物流産業の課題を効率化する指標とメリット

業務効率化

様々な業界で労働力不足が大きな課題になっています。飲食、レジャー、コンビニ、IT。

そして、これらの業界以外にも、労働力不足で大変な状況になっているのが物流産業です。

ドライバーの不足は進むばかり。配送の速度やサービスは複雑になるばかり。一般家庭への小口輸送が激増したことで、トラックに少ししか積まずに配達せざるを得ないことも増えています。

そこで今回は、物流産業の課題点と効率化を図る為に必要な指標について紹介していきます。

物流業界に待ち受ける課題とは

従来の電話やカタログからの通信販売だけではなく、ECサイトからの販売が増えたことも影響して、物流産業には3つの課題が待ち受けています。

まずは、それぞれの課題を見ておきましょう。

ドライバーの不足

物流業界における課題で最も大きなことは、実際にモノを配送して届けるドライバーが不足していることです。

通信販売やECサイトでの販売で配達するモノは増えるばかり。反面、荷物を運ぶドライバーは高齢化と少子化のため常に不足しているのが現状です。

また、長時間・長距離の運転や、重量の重い荷物を運ぶことも多いため「キツイ」仕事というイメージ、価格競争が影響している賃金の伸び悩みという理由から積極的に若年層の人が選ぶことを躊躇している事実もあります。

キツイ仕事、賃金の低さ。この2つがもう少しだけでも解決できないと、若者が物流産業へ入ってくることは期待できません。しかし荷物は減りませんから高齢者のドライバーが無理をしてでも不足を補って働かざるを得ないのは誰の目にも確かなことです。

細かなサービスの提供

「送料無料」「本日到着可能」「急な注文でも明日にお届け」。私たちが日頃ネットでモノを購入するとき、体験しているサービスです。

利用する立場にあると、どのサービスも大変うれしいことばかりなのですが、物流産業の立場で考えるとこれらの負担は大変大きな課題になっています。

送料無料とは配送料の価格競争が行われていることです。本日到着可能、明日にお届けとは小口配送がこれまで以上に小口化していることを表しています。

さらに「時間指定」「再配達」などの行き届いたサービス提供によって、何度も運ぶことが必要となり、ドライバーの負担は増えるばかりというのが現状ではないでしょうか。

積載率の低下

消費者にとってうれしく細かで行き届いたサービスを実現するためには、配送するトラックの荷物を常にいっぱいにしてから配達に回っていては実現できません。

たとえ半分しか荷物が入っていなくても、時間指定があるのなら配達へ出発することになります。また、配達途中に次の荷物がセンターへ届いたなら、一旦戻り荷物を積み込んだ後、再度配達へ出掛ける必要があります。

物流は、出来るだけ一度にたくさん運ぶことで効率がアップするものですが、サービスの細かさとスピードを要求される現在には、効率化を進めることは難しいと言わざるを得ません。

現場が出来る効率化のポイント

現場が出来る効率化のポイント

物流産業が抱える課題を見てきました。これらの課題は、今すぐどうにかできることではありません。では、私たちは効率化を行うことは出来ないのでしょうか。

そんなことはありません。物流現場での作業を効率化することで、少しでも状況を変えることが出来ます。

荷物の保管場所を考慮する

人気の商品は頻繁に出荷されます。反対に、人気のない商品は出荷頻度は低いはずです。

もし、人気の商品が倉庫の奥に保管されているのなら、出荷のたびに奥まで取りに行かなくてはいけません。これは移動の時間の無駄を生み出しています。

頻繁に出荷する商品は、取りやすい場所に置くなど、出荷頻度や出荷条件に応じて保管する場所を見直すことで効率化につながります。

また、クール便の場合、誤発送は致命的な問題が起こりますので、間違えないように保管する場所を見直すことで、誤発送を防ぐことにもつながります。

棚と在庫の見える化

どこに何があるのか。ベテランだけがわかっているという状況や、毎回探しているという状況を変えていきましょう。

そもそも物流ではピッキングを行いますが、どこにあるのかわからないとピッキングのために探し回り、時間のロスが生まれます。これは非常に無駄なコストが掛かっていることになりますから、「どこに何があるのか」を管理することは作業の効率化につながります。

