていました。クラウド化すれば、これらの経費のコストカットも実現すると同時に、オンプレミスよりも簡単にさまざまな機能を実装することが可能です。
セキュリティや運用をクラウドに任せてしまうことも可能です。クラウドでは専門家が運用にあたるため、あたかも外注している感じです。

管理・運用コストの軽減

クラウドを利用すれば、これまで毎日おこなっていたシステム運用の労力やコストが低減できます。クラウドの場合、システム基盤部分の運用はITベンダーがおこなうからです。システムの基盤部分で障害が発生した場合もクラウドに任せることができ、対応が不要となるため保守の人件費が軽減できます。
サーバーが必要ないため、サーバー機器の購入コストも不要になり、定期的なハードウェアの交換やメンテナンスも不要なので保守/運用についても大幅なコスト削減が期待できます。

ネットワーク化して拠点を複数に

クラウドなら、利用ライセンスを追加しさえすれば、離れた拠点のメンバーと一緒に業務システムを利用することができます。クラウドにすれば手軽に拠点を増やしてネットワーク化できるため、オフショアで海外に複数の拠点を設けたい場合などに最適だといえます。これまでは、メール送信を相互におこないデータを共有していたと思われますが、同じシステムを複数の拠点でも同時に使用できるようになるため、飛躍的に業務が効率化されます。

API連携が可能に

クラウドの基幹システムでは、公開された「API」の機能連携が簡単におこなえます。例えば、クラウド会計ソフトfreeeの「freeeオープンプラットフォーム」やピー・シー・エーの「PCAクラウド Web-API」などが連携できます。つまり、会計管理システムや人事管理システムなどに複数の会社のシステムを用いることができます。これをカスタマイズするとなると大変ですが、クラウドでなら簡単にシステム構築できるのです。

成功事例

成功事例

これまで申し上げた通り、クラウドサービスを利用すればネットワーク機器などの初期投資や運用投資を削減できます。総務省の「平成30年情報通信白書」はクラウド化のメリットとして、これまで情報システムに投資が難しかった中小企業、スタートアップにおいても情報システム導入が進むであろう点を挙げています。
クラウド導入には課題も存在していました。日本企業が長く利用してきた膨大なレガシーシステムのクラウド移行もその一つでしたが、見事にクリアし、クラウド化の恩恵に与った企業の成功事例もありますので紹介します。

レガシーシステムをクラウド化:旭硝子

AGC(旭硝子)は、2014年からSAP ERPなど140以上のシステムの基盤をAWSに順次移行させ、2018年11月に完了させました。このクラウドジャーニーは5年に及びましたが、クラウド化決断の経緯には、BCPの強化策で検討したデータセンター増設が数十億円規模のコストと予想されたことで、事実上断念した事情がありました。スモールスタートから、2016年の1月に最初のSAPシステムを移行させ、5月には売り上げの1/3を占めるビル/産業ガラス部門のSAPシステムの移行を実施するに至り、ほぼ問題が発生せずに完了しました。

「SAP on AWS」常識を破った結果:ケンコーコム

ケンコーコム株式会社は、AWSのクラウド上にSAP ERPを導入し、2012年8月より本格稼働させたと発表しました。AWSのクラウド上にSAP ERPを本格導入したのは、国内初の事例になります。ケンコーコムがクラウドプラットフォームを選択したのは、リスク分散・BCPだけでなく同社の迅速なビジネススピードに対応するからで、導入していた基幹システム・SAP ERPのプラットフォームとして、AWSのクラウドを選定しました。
ケンコーコムは東日本大震災を機に、サーバーシステムをオンプレミスからクラウド対応へ移行し、2011年内にAWSへの移行を完了しました。

わずか一日でサーバー構築が可能:株式会社熊谷組

熊谷組は、オンプレミスで運用していた基幹システムのクラウド化をおこないましたが、採用したクラウドは、ソフトバンクの「ホワイトクラウド ASPIRE」でした。わずか一日でサーバー構築が可能なため、業務を止めないでクラウド移行が実行できるのも選定の決め手でした。また、TOC(ITコストの総称)削減の観点からもソフトバンクを選んだ同社は、現在基幹系システムを含めサーバー約80台分のシステムを、ASPIRE上で運用しています。

まとめ

業務改善視点で見たクラウド化のメリットを挙げてみると、まず物理的にサーバー不要となるうえ、コスト面でのメリットも大きい点があります。
加えてネットワーク化の実現やAPI連携が簡単におこなえるため、業務効率化はもちろん、今後の業務の拡大にも大きく貢献してくれると思われます。機器の保守・更新作業が不要になったことで、熊谷組は情報システム部門の負荷を20%ほど軽減できたといいます。サーバー調達やバックアップの負荷からも解放されるメリットは、やはり大きいといえるでしょう。