従業員満足度とは?算出方法から満足度が低い場合の対処法と成功事例
「従業員満足度」という言葉を聞いたことはありますか?
言葉の意味は分かっても、「従業員満足度」とはどのように算出するのでしょうか?いま、従業員満足度が企業の業績に与える影響に対して注目が集まっていますが、もし会社の従業員満足度が低い場合は、どのような対処をすれば改善できるのでしょうか。
この記事では、従業員満足度の算出方法と改善方法、また実際に従業員満足度が向上した事例も併せてご紹介します。
従業員満足度算出の意義と算出方法とは?
「顧客満足度」という言葉は既に世の中に浸透していますが、従業員満足度も同じように重要視されるようになってきました。その背景には、少子高齢化で深刻さを増す人手不足の問題も関係しています。いまや、従業員が満足して働ける労働環境でなければ人手不足に陥ってしまう時代となりました。人手不足で従業員一人一人の負荷が大きくなると、離職者が出るという負のスパイラルも存在します。
また、従業員満足度が高ければ会社が提供するサービスの質が向上し、結果的に顧客満足度が上がることも認知されるようになりました。
従業員満足度を算出する意義とは?
従業員満足度を算出する意義は、次の2つです。
- 従業員満足度を向上させ、会社の業績を向上させる
- 会社の経営課題を明確化する
従業員満足度が高まると会社へのロイヤリティが高まり、その結果、企業の業績も向上するといわれます。また、従業員が抱く会社への不満を認識することにも、大きな意義があります。ともすれば離職者を出しかねない不満の種を、会社が早期に発見して改善策を立てることができるからです。
設問形式による調査
従業員満足度の調査をおこなう方法には「設問形式」と「インタビュー形式」があります。設問形式は回答を集めて集計しますが、集計方法には「単純集計」と「クロス集計」があります。
単純集計
基本的な集計・分析方法です。例えば、100人が回答したうち50人が満足なら、「満足50%」とあらわすやり方です。
クロス集計
特定の条件で分けて集計し、集団の傾向を見るやり方です。男女、部門別、役職別の差を明らかにすることができます。
インタビュー形式による調査
インタビュー形式の調査は時間も人件費もかかりますが、掘り下げて質問をしたい場合や、従業員の反応を見たい場合に有効です。従業員全員を対象とするのは、規模が大きい会社では難しいでしょう。また、対面形式なのでかえって本音を言ってもらえないこともあるかもしれません。その場合、コンサルティング会社や調査会社に委託する方法もあります。ケースバイケースでふさわしい形式を選びましょう。
従業員満足度が低い場合の対処法とは?
調査の結果、従業員満足度が低いことが判明したら、どのように対処すれば良いのでしょうか。
「会社が自分の希望を聞いてくれない」「希望の職種に就けない」「社内の雰囲気が悪く、ギスギスしている」このような内容が、不満として上がることが多いかと思われます。最近では会社が社員の声を求めたり、交流の場を提供したりする事例が多く見られますが、試しに取り入れてみたらあなたの会社でも従業員満足度が上がるかもしれません。
また、現代においては会社の重要課題である、社員のメンタルヘルスに対するサポートを導入する動きもみられます。
社内公募制度
「社内公募制度」を導入し従業員の意見を取り入れている会社もあります。社内公募制度を人事異動制度で活用している場合は、ポストや職種への希望者を公募してから人事配置をおこないます。自分の希望による人事異動なので、モチベーションが総じて高くなります。
また、社員のアイデアを買い取り報奨金を授与するといったユニークな事例もあります。従業員が主体的に事業に参加できるため、こちらもモチベーションの向上に繋がっています。
コミュニケションの場を創る
社員同士が交流できるコミュニケーションの場を創ることも、従業員満足度を向上させます。そもそも「社内報」も社員間の情報共有を目的としたものでした。
