管理職にシワ寄せがくる理由とは?IT化を含む「働き方改革」で解決

ビジネス

働き方改革が叫ばれるいま、旧態依然の悪しき慣習がビジネスの現場から一蹴されようとしています。あなたの職場は、管理職にばかりにシワ寄せがくるようなことはありませんか?そんなことが常態化しているなら、今こそその原因を突き止めましょう。働き方改革は、労働生産性向上も主眼にしています。その観点から見ると、あなたの職場が非効率的なのは何が原因でしょうか。また、この現状を打破する秘策はあるのでしょうか。

シワ寄せの定義とは

そもそも、シワ寄せとはどんな意味でしょうか。調べてみました。

物事を行うにあたって生じた矛盾や不利な条件を、他に押し付けること。
コトバンク

管理職であれば、部下の不手際や組織の未熟さゆえに起きた問題に対して、丸ごと責任を取らされることもあるでしょう。1度くらいならまだしも、シワ寄せがくるのが日常化してしまったらたまりません。物事がうまく行かない時は、まず原因を究明しなければなりません。こちらにシワ寄せがくる原因は何なのでしょうか。

部下の世話がおろそかになりやすいプレイングマネージャー

プレイングマネージャーとは、自らもプレーヤーとして働く管理職のことです。従来日本では、管理職と部下の立ち位置がきっちりと分けられてきました。しかし、成果主義の浸透からか、現場の状況を良く知るプレイングマネージャーの登用が増えてきました。プレイングマネージャーの難点は、あまりにも多忙で部下のケアがおろそかになってしまうことです。業務の指導のみならずメンタルのケアも管理職の仕事ですが、プレイヤーの責務も兼務するためケアが十分におこなえない可能性があります。その結果、自分にシワ寄せが来てしまうのです。

無理な業務効率化で退職者が出て人手不足に

無理のある業務効率化が、退職者を出す例もあります。

業績が芳しくないからか、社内で作業の効率化、改善をもとめてくるようになりました。(中略)いきなり上層部の意見からか社員の作業の見える化をして、出来る奴と出来ない奴を仕分けて配置改善をする目的で、作業データを取り始め、毎日一人一人の作業データの入力と3時間ごと作業報告が必要になりました。報告も毎日必須でした。この作業が大変で仕事の合間に行うので報告者は自分の仕事が出来ない時間が増え、通常の作業時間が減るという問題が起きました。(中略)
私も同僚もこの頃から退職を意識するようになりました。実際に私が辞めた前後に何十人か辞めています。
ミライトーチ Media

管理職の成り手がいない(誰もやりたくない)

東洋経済オンラインは、キャリアインデックスがおこなった調査から「管理職になりたくない人の割合」を引用しました。
20代男性:51.9%
30代男性:48.7%
20代女性:83.1%
30代女性:84.2%

部下から見ると、今の管理職は厳しくなるビジネス環境のしわ寄せを一身に抱え込まされている存在に見えています。(中略)自分の生活を犠牲にしてまで、そんな負荷を背負う存在にはなりたくない。
出典:東洋経済オンライン

同記事は、若者が管理職を望まなくなったことで、潜在的に管理職候補が減少していることを示唆しています。

管理職に悲惨なシワ寄せがくる理由


管理職にばかりシワ寄せがくる職場には、何かしら共通点があると思われます。その共通点を見つけ出して改善していけば、解決に至るかもしれません。現在、働き方改革の名のもとに、業務効率化など様々な試みがなされていると思われます。しかし、残念ながら全てが的確な試みとはいえないのではないでしょうか。なかには、更に状況を悪化させているものもあるかもしれません。また、業務の標準化が実現されていないため非常に属人的な働き方を続けている会社も、まだまだあると思われます。

プレイングマネージャーの限界

営業職は8割がプレイングマネージャー制を導入しているといわれています。しかし、導入メリットと同時に課題も露呈しています。

  • マネージャーとプレーヤー兼任だが、結局プレーヤーに戻ってしまう。
  • 管理職と兼業なので生産性がダウンした。
  • 部下を育てられない。

忙しすぎて部下とのコミュニケーションがとれないのは由々しき問題です。忙しい上司に、話しかけにくい部下は多いです。上司も、途中経過を見る間もなく納期を迎え「まだ終わっていない?もういい、こっちでやるから!」と、部下の仕事を撤収。結果シワ寄せがくるのです。

