IT化がもたらす経済効果と、現在の日本でIT化が叫ばれる背景を解説

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「日本はIT化後進国」。そのようにもいわれますが、IT化は「働き方改革」以降ますます官民をあげて叫ばれるようになりました。IT化による大きな経済効果が見込めるからこそ必要性が叫ばれるのでしょうが、IT化の経済効果とはどれほどのものなのでしょうか。また、働き方改革のキーワードでもある生産性向上のためにも、IT化は大きく推奨されています。IT化が寄与する、生産性向上の具体的な内容についてもまとめていきます。

中小企業に見るIT投資と生産性向上

ITの導入は、生産性向上の方法の一つとして推奨されています。ITの導入は深刻な人手不足の解決策としても有効なので、日本企業が抱える問題の解決策として既に経済効果があります。IoTなどIT先端技術の登場もまた、産業の業務プロセスから生み出される製品、サービスまで広い範囲において変化を起こしており「新しい経済効果」を生み出しています。IT投資により波及する経済効果とは、どのようなものでしょうか。

生産性向上と IT 導入の相関性とは


出典:中小企業白書・小規模企業白書概要

上図は、2018年度版「中小企業白書・小規模企業概要」に掲載された「設備投資実績と労働生産性の変化」を表した図表です。IT投資を実施していない企業に対し、積極的に実施している企業は、生産性の向上が省力化投資をおこなった企業で26.9%増、更新投資をおこなった企業で21.2%増となっています。

※省力化投資:労働力を節約した操業ができるようにするための設備投資のこと。
※更新投資:既存の旧設備にかえて新しい設備を設置するための投資のこと。

部門別IT導入割合

公益財団法人 全国中小企業取引振興協会がおこなった「規模別・業種別の中小企業の経営課題に関する調査」(H27)には、「業種別のITツール毎の利活用状況」が掲載されました。業種ごとの特徴としては、医療法人以外の医療業や製造業、卸売業ではERP(基幹系情報システム)やEDI(Electronic Data Interchange)が、福祉業や宿泊業ではERPが、その他サービス業ではグループウェアが、他の業種と比べて利活用されています。

IT導入の今後の目的は高付加価値化

労働生産性を最も向上させる方法の一つは、付加価値額を増やすことです。つまり、既存製品・サービスを高付加価値化したり、高付加価値的な新規製品・サービスを展開させることです。AIやロボットの導入もその施策の一つ。観光業の例では、業務効率化のためにサービスロボットを受付やサポーターに利用する事例がみられます。将来は、このロボットで得たデータやノウハウを蓄積し、応用した新規製品・サービスを提供することもできるでしょう。

内閣府資料から読み取るIT化の経済効果

内閣府が発表した「IT化の経済効果」というレポートは、冒頭から下記の文章で始まります。

「IT は新たな需要を創出し、経済を需要面から押し上げている」
内閣府「IT化の経済効果」

具体的には、まずIT化による新しい消費形態の登場を挙げています。IT関連の財・サービスや、eコマースなどがこれに当たりますが、従来の消費からの代替にとどまらず需要を増加しました。同時にIT関連の財・サービスには著しい価格低下も起こり、利用者に大きなメリットを与えました。

IoTによる新しい「需要」の拡大

総務省がまとめた「IoT新時代の未来づくり検討委員会(第1回)事務局資料 」によると、IoT、AI、ロボットなどが普及した社会では、次の領域でIoTなどの技術への需要が拡大します。

    • 2020年以降の人口減少・高齢化社会においての活躍
    • 日常生活、職場や公共空間にIoTなどが広く浸透する時代に求められる人材の教育

生活のいたるところがネットでつながる社会は、次世代の人材育成の需要も生み出すわけです。ネットで蓄積されたデータを解析する、データサイエンティストの需要も大きく見込まれます。

