働き方改革に潜む問題点とは?メリット・デメリットと有効な解決策

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働き方改革を進める際、さまざまな問題が発生するケースがあります。この記事では、働き方改革の問題点やその解決法、また働き方改革のメリット・デメリットをそれぞれ従業員側・企業側からの視点で解説します。

働き方改革の問題点

働き方改革の問題点

働き方改革には、一般的に見て下記のような問題点が考えられます。それぞれについて見ていきましょう。

労働時間と業務量との兼ね合い

働き方改革の有名な施策として挙げられるのは、「残業時間の上限規制」でしょう。従来のスタイルでは残業時間の上限は一応設けられていましたが、取り締まられるところは全体からみて少なく、有名無実と化していた面も大きかったのではないでしょうか。

働き方改革によりその辺りが明確に規制されたのは、労働者側から見ると喜ばしいことかもしれません。しかし、だからといって必ずしも業務量が削減されるわけではないため、業務量と労働時間のバランスに悩む会社も多々存在します。

業務量を削減すると事業に痛手が生じる、しかし業務量をキープすると残業時間を削減することができない。このようなジレンマが、働き方改革における問題として提起されています。

高プロ制度の是非

働き方改革には高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)と呼ばれる施策が存在します。高プロ制度とは、高度な知見を持ち業務を行う一定水準以上の年収を得る人材に対しては労働時間の規制を撤廃するという仕組みです。

高プロ制度に関しては、「多くの年収を貰っているのであれば問題ないのでは?」と考える人も多いかもしれません。もちろんそういう向きもありますが、一口に「高年収」といってもその実態はさまざまであり、せっかく労働時間の上限を設けたのにその本質が見過ごされてしまうのではないかという見方もあります。

その辺りは個々で思うところがあるでしょうが、実際問題として高プロ制度を利用している企業はそれほど多くはないようです。企業側としても、積極的に活用できない理由があるのかもしれません。

参考:朝日新聞 高プロ、導入は約10社どまり 開始1年も利用広がらず

人件費の高騰

人件費の高騰も、働き方改革の問題点として挙げられます。働き方改革の目的の一つに「同一労働同一賃金」がありますが、これは同じ労働をしている場合は正規非正規関係なく同じ賃金を支払いましょうという施策です。

従来のワークスタイルでは、たとえ同じような仕事をしていたとしても正規と非正規の間に賃金格差が生じていたことも少なくありませんでした。それを是正し、正規や非正規といった立場ではなく、欧米のように業務そのものに重点を置いて賃金を決めましょうという動きです。

当施策に従う場合、企業によっては非正規の従業員に支払う賃金が上積みされ、人件費の高騰に繋がる可能性もあるでしょう。

働き方改革のメリットとデメリット

では、次に働き方改革のメリットおよびデメリットについて見ていきましょう。それぞれ、従業員側からの視点および企業側からの視点で解説します。

従業員側からの視点

従業員側から見たメリットとデメリットには、下記のようなものがあります。

メリット

働き方改革により残業時間の罰則つき上限が設けられたため、労働時間抑制に繋がるでしょう。特に、従来超過労働が盛んだった企業ほど是正される可能性が高く、従業員にとってはワークライフバランスの改善が見込めます。

また、有給が取りやすくなるのもメリットです。働き方改革において年5日の有給休暇の取得が義務化されるため、これまで忙しすぎて全く有給が取れなかったような職場でも有給を取ることができるようになるでしょう。

デメリット

一方、デメリットとしては、残業時間の抑制により残業代が減りトータルの収入に影響することが挙げられます。基本給の額が心もとなく残業代で生活をまかなっていた場合はダイレクトに影響を受けることになるため、その点はデメリットと言えます。

また、業務の負担が不公平になるという可能性も考えられます。残業時間の上限が設けられたということは、今まで以上に限られた時間内に業務を終わらせなければなりません。

となると、処理能力が早い人間に業務が集中することは避けられず、不公平な業務配分になってしまうケースもあるのではないでしょうか。

企業側からの視点

次に、企業側から見た働き方改革のメリットとデメリットです。

メリット

企業側から見た働き方改革のメリットは、何といっても生産性の向上です。残業時間の上限が設けられたことにより、従来のような超過労働に頼るスタイルは通用しなくなるでしょう。

「それはデメリットでは?」と思われるかもしれませんが、業務効率化というのはある程度の制約があった方が成し遂げやすい面があります。また、働き方改革に積極的に取り組むことによるブランドの向上、採用力の強化といったメリットも挙げられます。

デメリット

一方、デメリットとしては、やはり労働時間と業務量とのバランスです。うまく効率化して時間内に業務を終わらせることができればよいのですが、それが難しい場合は業務が滞ってしまう恐れもあります。

また、その場合は従業員が業務を持ち帰って処理するケースもあり、労働時間の管理が難しくなってしまう可能性もあるでしょう。加えて、どうしようもない場合に業務量を減らしたり人件費の高騰などによる利益の減少などもデメリットとして挙げられます。

働き方改革の問題点を有効に解決するには?

