日本企業のIT化は遅れている?その理由やIT化のメリットとは

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日本企業のIT化は世界的に見て遅れていると言われています。今やテクノロジーの進化はめざましく、IT化に遅れをとってしまっては産業上著しく不利になってしまうでしょう。この記事では、日本企業のIT化が遅れている原因やIT化のポイントについて解説します。

日本企業のIT化が遅れている理由

日本企業は世界的に見てIT化が遅れていると言われています。その理由としては、一体どのようなものが挙げられるのでしょうか。

テクノロジーに対する理解の不足

日本は、他の先進国に比べるとテクノロジーに対する理解が不足していると言われています。テクノロジーに対する理解が不足していると、新技術をキャッチアップしづらく、グローバルテクノロジーの世界で一歩遅れをとることになるでしょう。

また、新技術や新しい概念に関するドキュメントは英語で公開されることが多いため、新しい技術をキャッチアップするためには英語力は欠かせません。日本は義務教育および高等教育で英語を取り入れていますが、TOEICの点数を見ても目覚ましい成果を上げているとは言いにくいところがあります。英語のドキュメントを読みこなせる人材が少ないのも、IT化が遅れている一つの要因といえるかもしれません。

「お客様指向」の強さ

日本企業は他国と比較し、サービスの質が非常に高いと言われています。「お客様は神様」という言葉もよく用いられ、対応品質の高さこそサービスの強みであるという考え方が未だに根強く残っています。

システムの開発に関してもそれは同様であり、基本的に受託した側はクライアントの要望に沿って仕様を決める必要があります。しかし、クライアント側に必ずしも技術的知識があるわけではなく、場合によっては悪手といえる仕様を求めてしまうこともあります。

そこで受託側がうまく説得できればよいのですが、「お客様指向」が強すぎるとそうもいきません。結果、目先の業務は効率化できるものの、オーバースペックになってしまったり、拡張性やメンテナンスがしづらいシステムが開発されることに繋がってしまいます。

IT人材の育ちにくさ

第三の理由として、IT人材の育ちにくさが挙げられます。日本企業の雇用形態は終身的であり、一度雇った社員は定年まで会社が面倒を見るという風土が根強く残っています。であれば、会社組織としてもそれを前提に社員教育を施す必要があり、それが人材のガラパゴス化に繋がっていると指摘されている面もあります。

転職をして自身の専門的なスキルアップを図ることが前提の社会と、一つの組織で終身的に幅広くやっていくのでは人材の育ち方に違いが出るのも当然と言えるでしょう。特化した人材を育てるためには前者の方が有利になるため、日本企業の雇用制度とIT人材の育成は相性が悪いのかもしれません。

業務のIT化を行うメリット

業務のIT化を行うメリット
では、次に業務のIT化を行うメリットについて見ていきましょう。ITシステムを導入すると、一体どのような恩恵があるのでしょうか。

多くの面で業務効率化に繋がる

ITシステムの得意分野は、「業務効率化」です。どういった点で効率化が図れるかというのはそれぞれのシステムによって異なりますが、一般的には下記のような点が挙げられるでしょう。

  • 定型的な処理の自動化
  • ワークフローのシステム化
  • 出先からシステムにアクセス可能

定型的な処理を自動化すれば、今まで人の手によって行っていた業務をほぼシステムに代替できます。そして、ワークフローをシステム化すれば、確認すべきことをしっかりと確認した上で業務に臨むことができるでしょう。
また、出先からシステムにアクセスできれば、場所を選ばず仕事ができるようになります。これらによる業務の効率化こそIT化の第一のメリットといえるでしょう。

収集したデータを元に正確な判断を下せる

データの管理をITシステムに任せれば、業務効率化の他に「判断の正確性」も得られます。何かしらの経営的判断を下す際、従来は勘や経験によって行っていたことも多いのではないかと思いますが、IT化を行えば収集したデータを元に客観的な判断を下せるようになるでしょう。

もちろん、勘や経験といった要素が全て排除されるわけではなく、データによってそれが補強されるようなイメージになります。また、データを元にしている場合、判断の根拠を言葉で明確に示しやすいため、他者を納得させやすいというメリットがあります。

