業務システムの活用が成功の鍵になる働き方改革。今こそ業務システムの目的と役割を再確認

システム開発

働き方改革は、近代の日本における最大の労働法改革だといわれています。特に、今回の法改正の目玉は「時間外労働の上限規制」で、今まで長時間労働の抜け道となっていた36協定の特別条項がいう「臨時の特別な事情」にも厳しい規制が入り、違反すると罰則・罰金が科されるようになりました。このように日本の労働の在り方を改める狙いをもつ働き方改革を契機に、あなたの会社が生産性を向上させるにはどうすれば良いのでしょうか。

働き方改革は既存業務の改善から始めるべき理由

働き方改革により2019年4月、労働基準法をはじめとする法改正がおこなわれました。ご存知のように、それら改正の中には「罰則付きの法律に格上げ」された「時間外労働の上限規制」も含まれます。つまり、長時間労働の是正は、人事労務担当者や経営者にとっては努力義務ではなく、遵守すべき法律となりました。
働き方改革以降、企業には既存業務の改善という課題が付きつけられていますが、なぜ働き方改革には業務改善が不可欠なのでしょうか。

長時間労働ありきの働き方脱却のため

「働き方改革」が罰則を設けてまで実現を目指すものの一つに「長時間労働の是正」があります。長時間労働が常態化する企業は多く、その背景にはプライベートを犠牲にしてまで残業することを美徳とする文化があるといわれています。 実際には、残業を日常的に慣行していたからこそ経営が成り立っていた企業は存在します。しかし、人手不足がより深刻化すれば、そのような企業には求職者が来なくなります。今こそ、効率的な働き方にシフトすべき時なのです。

経営陣を含めた意識改革のため

時間外労働の上限規制などの働き方改革関連法を遵守するには、経営陣をはじめとして社内が一丸となって取り組まなければ難しいです。いわば「成果の出し方」改革ともいわれる働き方改革は、日本の企業に新しい成果の出し方を模索し実現することを求めています。
現場のパフォーマンスを向上させるためには、コミュニケーションの改善や、社員への適切な評価やフィードバックを常におこなうなど「意識改革」も重要です。このような根本的な労働環境の改善こそ、働き方改革の目指すところなのです。

働き方改革に業務システムの活用が必要な理由

業務システムを導入するメリットをひとことで言うと「省力化」や「迅速化」です。全て人手でおこなえばヒューマンエラーは避けられませんが、システムは正確に処理・記録し、それだけでなく瞬時に情報を共有してくれます。この便宜性が既存の業務の負担を軽減し、企業の余力を創出して、よりビジネスの可能性を広げてくれます。
働き方改革によって、業務システムのサポートの需要が高まっています。その理由をいくつか紹介します。

時短・省力化が可能に

情報が全て紙ベースで記録・保管されていた頃は、その情報を引き出すのにも時間がかかりました。ファイルを保管する場所も要りました。しかしシステムに情報を格納すれば、探すときにも簡単に検索でき、場所も取らず、共有も簡単です。
企業はどこも優秀な若い人材の採用を願いますが、デジタルネイティブと呼ばれる若い世代が就職したい労働環境には、システム化は欠かせません。現社員がシステムに慣れるかどうか以上に、システム化は企業の将来に関わる問題だといえます。

属人化の脱却と業務の仕組み化が可能に

業務改善の柱の一つに、「業務の属人化」を無くすことがあります。属人化とは、特定の業務が特定の人材に専任されることをいい、もしその専任者が休職・離職したりすると現場は混乱してしまいます。この属人化を避け、業務の平準化(仕事の隔たりを無くす)のためにシステムは活躍します。マニュアルをデータ化しログインすればいつでも閲覧可能にすることで、全体の効率がかなり上がり、業務全般の「仕組み化」を実現すれば、企業規模が拡大してもスムーズに稼働できます。

素早い情報共有が可能に

企業には、素早い情報共有は必要不可欠です。昔は「社内便」を社内に回し、閲覧したら押印する時代もありました。日常的な内容ならそれで良いのですが、緊急事態の場合はこれでは困ります。特に本社、工場、営業所など拠点を複数持つ場合は、緊急の事態にこそ瞬時に情報共有できることが強みになります。近年はIoTを搭載した設備もあらわれ、稼働に不具合が生じると責任者にメールが送信されるシステムを持つものもあります。

システムコンサルティングの活用も含む成功事例

それでは、働き方改革にあわせて、業務改善とシステム導入をおこなった会社の成功事例をご紹介します。以下に紹介する成功事例は、新出のIT企業、老舗の大企業メーカー、地方自治体と様々なケースとなりました。経営体質や企業規模によって、改善策実行のしやすさは違うと思われますので、興味深い組み合わせとなりました。あなたの会社でも実践できる内容があるか、チェックしてみてください。

先進的な働き方が評価され「ホワイト企業アワード」:株式会社ソニックガーデン

株式会社ソニックガーデンは全員テレワーク、本社もなければ管理職もいない会社です。2018年、同社は先進的な働き方が評価され「働きがいのある会社ランキング」5位に入賞、「第3回ホワイト企業アワード」も受賞しました。社長のインタビューを引用します。

“私たちが取り組んできた業務改善は、ひとつひとつは小さな工夫ばかりです。一気に大きなシステムを導入するようなやり方ではなく、現場で起きている問題を解決して、また次の問題を解決して、という繰り返しでやってきました。”
JBPress

“大事なことがきちんと伝わるようにするために、自作のyouRoomというサービスを使っています。(中略)一方で社内のメンバーとの普段のコミュニケーションでは、”Remotty”というサービスを使っています。これもソニックガーデンで自作したサービスです。”
Social Change

スケジュール可視化やWeb会議など「ワークスタイル変革」で成功:富士通

富士通は約35,000人の従業員を対象にテレワーク勤務制度の導入を発表しました。今でこそ日に6,000ものWeb会議がおこなわれるまでになりましたが、意識改革には長い道のりがありました。まずコミュニケーション基盤「Office365」を導入し、Web会議を実現。VDIの導入で、タブレット端末などで社内と同様の業務をおこなえるようにしました。Outlookでのスケジュールの見える化や、タブレットでワークフローツールを使用可能にし、上司の決済などもテレワークで下りる環境を作り上げました。

コンサルタントを公費で導入し働き方改革:三重県

三重県は自治体として働き方改革の実現を目指しました。全国市区町村の約半数が「消滅可能性都市」に該当しているなか、生き残りをかけて働き方改革に着手しました。注目すべきは、公費で23社の企業人事部に「働き方改革ノウハウ講座」を受講させ、8社にコンサルティングを導入したことです。その結果、超勤者は3割減、特殊出生率は過去20年間で最高に。男性育休取得率も全国の2.7倍、県民一人あたり所得はリーマン後で最も高い金額を達成しました。

まとめ

成功事例では、自治体も取り上げました。自治体も働き方改革に本気で取り組んでいることに、驚かれたのではないでしょうか。三重県の場合は、公費でコンサルティングを導入したのが成功のカギでした。実際、業務改善や最適なシステムの導入は、専門家にコンサルティングをしてもらうと確実です。働き方改革とは、忙しかったり体質が古かったりして、経営になかなかメスを入れられない企業に法律で揺さぶりをかけたものです。その目的は違反企業を出すことでも規制でしばりつけることでもなく、全ての企業の生産性向上です。
あなたの企業も、きっとその恩恵にあずかれるはずです。