サービス残業の影響って?違法性の高い行為に潜む大きな潜在的リスク
従来の日本社会ではサービス残業が当たり前であり、それをもって会社への貢献と見なしている節がありました。しかし、現代においてサービス残業を行っている会社は、潜在的に大きなリスクを抱えていると言っても過言ではありません。
この記事では、サービス残業を容認することによる会社への影響について解説します。合わせて残業を抑制するための方法を事例つきでご紹介します。
サービス残業による会社への影響
従業員にサービス残業を行わせると、会社にはどのような影響があるのでしょうか。まずはサービス残業による会社への影響について解説します。
従業員の疲弊による業務効率のダウン
第一に、サービス残業によって従業員が疲弊してしまい、業務効率がダウンしてしまうことが考えられます。現在は一昔前に比べると全体的に業務の難易度が上がり、会社によっては通常業務だけでも負荷が高いケースもあるでしょう。
その上で残業、しかも給与の出ないサービス残業を行うとなると、その影響は計り知れません。中にはサービス残業をいとわないようなモチベーションの高い社員もいるかもしれませんが、全員が全員そうであるとは限りません。
一時的にモチベーションが高まるようなことはあるかもしれませんが、長年持続させるのは難しいところでしょう。短期的戦略も大事ですが、それと同じかそれ以上に長期戦略を重視しなければならないのが会社経営というものです。
訴えられるかも?サービス残業は違法性が高い
そもそも、サービス残業というのは違法性の高い行為です。労働法に明確に残業に対する規定がある以上、それに則って管理しなければなりません。
詳しく解説すると、本来残業というのはあってはいけない行為と見なされています。しかし、労使間で36協定を結ぶことで例外的に残業が認められることになります。
とはいえ、無制限に許容されるわけではなく、原則的には1ヶ月で45時間、1年で360時間と定められています(例外あり)。しかも、従業員に残業をさせた場合は通常より高い賃金を支払わないといけないとも規定されています。
サービス残業は、これらの規定を逸している以上、違法行為と言わざるを得ないでしょう。そうである以上は最悪訴えられ、逮捕される可能性もあります。
自社が「ブラック企業」と評価されてしまう
昨今、世間の目も厳しくなってきており、違法性の高い企業はたちまち「ブラック企業」と評されてしまうリスクがあります。ブラック企業と見なされたからといって直ちに不利益が生じるとは限りませんが、徐々に取引先や顧客から敬遠されるなどの悪影響があるかもしれません。
現在は市場も成熟したせいか、経営者や会社役員にはそれ相応の振る舞いが求められるようになりました。市場がサービスに熱狂している時は多少不義理なことをしても需要がなくなるようなことはありませんでしたが、需要より供給が上回っている社会ではそうはいきません。
消費者も、永続的に社会を良い方向に導こうとしている会社を応援するのではないでしょうか。
サービス残業によるリスクを防ぐには?
では、次にサービス残業によるリスクを防ぐための方法について考えてみたいと思います。サービス残業を防ぐためには、下記のような取り組みが有効です。
適切な残業代を支払う
1つ目は、従業員に適切な残業代を支払うことです。サービス残業は正規の賃金が支払われないから問題になるわけであり、正規の賃金を支払った時点で「サービス残業」ではなく通常の「残業」として扱われます。
賃金を支払ったからといって無限に働かせることはできませんが、金銭で報いることは従業員のモチベーションをダイレクトに上げる方法の一つです。もちろん賃金だけで全てが丸く収まるわけではありませんが、相応のリターンを支払うというのは1つの誠意の表し方になるでしょう。
もちろん、それでも上限があることには注意が必要です。
残業そのものを抑制する
残業そのものを抑制することができれば、サービス残業は発生しません。それに加えて従業員に残業代を支払う必要もなくなるため、コストカットにも繋がるでしょう。
そのために大切なのは、業務の無駄を徹底的に省くことです。会社によってワークフローはさまざまに異なりますが、その中に無駄な業務はないか、より効率の高い方法に置き換えられないかなどを随時考えることが大切です。
また、その結果として残業を減らすことができれば、世間から「ホワイト企業」という評価を得られるかもしれません。前述の通り「ブラック企業」として見られることによる悪影響は大きいですが、その分「ホワイト企業」と評価されることによるメリットは無視できないものがあります。
従業員が働きやすい環境を構築する
残業を抑制するためには、従業員が働きやすい環境を構築することが大切です。働きづらい環境が構築されていると一つ一つの業務に時間がかかるだけでなく、従業員のモチベーション低下による効率の悪さも加算されていきます。
たとえば、いつまでも古いパソコンやソフトを使っているなどの例が挙げられるでしょう。テクノロジーは年々進化しており、最新の機器やソフトウェアを使えば業務を簡単に終わらせることができます。
しかし、会社がその予算を組まずにいつまでも従業員に負担を強いていると、業務効率が落ち残業が発生しやすくなります。そればかりでなく、労使間の信頼関係も揺らいでしまうのではないでしょうか。
ITシステムを導入して残業対策を行った事例
では、最後にITシステムを導入して残業対策を行った事例をご紹介します。残業抑制のための業務効率化にITシステムは欠かせない以上、活用方法をしっかりと学んでおきましょう。
チャットツールを活用し、コミュニケーションロスを削減:株式会社第一印刷所
株式会社第一印刷所は、印刷や編集、ホームページ制作といった業務を手がけている老舗企業です。従業員の多さにより社内でコミュニケーションロスが生じており、それを解消するためにビジネスチャットツールを導入しました。
合わせてスマホなどのデバイスを活用することで「伝言ゲーム」を排し、必要に応じて担当者と直接連絡を取れるようになりました。
情報共有ツールを活用し、業務効率化を達成:株式会社アールキューブ
株式会社アールキューブは、会費制の結婚式である「会費婚」を展開している企業です。外部のプランナーと協働して行うビジネススタイルなのですが、業務の継続性の薄さから、同じことを何度も説明しなければならないというロスが発生していました。
そこで情報共有ツールやビジネスチャットツールを導入したところ、確認のための時間を大幅に削減することができました。
まとめ
サービス残業は本来あってはならないことです。従業員を残業させる場合は労働法に規定されている通りに行わねばならず、上限規制や割増賃金の支払いなど、しっかりとルールを守らなければなりません。
それを怠っていると、従業員が疲弊してしまったり、世間から「ブラック企業」と認定されるなど、会社にとって好ましくない影響があるでしょう。合わせて、最悪の場合は被害を被った従業員から訴えられたり、逮捕されてしまう可能性も考えられます。
2019年から施行される働き方改革関連法により、その流れはさらに強化されることになります。業務の無駄をしっかりと見直し、残業の抑制に努めましょう。