離職の原因と企業に及ぼす影響とは?離職率を改善するシステム活用事例
離職者を生むと会社は様々な影響を受けますが、それはマイナス的な影響である場合がほとんどです。時間的、金銭的なロスを被るのみならず、社内ムードが低下するなどの影響も受けてしまいます。
離職者が生まれる主な原因とは何でしょうか。そして、離職者を生むことで企業が受ける影響には、どんなものがあるのでしょうか。
この記事ではデータから離職の原因を紹介しながら、離職が企業に及ぼす影響を具体的に説明します。そして、離職率を低下させた成功事例を具体的に紹介していきます。
離職の主な原因とは
出典:日本公庫総研レポート
上図は「現勤務先で働き続けたくない理由」を集計して図表化したもので、日本公庫総研レポートがおこなった「人材の定着を促す中小企業の取り組み」に対する調査から引用しました。同調査では、潜在的な離職要因を掘り起こすため、現在勤務する企業で働き続けたくない理由を調査したところ、圧倒的な首位を占めているのは「収入・昇給に対する不満」で、2位の倍以上の回答数でした。現勤務先で働き続けたくない理由のトップ3は「賃金」「労働条件」「人事評価」に対する不満だと判明しました。
収入・昇給に対する不満
出典:転職会議
対して、上図は実際に離職した理由を「年収別に」調査し、図表化したものです。年収400~500万円の平均的年収層と、平均500万以上の高年収層の離職理由の違いを表しています。
【離職理由の1位】
平均年収層 | 人間関係 待遇(給与、福利厚生) |
52% 37% |
高年収層 | 人間関係 待遇(給与、福利厚生) |
34% |
1位はどちらも人間関係で、平均年収層においては52%を占め圧倒的です。平均年収層の2位、高年収層の同率1・2位は「待遇(給与、福利厚生)」で、賃金に対する不満はやはり高い割合を占めています。l
労働条件・労働時間・休暇に対する不満
「残業が常態化している」
「人手不足で現場における一人一人の作業が多すぎてしんどい」
「有給が取れない」
日本の労働環境におけるこのような問題を解決に導くため、政府は働き方改革を主導しています。劣悪な労働環境は離職者を生み、また人手不足が進むという負のスパイラルを生み出します。長時間労働の常態化はなかなか改善されないため、2019年4月に施行された働き方改革関連法案では、従来は努力義務であった項目を罰則付き法律化に格上げしたものもあります。
適正な人事評価がされなかった
人事評価が正当でないと感じて離職にいたるケースもあります。人事評価が客観的でなく評価する側の主観によるものだと感じてしまうと、従業員の不満につながり離職者が出てしまうことがあるのです。
この問題の背景には、まず「人事評価の難しさ」があります。営業などの部署であれば客観的な数字で定量評価をおこなえますが、総務などの部署の働きぶりを数字で表すことは非常に難しいのです。
また、人事評価のフィードバックも難しいのですが、それによって従業員に不満が生じる場合もあります。
離職によって企業が受ける影響とは
会社は組織で成り立っているため、一人の離職者を生むことは思いがけない波乱を生じさせます。離職者を生むデメリットは、大企業より中小企業の方が大きくなります。離職者が専門職に従事していた場合も同様に、デメリットが大きいといわれています。そのような特殊性のある人材を新たに採用するまでの求人募集、採用活動のコストがより増大するからです。
離職者が出ると時間的・金銭的コストがかかるだけでなく、社内のモラル的にもダメージを受けます。
サービスと生産性の低下
離職による人員の減少で、まず現場の生産性が低下します。一人当たりの仕事量が増えるとチェック機能が低下するため仕事の「質」が低下し、提供するサービスの質の低下も招きます。また、日々のノルマ達成に精いっぱいで教育的な側面がおろそかになることもあります。会社の存続と発展にとって重要な技術の継承やノウハウの蓄積が、余裕がないことで後回しになってしまうのです。
また「機会損失」も招きます。人員不足により、本来得られるはずの売り上げ・利益を取りこぼしてしまう可能性も生じるのです。
