ITを活用した「見える化」で実現するコスト削減を成功させる考え方とその進め方
コストを削減するには、どのような方法を取れば良いのでしょうか。コストは「かかるもの」ではなく「かけるもの」だという考え方もあり、利益を出したいがために必要な経費までカットするのは間違っています。今や、テクノロジーの力を借りてコスト削減を図る方法もあります。
この記事では、コストの種類やそれぞれにおけるコスト削減の進め方、新しいコストカットの方法などを紹介します。
削減可能なコストにはどんなものがあるか(製造業の場合)
製造業の場合、製造原価は「経費」「労務費」「材料費」で構成されています。
これらをコストダウンすれば、利益は上がる計算になります。しかし乱暴なコストカットをすると、労働者のモチベーションが下がって現場の雰囲気が悪化したり、製品の品質を下げたりすることがあります。そうするとより収益が下がり、経営状況は悪化します。ネガティブな結果を招かず収益をアップできるコストカットは、どうすればできるのでしょうか。
「経費」「労務費」「材料費」それぞれで考えてみましょう。
経費
「経費」は、製品を作るために必要な水道光熱費や家賃などの費用を指します。これらの費用の適正価格は、これまで良く知られていませんでした。
しかし今は、電気・ガスの自由化に伴い、家庭でもコンサルティングを受けて水道光熱費を見直す時代です。会社の経費専門コンサルタントといった人達もいますので、覚えておきましょう。
LED照明を採用したり、「自家水道システム」「節水弁の取り付け」といった節水方法を採用するのも、経費削減に有効です。
労務費
「労務費」は「製品を作るために加工するコスト」のことで、作業者のコスト(人件費)も含まれます。人件費は、作業の工数管理と深く関係してきます。
「労務費」のコストカットをしたい時に、単に作業者の給料をカットしようと考えることはできません。それでは離職者を出して、現場に穴が開けてしまうかもしれません。
労務費を削減するには、生産性を向上させることを考えましょう。
生産性向上には、仕事量、業務フローの見直しや外注化、また、システム化やシステムの導入も有効です。
材料費
材料費とは、文字通り製品を作るための材料の費用です。材料費のコストダウンを図るためには「仕入れ値を下げる」「不要な在庫を抱えない」の2つを心掛けましょう。
仕入れ値を下げるためには、次のアプローチを試みましょう。
- 仕入れ先を絞り、仕入れ量を増やす(1社のみはNG)
- 一回の仕入れ量を増やし、単価を下げる
「不要な在庫を抱えない」ためには、下記を試みましょう。
- 在庫管理の精度を高める
在庫管理がずさんだといつまでも材料費は削減できません。
コスト削減をどのように進めていくか
コスト構成を洗い出す
経費のムダは、担当部署しか知り得ない状態になっていることが多いのではないでしょうか。しかも、数字で管理されており、一見しただけでは部外者にはバランスも分かりません。
そこでおすすめするのが、可能なものは図表で経費を「見える化」し、関係者すべてにシェアすることです。
円グラフなどにすれば視覚的に認識しやすくなり、「重点管理項目」が把握しやすくなります。重点管理項目とは、最近急増したり、常に突出して高いコストのことで、コスト削減のターゲットになります。
削減目標設定と実行
コストダウンを実行するとき、「コストコントロール」「コストリダクション」の2つのアプローチがとられます。
それぞれの違いについて説明します。
コストコントロール
コストコントロールとは、現行の業務でかかってるコストに対し、材料、人員、設備、エネルギーのムダがないか検証していく作業です。
また、下記の点もチェックポイントになります。
- 計画の未・既、その計画の適正性
- 計画通達の未・既、その通達方法の適正性
- 実績計算の未・既、その計算方法の適正性
- 標準と実績の差の把握の未・既、その差のつかみ方の適正性
- 差を埋める行動の未・既、その行動の適正性
計画どおりに業務が進まないと、実際のコストが変わってきます。両者の差をなくすことが、コストコントロールの目標になります。
コストリダクション
コストリダクションは、「標準コストの引き下げ」をおこないます。現在の製造フローや販売方法、あるいは管理体制などにこだわらず、必要なら変えてもよいという前提でおこなう改善方法です。
より安価でスピーディーな方法やシステムがないかと探しながら、包括的に改善するので、コストリダクションの目標設定は、現行よりさらに低い目標が設定されます。現行の製造方法・システムが、必ずしも最適ではないとの考えに基づいています。
ITを活用した「コストの見える化」を
「見える化」という言葉は、昔から製造の現場で使われてきました。例えば看板に注意事項を書いて作業員全員に回すことも、重要事項の「見える化」の一例です。改めて、コトバンクで「見える化」の意味を調べてみました。
情報や物事の全体が、誰にでも分かるようにすること。
特に、企業活動で、業務の流れを映像・グラフ・図表・数値などによって誰にでも分かるように表すこと。問題を共有し、改善するのに役立つとされる。可視化。
コトバンク
人気の家計簿家計簿アプリも「見える化」(マネーフォワードME)
見える化という言葉が広く世間に浸透したのは、家計簿アプリマネーフォワードMEの登場からではないでしょうか。マネーフォワードMEのテレビCMでは、モデルの藤田二コルさんが「私のお金、全部見えちゃてます。丸見え」「洋服に幾らかけちゃってんだろう」とスマホアプリのグラフを見ながら、自らの浪費を嘆く姿が話題になりました。
このように「可視化」にはものすごい発信力があります。会社の経営においても同様です。
部署ごとにコストを見える化
部署ごとに、ムダな経費を「見える化」してみるのはいかがでしょうか。例えば、各部署(開発・物流・製造・営業など)において、突出してムダな経費が多いのはどこなのか、一目で把握できます。
部署によっては、なかなかコスト削減が難しいこともあるでしょう。しかし、グラフでコストの「見える化」をおこなえば、月ごとにどれくらい経費のムダが削減できているかを管理できます。見える化によって課題が露呈されると、社員が主体的に問題点の発見をおこなうことができるでしょう。
業務ごとにコストを見える化
次は、業務別・作業別のコストを見える化しましょう。コストを業務別に「見える化」すれば、その業務の生産性が分かります。生産性向上にもつながりますので、是非おこなってみてください。
業務・作業別の見える化をおこなうと、あらゆるムダが浮き彫りになってきます。例えば接待や会議のコストも、よく削減の対象になるところではないでしょうか。経費の実態が分かれば、削減目標が設定できます。掲げた目標と、削減計画を実行した結果のギャップもまた「見える化」します。
このようにすれば、目標遂行までをしっかり追い続けることが可能でしょう。
まとめ
製造業を例にして、経費の種類や新しいコスト削減法について紹介させていただきました。日々の業務が大変忙しい場合は通常業務の遂行が精いっぱいで、コストなどのデータを取って「見える化」すること自体がハードルが高いかもしれません。
しかし、可視化することの効用はとても大きいのです。あなたの会社の生産性を知る上で、避けて通れないフェーズでもあります。データを取って現状を「見える化」した先には、必ず発展があることも申し上げておきます。