また、作業の効率化の先には、誤発送の原因をつぶすことにもなりますので、必要のない手間やクレームを防ぐという効果も期待できます。

ピッキングの無駄を省く

物流では必ず必要なピッキング。荷物が入ってきたとき、荷物が出て行くとき、必ず人がピッキング作業をしているはずです。

この作業、重要なのですがアナログで行われることが多いため、かなりのベテランでないとミスが生まれるポイントにもなります。希にミスするくらいなら信頼も下がりませんが、頻繁にミスが発生するようなら物流としての信頼も下がっていくことは間違いありません。

前の2つの効率化を行うことで、ピッキング時のミスを呼び起こす原因が減少すると、時間と労力が必要だったピッキング作業の無駄な動きやチェックも少しずつ省けるようになり、自然と効率化されていくことでしょう。

効率化を勘に頼らない管理指標とメリット

効率化を勘に頼らない管理指標とメリット

物流の管理は、これまでの経験と勘で行っているというところもあるでしょう。しかしこれからの物流は勘だけでは対処できないサービスの細分化や、急激な物流量の増加に備えなければいけません。

そのためには、勘ではなく、どうして上手く回っているのかを数字で判断することが重要です。

物流管理指標とは

物流管理指標とは「物流KPI」とも呼ばれる改善や効率化を行い判断する材料のことです。大きく分けて次の3つの視点があります。

(1)コストと生産性

ピッキングの人的生産性。保管スペース。積載率や日次単位での収支を指標として効率化を行う。

(2)品質とサービス

クレーム発生率、破損率、遅延率などを指標として効率化を行う。

(3)物流条件と配送条件

配送頻度、梱包や検品などの付帯作業などを指標として効率化を行う。

物流KPIを導入するメリット

物流管理指標(物流KPI)を導入することで次のようなメリットが考えられます。

(1)問題を見える化します

複雑なフローが特徴の物流。これら複雑なプロセスの中から、優れているポイント、そうでないポイントを見つけることができます。これまでは勘でしかなかったことが、論理的に見えると改善点を見つけることに生かせます。

(2)コミュニケーションを促進できる

立場の違う人たちが協力してこそ完成する物流。誰かの勘の話ではなくデータを共有することで、立場が違っても共通の認識が持てるようになります。

(3)評価がわかりやすい

改善を行った場合、データで結果がわかりますから、気分や好みで改善した人の評価が変わることを防げます。

(4)販促情報としても活用

データで管理するということは、事実を顧客へ提示することができるということです。トークだけで「できます!」というよりも、データと合わせた方が営業時の成約率も高くなるでしょう。

倉庫とドライバーを繋ぐシステムで業務を効率化

ある日用品メーカーの輸送業務を行う物流企業が、納品遅延が起こることで機会損失が増えているという課題を抱えていました。

納品遅延の原因の一つはピッキング方式でした。レイアウトを変更し歩行距離を短く、さらにピッキングカートを使った方式に変更することで効率化を実現。

また現場レベルでの「納品遅延の原因」を調べると

  • 天候による渋滞
  • 道路工事
  • ひとつ前の納品先での待機

自分たちではコントロールできない理由が浮かび上がってきました。
そこでリアルタイムに遅延情報を把握し、物流管理指標(物流KPI)として「遅延状況」が確認できるシステムを導入。

勘ではなく、データを元にした判断から遅延が起こりやすいルートの見直し、荷待ち時間の削減、遅延連絡をリアルタイムに行うことでクレームの減少ができるようになったということです。

このように客観的なデータを活用することで、これまで見えてこなかった原因を見つけ、最適な方法で対処し効率化を促すことができます。

まとめ

まだしばらく、物流業界には厳しい課題が待ち受けていることでしょう。しかし物流の上流から下流までの間のどこかを少しずつ効率化することは可能です。

今回取り上げました物流KPIの視点を活用して、どの部分の効率化を進めることができるのか。一度検討してみてはいかがでしょうか。