コモディティ化による価格低下は消費者にメリットに

コモディティ化(各メーカーの製品の違いが失われ、均質化・均等化していくこと)によるIT 関連サービスの著しい価格低下は、利用者に大きなメリットをもたらします。古い例ですが2000 年度以降、PC価格・ネット接続料の低下により、2003 年度には顧客に約 1.4 兆円相当(累計では約 3 兆円相当)のメリットがありました。2004 年 8 月のパソコン価格は、 2001 年 1 月の約 5 分の 1 に下がったのです。こうした著しい価格低下は、需要の拡大にもつながっています。

新たな雇用も創出

厚生労働省委託の調査では、IoT、AIによって「バックオフィスのホワイトカラーの仕事が減少するか」という質問において「減少する」と考える企業の割合が高いと分かりました。一方「サービスに関わる仕事が増加するか」という質問では、「増加する」と考える方が割合が高いです。
こんな例もあります。2018年、IoTメーカーのCerevo社を率いる岩佐琢磨氏は、社員とともにパナソニック子会社へ移籍しました。岩佐氏は、古巣のパナソニックから「前衛的IoT製品」の開発職をオファーされ、約1/3の社員を引き連れカムバックを果たしました。

現在の日本でIT化が叫ばれる背景とは

いま日本でIT化が叫ばれる背景にあるのは、「働き方改革」の一環である労働生産性向上の必要性です。労働生産性を上げるには現在の労働条件の改善が必須ですが、IT化を進めることで飛躍的に改善を進めることができます。
また、日本全体の課題といわれる高付加価値的生産性の向上も、IT化の導入なしには達成できません。いづれの課題に対しても、IT化が解決の鍵となるのは間違いありません。

働き方改革による生産性向上推進

IT化で生産性の向上が推進できる具体的な例を挙げていきます。

業務の省力化

ロボットの導入は農業や製造分野のみならず、ホワイトカラー業務にも進み、RPA(Robotic Process Automation)の導入が進んでいます。
小売業においてはいわゆる「無人化」が進みつつあります。

業務プロセス効率化

建設業では、ドローン撮影や映像や測量データを基にしたAIによる自動設計の導入で、測量・設計・施工計画のプロセスの一体化が可能になりました。AI・IoTを利用すれば、さまざまな業種の業務プロセス効率化が可能となります。

人材不足へのソリューションとして

人手不足の影響を大きく受けるのは労働集約型の産業です。具体的には農林水産業、建設業、運輸・流通業、サービス業において、既に人材不足が経営課題となっています。日銀によると2014年以降は全業種において人手不足となっていますが、これにより収益性を維持できなくなると、企業としての持続性が失われてしまうのです。解決策としてICTによる「業務の省力化」「業務プロセスの効率化」またICTを通じた「労働参加の促進」が挙げられます

ビジネスチャンス拡大

IT化によってビジネスの版図を拡大することが可能になります。

製品・サービスのコモディティ化

型落ちになるなどして価格だけが競争力となる「コモディティ化」は、特にコスト競争が激化するエネルギー・インフラ業等において経営課題となっています。解決策は、IT化で製品・サービスの高付加価値化を図ることや、または新規製品・サービスを開発することになります。

高付加価値化の例

保険業では、これまで困難だった柔軟な保険内容の変更が、スマホアプリやウェアラブル端末でデータを取得することにより可能になり、加入者ごとに割引率を算出するのも可能になりました。

まとめ

前述の「IoT新時代の未来づくり検討委員会 資料」は「テクノロジーの今後の見通し」をまとめています。2020年から2045年のシンギュラリティ(AIが人を超える)までのIoT、AIの普及予測を図表化している、非常に興味深い資料です。
2022~27年頃には人体とコンピューターが融合し、「コンタクトレンズ型ディスプレイ」「頭の中で念じるだけでコンピュータ操作」などが登場するといいます。将来の産業は、それに呼応した製品・サービスの提供が求められることを考えても、IT化なくして会社存続なしといえるでしょう。