全社的な情報共有が可能になる

従来は紙やディスクに保管していた情報をITシステムに入力すれば、必要に応じて全社員に共有することができます。部門間での情報共有はなかなか難しいものがありますが、ITを使えば普段は見つけられないような情報も瞬時に検索でき、業務の手助けとなるでしょう。

現代では、商品開発を行うにも部門間のクロスオーバーを求められることが多いのではないでしょうか。企画段階で実際の生産工程の情報が必要な場合もあれば、マーケティングで企画における情報が必要なシーンもあります。

IT化による情報共有が行き渡っていれば、いつでも必要な情報の参照が可能です。

スムーズなIT化を行うために気をつけるべきこと

スムーズなIT化を行うために気をつけるべきこと

では、最後にスムーズなIT化を行うために気をつけるべきことを見ていきましょう。ITシステムを導入する際には、下記のような点に注意する必要があります。

ITシステムに求めることを明確化しておく

ITシステムを導入する際は、事前に「システムに何を求めるか?」という点を明確にしておきましょう。一つで全てをまかなえるシステムというのは存在しないため、自社のニーズと合致しないシステムを導入すると、逆に現場の混乱を招いてしまいます。

システムによる「業務効率化」を目指すのは当然として、「どのような点を効率化するのか」というところまで細分化しておきましょう。そうすれば、自ずと導入すべきシステムが固まってきます。

事前に運用のシミュレーションを行う

導入すべきシステムがある程度決まったら、事前に運用のシミュレーションを行っておきましょう。システムによってワークフローがどのように変化するのかは実際に触ってみないと分からない面も多いため、現場の混乱を防ぐことにも繋がります。

製品システムには無料トライアルが用意されているものも多いため、積極的に利用してみてはいかがでしょうか。無料トライアルで気になったポイントをベンダーの担当者とセッションすることで、システムに対する理解を深めるきっかけにもなるでしょう。

従業員の意識統一を図る

従業員の意識統一を図るのも、IT化における重要なポイントです。製品にもよりますが、システムを主に活用するのは現場の従業員になるため、彼らがシステムを使いこなせるか否かで業務効率化に繋がるかどうかが決まります。

そのためには、システムを活用したワークフローやルールを策定するのが効果的でしょう。新しいシステムを導入した場合、どうしても最初のうちは現場の混乱が予想されるため、それを少しでも防ぐことが大切です。

同時に、システム活用におけるセキュリティ意識も共有しておきましょう。システムに不慣れな従業員がいる場合、思わぬセキュリティリスクが発生してしまう可能性があります。その辺りも運用ルールに盛り込んでおくことが重要です。

AIツールの導入と活用:ChatGPTを例に

スムーズなIT化を行うためには、AIツールの導入と活用が欠かせません。
特に、OpenAIのChatGPTは、その優れた自然言語処理能力により、企業のIT化を加速させる強力なツールとなります。
ChatGPTは、人間が自然に話すような文章を生成することができ、これを業務に活用することで、多くのメリットを享受することができます。

まず、ChatGPTは、顧客対応の自動化に大いに役立ちます。
例えば、顧客からの問い合わせに対して、ChatGPTが自動的に回答を生成することで、顧客サポートの効率化を図ることができます。
これにより、人間のオペレーターは、より複雑な問題や高度な顧客対応に集中することができ、全体としての顧客サービスの質を向上させることが可能となります。

また、ChatGPTは、業務報告の作成を助けることも可能です。
従業員が業務の進捗状況や結果を報告する際に、ChatGPTに対して自然言語で入力するだけで、適切な形式の報告書を自動生成することができます。
これにより、業務報告の作成にかかる時間を大幅に削減することができ、従業員はより本質的な業務に時間を割くことができます。

さらに、ChatGPTは、企業内の教育・研修にも活用することができます。
新入社員や異動した社員が新しい業務を学ぶ際に、ChatGPTに対して質問を投げかけることで、必要な情報を即座に得ることができます。これにより、新しい業務を効率的に学ぶことができ、企業全体の生産性向上に寄与します。

以上のように、ChatGPTの導入と活用は、企業のIT化をスムーズに進めるための重要な要素となります。
AIツールの導入は、一見すると大きな投資を必要とするかもしれませんが、その効果は長期的に見れば大きなリターンをもたらすでしょう。
これからの時代、企業のIT化を成功させるためには、AIツールの導入と活用が不可欠となります。

IT化の一歩先「デジタルトランスフォーメーション」とは?

