時間管理は大切。正しい時間管理法で生産性を向上させた事例も紹介
働き方改革関連法の施行により「時間外勤務時間の上限」が設定されたことで、残業時間の削減のための「時間管理術」 が注目を集めています。残業の限度時間がある回数をこえてしまうと、法律違反となり「懲役または罰金」を科される可能性が出てきたため、深刻です。
しかし「時間管理」には、残業回避のほかにもメリットがあります。特に、働き方改革が長い目で目指している「生産性の向上」に直結する、労働の質を向上させる効果もあるのです。この記事では、時間管理の大切さを、成功事例とともにご紹介します。
時間管理の大切さとは
時間管理が大切な理由をたずねたら、まず「納期を守るため」という回答が上がるでしょう。ビジネスである以上、依頼者と請負人が存在し、双方の合意の上で納期が設定されます。「いつまでも待ちますよ」というクライアントは、まずいません。
クライアント側の都合以外にも、時間管理を徹底すべき目的はあります。例えば、働き方改革で上限が設けられた残業時間の削減にも役立ちます。その他にも、時間管理は様々なメリットをもたらします。
納期を守るため
まず、納期を守ることで、クライアントの仕事の流れを乱すことなく計画通りに進みます。クライアントは、あなたから成果物を受け取ったら進むべき次の工程を組んでいるはずです。であれば、あなたが納期を守れなかった場合、何らかの影響を多くの人や組織に与えてしまうのです。
納期を守れなかったら、クライアントを始めとする人の貴重な時間を無駄にしてしまいます。ですので、納期を守るために責任を持って進捗管理や情報管理を徹底し、リスク管理もおこないましょう。
進捗がわかるため
納期遵守のためにまずカレンダーに納期を記入し、「残りあと何日」とカウントダウンを始めることは最低限すべきことだといえるでしょう。次に、成果物を完成させるためにしなければいけない「タスク」を洗い出し、それらのタスクも進捗を追いかけてみましょう。
プロジェクトの進捗状況を追いかけて記録すれば、それは後々別のタイムマネジメントをおこなう際の貴重な資料になります。過去の取り組みでかかった時間の記録があれば、最適な納期設定がおこないやすくなるからです。
進捗によっては早い段階で改善策を提案できるため
タスクを洗い出して管理すれば、もし途中で一つのタスクに遅れが生じたら、それ以降の工程日数を調整すれば納期に間に合わせることができます。ですので作業の記録はできるだけ具体的におこない、「使途不明時間」はできるだけないようにしましょう。
マネジメントツールにはGoogleカレンダーなど使いやすいものから、ガントチャートといって全体を見渡せるもの、タスク管理ツールなどがありますので、活用できそうなものを探してみると良いでしょう。
生産性を向上させる正しい時間管理法とは
時間管理には、3つの要素があります。
スケジュール管理 | アポイントメント管理(面談、会議、約束など) |
タスク管理 | 仕事の管理 (時間的な自由度の高い資料作成、事務処理など) |
リソース管理 | 限りある時間リソース(資源)の管理 (1日8h勤務なら、1週間に40hのリソースがあることになる) |
時間管理は「スケジュール」「タスク」「リソース」を組み合わせて管理・配分し、効率的におこなっていきます。それぞれのポイントについて説明していきます。
スケジュール管理
スケジュール管理の1つ目のポイントは、スケジュールを「一元管理」することです。会議、出張、面談など、内容によっては別々に管理することもあるかもしれませんが、仕事上のスケジュールの情報は必ず一か所にまとめましょう。時間配分は「見える化」し、移動時間なども調べてタイムテーブル上に記入します。
Googleカレンダーは、数あるスケジュール管理ツールのなかでも最も導入しやすいといえます。Googleアカウントを持っていれば共有でき、権限を与えられれば複数で同時編集も可能だからです。
タスク管理
タスクとは、プロジェクトチームの「課題」決定後、その解決のために必要な作業を細分化したものです。「ToDo管理」ともいいます。例えば、「ホームページを立ち上げる」というプロジェクトには、こんなに多くのタスクが付随します。
- ドメインの手配とサーバーの決定
- サイトデザイン、内容の決定
- コーディング
- チェック、公開
各タスクの納期や進捗を見える化して、分かりやすく管理しましょう。また、常にタスク全体をチェックしながら「無駄取り」や「標準化」をおこなうこともコツです。
リソース管理
リソース管理のカギは、「時間(リソース)と仕事量のバランスをとること」です。
時間リソース≧予定の仕事+予定外の仕事 |
予定外の仕事のための時間配分も必要です。予定の仕事だけでスケジュールを埋めてしまうと、結局納期に遅れたり残業が発生することになります。
「まとまった時間の確保」もリソース管理のうちです。数あるタスクに優先順位をつけたり無駄を省いたりして、時間というリソースを最大限に活用できるように持って行きましょう。
成功事例
働き方改革で「時間外勤務時間の上限」が制定されたことから、時間管理は全ての会社が取り組むべき命題となりました。これまでは長時間労働を助長するような、非効率的な慣習を何となく続けてきた会社も、今後はそれを放置することはできません。
時間管理の成功事例には「こんなことが効果的なの?」と驚かされるようなアイディアがたくさん登場します。あなたの会社でも応用できそうなものがあれば幸いです。
メールで1日の予定を“見える化”:セントワークス
セントワークスは、介護経営サポートシステム販売や人材派遣を手がける会社です。同社には「朝・昼メール」というルールがあり、出社したら「予定表」で1日のスケジュールを組み、その予定表を同じチーム(部署)にシェアしてから仕事開始します。帰宅前についても同様のルールがあり、朝と夜のメールを見比べれば、計画通り働けたかどうかをおのずと振り返るようになります。
このメールを基に上司は部下の仕事に対するアドバイスができるうえ、仕事の標準化も図れます。「朝・昼メール」が功を奏し、残業時間はかつてのほぼ半分に減少しました。
ダーツで席決め:カルビー株式会社
カルビー株式会社は、一部ではモバイルワークやフリーアドレス制を既に採用していました。コミュニケーションの向上のための施策でしたが、結局はみんな固定席化し、仲良しクラブになりやすい課題がありました。
プロジェクト・チームは「ダーツ・システム」と呼ばれるシステムを採用し、ガラガラポンで1日2回の席替えを課すスタイルにしました。途中で1回席替えがあることから、それまでの時間管理が皆上手になりました。社内コミュニケーションもより活性化しました。
CO2削減対策で残業削減成功:コクヨグループ
コクヨグループの事例は、CO2削減を試みて環境対策のためにタイムマネジメントを徹底したところ、結果的に残業時間の削減に成功しました。施策としては次の様なものでした。
- 19:00に一斉消灯
- コンピューターによって2時間ごとにデスクを指定される
- 立ち会議を推奨
- 会議室は最大2時間までしか使用できない
- 集中して仕事をするために一定の時間は電話を取らなくても良いシステム
- 1人になれるスペースを1時間使用できる
このように時間制を敷いたところ残業の減少につながりました。
まとめ
時間というリソースが有限であることは、万人に共通です。それならば、その使い方で結果に大きく差がついていることになります。
長時間労働が常態化している会社は多くありますが、その解決のためには、会社や管理職から率先して働き方を変えていかない限り難しいといわれています。社員が自発的に時間管理術を模索するような新しい社内の雰囲気を、同時に作り上げていく必要もあるでしょう。