いま「社員が気持ちよく目的をもって働けるように」という目的で、福利厚生やイベントを充実させる企業が増えています。社食やカフェを設けて社員がリラックスして談笑できる場をつくったり、朝時間に有志がプレゼンや勉強会を開催できるスペースを設けたり。社員同士が良好な関係を築けたら、仕事へのモチベーションもおのずと高まります。
EAP(従業員支援プログラム)の導入
EAPの導入も、現代の社会においては大きく評価されます。
EAP
Employee Assistance Programの頭文字を取ったもので、「従業員支援プログラム」と訳されます。契約企業に対するメンタルヘルス(心の健康)やカウンセリング、心の病による休職者の復職支援や業務パフォーマンス向上などを目的とした支援活動のことです。
日本の人事部
アメリカでは、Forbsが選んだ500社の95%がEAPを導入しているといった統計もありました。日本ではまだ黎明期の業界ですが、EAP会社に外部委託するという選択は可能になりました。
従業員満足度が向上した事例
それでは、従業員満足度を実際に大きく向上させた事例を紹介していきましょう。以下、紹介する企業はいずれもIT企業ですが、Webサービスを開発・提供する会社の業績は社員のモチベーションが大きく寄与するため、参考になる要素が多いです。またIT企業はそもそも変化の早い業界に属しているため、ニーズを敏感にキャッチし時代に素早くキャッチアップしていく柔軟性を常に求められています。会社経営の改善策も施行が早いので、その点は他業界の日本企業が見習うべき点だといえるでしょう。
産休・育休約8ヶ月分の給与を100%保障:メリカリ
メリカリは2016年に新人事制度「merci box(メルシーボックス)」の導入を発表しました。以下、内容を紹介します。
- 産休・育休期間中の給与を会社が100%保障
- 育児・介護休暇を年間5日間まで有給に
その他、お祝い金や給付金、結婚休暇(5日間)、妻の出産立会休暇(3日間)などを充実させました。メリカリは3周年を迎えるにあたって産休・育休支援をはじめとする『merci box』を開始しましたが、一般的に産休・育休期間の給与保障は50%のところ、メリカリは全額保証を決定しました。
やる気診断は会社の健康診断:サイバーエージェント
2016年に「社員モチベーションの高い企業」日本一に輝いたサイバーエージェントは、社員モチベーション調査を “組織の健康診断”と考え実施しました。とりわけ活気あふれる広告事業部は「社員満足度を上げない限り自信を持って自社サービスを提供できない」との考えの下、高い士気を生み出す文化形成に尽力し、全社総会で「ベストプロジェクト賞」を受賞しました。「縁の下の力持ちを評価する」「幹部こそ仲良く」などの取り組みが功を奏しました。CA18という次世代リーダー育成プロジェクトも、社内に大きな刺激を与えています。
異動先は自分で決める:DeNA
2017年8月、DeNAは「シェイクハンズ制度」をスタートしました。これは本人と異動先部署の意志が合致すれば、部署異動が実現する制度です。これまでの社内キャリア公募制度は、選考を通らないと異動が許されませんでしたが、シェイクハンズ制度は本人の意思と情熱を重視した形にリニューアルされました。自分の意思を尊重しキャリア形成できるため、モチベーション向上のきっかけになります。DeNAの幅広い事業領域で、異業種にもチャレンジできるのも魅力です。
まとめ
従業員満足度が向上した事例では、奇しくもIT企業を紹介させて頂きました。IT業界は社員の層も年齢的に若い業界ですが、従業員満足度向上のための取り組みは、他業界の会社にも参考になると思われます。アメブロなどを提供するサイバーエージェントに至っては、「縁の下の力持ちを探す」「幹部の関係性こそ大事」といった普遍的な取り組みが功を奏し、部署を活性化させました。このように、現場で社員のモチベーションに寄り添い育てることは、福利厚生や社内公募制度の充実と同じくらい重要性を持つといえるでしょう。