業務をIT化すればさまざまなメリットが生じるでしょう。それだけでも十分な恩恵はありますが、その一歩先に「デジタルトランスフォーメーション」という概念が存在します。

続いて、IT化の一歩先にある「デジタルトランスフォーメーション」についてご紹介します。

IT活用によりビジネスモデルや体制を一新し競争優位を得ること

デジタルトランスフォーメーションを平たく解説すると、「ITテクノロジーを駆使してビジネスモデルや体制を変革を促し、市場における競争優位を確立すること」です。デジタルトランスフォーメーションは元々「デジタル技術が人々の生活をより良い方向に変化させること」と、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱されていました。

しかし、現在のビジネスシーンにおいては経済産業省のガイドラインにより

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

参考元:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン

と定義されたものが主流となっています。

デジタルテクノロジーの進化にともない、従来では取得の難しかったさまざまなデータを収集できるようになりました。それらを使い新たなビジネスモデルを構築することで、企業や業界だけでなく社会全体にインパクトを起こそうと試みること、それがデジタルトランスフォーメーションの目指すところと言えるでしょう。

デジタライゼーションとの違い

デジタルトランスフォーメーションとよく似た言葉に、「デジタライゼーション」というものがあります。デジタルトランスフォーメーションが「デジタル技術を駆使してビジネスモデルや体制の変革を目指す」であるのに対し、デジタライゼーションは「業務をデジタル化し効率化を図ること」と定義できます。

どちらもITテクノロジーを業務に取り入れる点は変わりませんが、「何のために取り入れるのか」という部分が異なります。デジタルトランスフォーメーションに取り組む際は、単なるデジタル化やデジタライゼーションにとどまらないよう注意が必要です。

優れたIT活用やデジタルトランスフォーメーションの具体例

優れたIT活用やデジタルトランスフォーメーションの具体例

では、次に優れたIT活用およびデジタルトランスフォーメーションの具体例をいくつかご紹介します。

個人間売買の一切をスマホで完結:メルカリ

メルカリは、個人間売買をスマホのみで完結させられるシステムを構築・提供しています。メルカリを利用することで、ユーザーは手軽な操作で不用品を売買でき、匿名配送による安全性を確保しながら取引を行えるようになりました、

また、決済サービスである「メルペイ」や、暗号資産である「メルコイン」にも参入しています。それにより、デジタル活用によるさらなる価値の提供が期待できるでしょう。

オンライン通販のプラットフォーム構築およびクラウドサービスの展開:Amazon

Amazonは、オンライン通販サービスのプラットフォームを大々的に構築し、インターネットでの商品購入を身近なものにしました。さらに、プライム会員サービスなどによるユーザーの利便性向上にも着手しており、デジタル領域における物流やコンテンツ提供の第一人者と言っても過言ではありません。

加えて、AWSというクラウドサービスも展開し、さまざまなオンラインサービスの基盤を構築しています。

ITを用いて空きリソースを活用。手軽なテイクアウトオーダーを可能に:UberEats

UberEatsは、従来のような雇用スタイルではなく、その時たまたま手が空いている人の時間を使って食事の配達を行うサービスです。その一連の流れをスマホアプリで完結させることができるため、頼む方も提供する側も配達する人も、全てを手軽にまかなうことが可能です。

まとめ

日本は産業や組織のマネジメントがガラパゴス化しているということもあり、そのせいでIT化が遅れていると言われています。しかし、ITシステムを効果的に活用することができれば著しい業務効率化に繋がるでしょう。

IT化が遅れている理由、そして改善すべきポイントをしっかりと掴み、適切なシステムを導入しましょう。