働き方改革の問題点を有効に解決するには?

では、最後に働き方改革の問題点を有効に解決するためのポイントについて解説します。

助成金や補助金を活用する

働き方改革は国が推進している施策のため、自社でプロジェクトを進めるための助成金や補助金が用意されています。一例として、働き方改革推進支援助成金や業務改善助成金などが挙げられるでしょう。

助成金や補助金にはそれぞれ要件が設けられているため、それに合致しなければ受けることができません。まずはどのような補助があるかを先に調べ、それに沿って働き方改革を進めるのも一つの手です。

ワークフローを見直す

ワークフローを見直すことで業務効率を改善することができ、働き方改革の推進に繋がります。仕事というのはさまざまなタスクが絡みあって形成されており、それぞれに緊急度や重要度といった指標が存在します。

その中から緊急度も重要度も低いものをカットしたり、緊急度と重要度のどちらを優先するかといった判断を行うことで、ワークフロー全体の効率化が見込めるでしょう。ワークフロー全体が効率化されると生産性が向上し、働き方改革の趣旨に繋がってきます。

業務システムを導入し、生産性向上を図る

業務システムを導入することで生産性が向上し、働き方改革の推進に繋がります。どのようなシステムをどこに組み込むかは業務の特性によりますが、大事なのは自社と相性のよいシステムを導入することです。

システムは使われてこそ意味のあるものなので、使いにくいものや業務と合わないものを導入しても意味がありません。現場に浸透させ正しく使われることで生産性向上が見込め、働き方改革に良い影響を及ぼすことができます。

業務システムのメリット

業務システムには、下記のようなメリットがあります。

業務効率化に繋がる

業務システムを活用することで、業務効率化に繋がります。従来人の手で行っていた業務を自動化したり、システムによるサポートを得て生産性をアップするなど、効能は多岐に渡るでしょう。

業務効率化が達成されれば、今までより少ない人手で業務を完遂させることができます。特に誰がやっても結果があまり変わらないようなルーチンワークが効率化されるため、人の手をより重要な業務に割り当てやすくなるわけです。

データや情報を一元的に管理できる

業務システムを導入することで、データや情報の一元管理が可能になります。一元管理とは「(情報やデータが)ひとまとめに管理されている状態」であり、下記のようなメリットがあるでしょう。

  • いつでも正確性の高い情報を参照できる
  • リアルタイム性が高まる
  • 管理の手間を削減できる

情報を一元管理することで、誰もが確かな情報を容易に閲覧できるようになります。情報が複数の箇所に分散されているとどこに何が記載されているかが分かりづらくなりますが、一元管理されていれば特定の場所を見るだけですむからです。

また、一元管理されている情報やデータは大元に追加・修正を加えることで、同じものが全てのシステムに反映されます。それにより管理の手間を削減できるなど、さまざまなメリットが生じます。

属人性の排除に繋がる

業務システムを導入・活用すれば、属人性の排除に繋がります。業務の属人性が高まると「特定の人員がいないと業務が回らない状態」になり、業務遂行に支障をきたしてしまいます。

なぜ業務の属人性が高まってしまうのでしょうか。さまざまな理由がありますが、大きなものとして「知識やノウハウが個人に集約されてしまうから」というものが挙げられます。

情報共有や集約をうまく行わないと、業務の知識やノウハウが担当者個人に集約されることになるでしょう。システムを活用することで、それらを個人ではなく組織に集約させる体制を築くことができます。

業務システムを働き方改革に繋げるポイント

業務システムを働き方改革に繋げるポイント

続いて、業務システムを働き方改革に繋げるポイントをいくつかご紹介します。働き方改革とシステムには密接な関係があるため、適切な活用が大事です。

自社に合ったシステムを導入する

自社に合ったシステムを導入することで、働き方改革の推進に繋がるでしょう。システムを導入する主目的は「自社に生じている課題を解決するため」なので、それに沿ったものを選ぶのがセオリーです。

では、どのように自社に合ったシステムを選べばよいのでしょうか。さまざまな観点がありますが、下記のような方法が有効です。

  • 課題(ニーズ)を明確にする
  • システムについて学ぶ
  • プロに相談する

自社にどのような課題が発生しているのか、それはどのように解決できるのかを明確にしましょう。ニーズを明確にしシステムについてある程度学ぶことで、適切なシステムを見定めることができます。

もし自社のみで判断できない場合は、プロの知見を借りるのも手です。プロに相談することで、自社に合ったシステムをより見極めやすくなるでしょう。

しっかりと効果測定を行う

効果測定を行うことで、システムの導入が適切だったかどうかを判断できます。逆に言うと、効果測定を行わない場合はシステム導入にかけたリソースが正しかったかどうかの判断ができません。

コストや労力をかけるのは、もちろんそれ以上のリターンを得るためです。どのような選択や投資が有効かを知るためにも、しっかりと効果測定を行いましょう。

まとめ

働き方改革を進める上でさまざまな問題点も出てきますが、だからといって頓挫させるわけにはいきません。自社の業務特性を鑑み、課題を解決に導きましょう。