採用コスト、教育コスト増
まず「退職金」と、穴埋めまでに本来上げられた売上など「機会損失」によるロスが発生します。次に、新たな従業員の「採用コスト」が生じます。求人から採用まで、新規採用者の配置についても同様です。
更に、新従業員の教育コストが発生します。オリエンテーションやOJTの実施、加えて指導者の人件費がかかります。
離職者の穴埋めにはこのように多大な時間とコストを要するため、従業員の定着率向上の必要性は高いのです。
士気の低下
離職者が出ると全体の士気の低下につながります。時間的、金銭的なロスも大きいですが、職場の士気の低下はより根本的な問題であるため様々な配慮が必要です。
なぜなら、残された人員が離職者の穴埋めを担当するため、その負担によるストレスも蓄積しますし、人間関係への影響も生じるからです。従業員の間で更なる不満が募ると、新たな退職者を生んでしまうという「負の連鎖」が起きることもあります。
システム活用事例を交えた離職対策とは
離職者を生む原因の最たるものは「収入・昇給」「労働条件・労働時間・休暇」「人事評価」に対しての不安であることを解説しました。離職率が高い会社が免れないデメリットもまとめてまいりました。
離職者を減少させ社員定着率を上げるための取り組みは、従業員目線からおこなわれるべきですし、継続性が無くては意味がありません。以下では、離職率の低下に成功した事例をご紹介します。人事評価システムを活用した成功事例も含まれています。
入社3年以内の職率を50%から数%に:カネテツデリカフーズ
カネテツデリカフーズは、新人の離職率がなんと50%を超えるほどだった状態から、わずか数%に低下させました。同社は、離職率の高い原因を追求し「制度を変え、風土を変えた」ことで改革に成功しました。
そもそも離職率の高い原因は「仕事は見て覚えろ」という風土にあり、これがスキルやノウハウの共有不足、コミュニケーション不足を起こしていたのです。そこでマンツーマン制度を導入、月の目標設定や振り返りも共におこないました。結果的に組織のコミュニケーションが活発化し、劇的な離職率の低下を実現したのです。
評価制度の”見える化”で離職率も低下:コプロ・ホールディングス
コプロ・ホールディングスは、人事評価サービス(あしたのチーム)を導入し、人事評価にコンピテンシー目標(行動目標)を取り入れました。つまり「人間力」の評価を導入し、評価基準を見える化したのですが、これが社員のモチベーションを向上させました。営業職の成果目標(MBO)、社員の定着率も同様にアップ。新卒採用においても好影響を表し、新卒社員は2年連続倍化を果たしました。
人事評価制度の導入後、離職率の低下と共に同社の業績も向しました。
社員の集団離職を機に人事評価制度導入:株式会社アクト
埼玉と西東京にリサイクルショップを展開する株式会社アクトは、2009年、1店舗ほぼ全員の10人が集団退職をするという異常事態を経験しました。当時の人事評価に明確な根拠がなかったことを反省した同社は、人材育成型の人事評価制度を導入します。
売上高倍増を目指す「5カ年事業計画」と共に「人材育成計画」を策定、「アクションプラン」と「評価制度」のPDCAを回した人事評価の仕組み作りに成功しました。その結果、社員のモチベーションの高まりは目に見えるほどになりました。売上高も目標を上回る結果となりました。
まとめ
2019年4月、働き方改革関連法案が施行されたため、「労働条件・労働時間・休暇に対する不満」は法の規定をもって解決されていくことでしょう。今回の改革で、従来は努力義務であったのに罰則・罰金をともなう法律に格上げされたものも多いため、企業は残業回避せざるを得ない状況になったからです。
この記事で紹介した成功事例には、人事評価の見直しが功を奏じたものが多かったことも印象的です。簡単な取り組みではありませんが、人材の教育制度の見直しや「人間力」評価の取り入れが、社員のモチベーションを向上させていきました。人事評価サービスの導入も大いに役立ち効果を発揮しました。