働き方改革で部下に残業をさせられない

以下は、働き方改革のシワ寄せに苦しむ管理職のインタビュー記事からの抜粋です。管理職の厳しい立ち位置が伝わってきます。

働き方改革のしわ寄せの多くは現在、多くの職場で管理職にのしかかっています。さらにこの傾向は強まりそうです。(中略)36協定の労働時間に上限ができた場合、それを遵守するには増員や業務改善で対応せざるを得ません。しかし、売り上げや利益を最優先に考える社長がいる会社では「増員はできない」なんて言うことも考えられるからです。うまく改善することができなければ、全てを自分で抱え込んでしまう管理職が続出するでしょう。
BUSINESS INSIDER

専任制による業務のブラックボックス化

「仕事に人をつける」「人に仕事をつける」という表現があります。前者は、どんな人でもその仕事を担当できるように標準化し、見える化することが前提になります。後者は「属人化」を意味し、その人でなければできないという状態を指します。人ありきの業務はブラックボックス化します。その専任担当者が突然休んだり辞めたりしたら、誰も代行できない状態になり、管理職に多大なるシワ寄せが来るでしょう。

企業のIT導入目的とは


日本労働研究機構がおこなった「IT活用企業についての実態調査・情報関連企業の労働面についての実態調査」から、企業によるIT導入の目的を順位別に見てみましょう。

  1. コスト削減:62.5%
  2. 既存の市場や顧客の拡大:34.5%
  3. 新規の市場や顧客の獲得:29.3%

次に、導入目的別に、最も回答が多かった業界を挙げて見てみましょう。

  • コストの削減:機械関連製造業(75.0%)
  • 既存の市場や顧客の拡大:金融・保険業、不動産業(50.0%)
  • 新規の市場や顧客の獲得:情報サービス業(50.0%)

業務の定型化で人件費削減

下図は、IT導入企業のコスト削減目的の内訳です。人件費が最多の63.0%となっています。

出典:日本労働研究機構
同調査は、IT化により「定型的業務」をおこなう一般職は減少するというデータを得ています。IT化による雇用の削減効果がみられた企業では、業務部門別では以下の順に削減効果が高かったという回答でした。

  1. 総務・人事:67.1%
  2. 経理・財務:62.1%

削減された人材についてのデータもありました。それによると、最も削減された職階は一般職(非管理職)で62.5%、年齢別では若手で33.2%、中高年社員で28.0%でした。学歴別では中・高卒者において削減が目立ちました。

「定型的業務化」で減少する一般職に求められるものとは

このように、IT導入で削減が進む比率が高いのは一般職(非管理職)だという回答が得られました。同調査は、「IT化に伴い変化する職務・役割」についても回答を集めた結果、興味深い結果が得られました。今後一般職に求められるようになる職務能力で多かったのは、次の通りです。

  • 専門性の高い仕事
  • 創意工夫の余地の大きな仕事
  • 個人の仕事の裁量性

また、中間管理職・一般職を問わず「インターネット等を活用した情報検索、収集能力」「収集した情報の整理、分析能力」の重要性は高まるものとみられます。

中間管理職に必要なのは「情報判断能力」

同調査によると、今後中間管理職には、顧客から吸い上げられて見える化されたデータを読み解く力、またはマーケティング能力も求められます。業務効率化を目指すなら、業務分析で得られたデータを読み取り、効果的な業務改善案も提案できるような能力が求められるでしょう。中間管理職に限らず将来のリーダー像とは、テクノロジーが「見える化」した様々な数値や動向をベースに、現状を改善していく鍵を読み取る能力を持つ人だといえるでしょう。

マニュアル化、情報の一元化

最後に、ITを導入するなら外してはいけない「業務のマニュアル化」と「情報の一元化」を挙げましょう。この2つがないなら、管理職にシワ寄せがきても仕方がないのではないでしょうか。日々の業務に追われて、業務改善をおこなう余地など全くない現場では、これまでマニュアルなしでやってきたところもあるでしょう。しかし属人的な働き方は、社員の病気による求職や退職で、ある日突然危機に陥ります。将来的な会社規模の拡大を鑑みても、業務マニュアルを作成すべきです。システムによる情報一元化についても、同じ理由から導入が急がれます。

まとめ

人手不足は既に深刻な問題となっており、これまでに挙げた管理職にシワ寄せがくる原因は、既にあなたの職場でみられる状況なのかもしれません。管理職がいつも尻ぬぐいしているような状況は、長続きしません。今後、少子高齢化により労働力がまずます減少することを考えると、今のうちにシワ寄せの改善策を取っておいた方が良いでしょう。