品質管理をIT化するには?手法やメリットを事例つきで解説

システム開発

品質管理業務は、自社製品のクオリティを保つために欠かせない業務です。品質管理が疎かになれば、製品の不良率が上がり、市場や取引先からの信頼を失ってしまうことになるでしょう。

それを防ぐために重要なのは、品質管理のIT化です。現代はテクノロジーの進化により、さまざまな業務をIT化できるようになりました。

この記事では、一般的な品質管理手法や品質管理をIT化することによるメリットを事例を交えつつご紹介します。

生産工程における品質管理手法

生産工程においては、どのような手段を用いて品質管理を行うのでしょうか。まずは、一般的な品質管理手法について解説します。

トレーサビリティ

トレーサビリティは「追跡可能性」という意味を持つ言葉であり、「Trace(追跡)」と「Ability(能力)」を組み合わせた用語です。「その製品にはどのような材料が使われ、誰の手によって生産されたか」といったプロセスを可能な限り追跡できるようにするための手法です。

トレーサビリティが整っている製品は、当然ながら信用が増します。名前が出ている以上下手なことはできないという心理から、いざという時は追跡調査を行い問題解決を図るという姿勢を見せることができるでしょう。

PDCAサイクル

PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(確認)」「Action(改善)」の頭文字をとった言葉です。「ある仮説を実行し、その結果からさらなる改善を試みる」という意味になるため、PDCAサイクルを回し続けることによって、効率や生産性の向上が見込めます。

品質管理にPDCAサイクルを導入すれば、管理工程の改善を行うことができます。PDCAサイクルの優れているところは、一回回せばOKというわけではなく、繰り返し何度も実行することによって効果が高まるという点でしょう。

不良分析

不良分析は、不良が発生した個数を記録し、それを分類して分析することです。不良が発生する原因には、下記のようにさまざまなものが考えられるでしょう。

  • 材料に問題があった
  • 生産工程に問題があった
  • 出荷時や流通時に毀損した

当然ながら、不良が多いカテゴリほど見直しが必要という話になります。しかし、場合によってはより根本的な原因を探らなくてはならない場合もあるため、同じ「不良分析」という言葉でも企業によって意味が異なるケースもあります。

品質管理をIT化することによるメリット

では、次に品質管理をIT化することによるメリットについて解説します。品質管理業務をIT化することにより、一体どのような恩恵が受けられるのでしょうか。

製品の管理や追跡が容易になる

品質管理をIT化すれば、製品の管理や追跡が容易になります。上述したトレーサビリティなどはその顕著な例であり、原料の調達時期や場所・価格、生産の責任者や工程までを全て記録することが可能です。

もちろん、記録したデータは必要に応じて瞬時に呼び出すこともできるでしょう。すなわち、製品の品質に問題が生じた際の原因や責任を容易に追求できることになります。

また、製品にICタグなどをつけておけば、どこにどのような製品がストックされているかも管理可能です。それにより、在庫の適正管理や棚卸しの簡略化も期待できるでしょう。

誰でも均一に品質管理を行える

品質管理業務をIT化することにより、誰でも均一な基準で品質管理を行えるようになります。業務をIT化するメリットは、「特定のワークフローを行えば標準的な業務が可能になる」点です。

もしかしたら、職人的経験や勘によって品質管理を行っている企業もあるかもしれません。業種によってはそういった部分を完全に削るのは難しいところですが、業務をIT化すれば製品の品質を見える化しやすいため、容易かつ正確性の高い管理が可能になるでしょう。

誰でも均一に品質管理を行えるということは、裏返せば業務の属人化を防げるということにもなります。特定の従業員がいなければ回らない業務がある場合、当人が欠勤したり退職した場合に業務が滞ってしまう可能性があります。

誰でも均一に業務を行えるワークフローを確立しておけば、その心配を軽減できるでしょう。

管理コストが軽減される

品質管理業務をIT化すれば、管理コストの軽減効果も期待できます。業務をIT化するメリットには、「従来の業務を効率化してワークフローを省略し、工数を下げる」というものもあります。

品質管理業務の一部をITによって自動化・省略可できれば、その分の人的リソース削減が可能です。節約したリソースはそのままコスト減に繋げることもできますし、あるいはより重要度の高い業務に移行させることもできるでしょう。

人的コスト以外にも、たとえば適正な在庫管理による省スペース化(保管費用の削減)。そして、業務のペーパーレス化による消耗品費の削減も見込めます。

品質管理のIT化事例

では、最後に品質管理のIT化に成功した事例をご紹介します。業務のIT化は企業によって意味や目的が大きく異なるため、これらをそのまま真似るのは難しいところもあるかもしれません。

しかし、エッセンスを取り入れることは可能です。これらを参考にし、自社ならではのIT化を目指しましょう。

業務のIT化により、デジタル管理の基盤を構築:マルハニチロ株式会社

マルハニチロ株式会社は、漁業や養殖などを主体とした総合食品メーカーです。業務の属人化やミスの軽減・業務の見える化を目的し、総合的な生産管理システムの構築を行いました。結果、在庫回転率、ロットトレース時間の改善など、品質管理面でも大きな成果を得ることができました。

10年後を見据えてシステムの再構築を行った事例:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社

日鉄ケミカル&マテリアル株式会社は、新日鐵住金グループ内で化学事業分野を担う中核企業です。従来はグループ会社や部門間で統一されたシステムがなく、業務の属人化や情報連携の難しさに悩んでいました。そこで10年後を見据えシステムの再構築に取り組んだところ、データの一元管理化・情報の連携化が可能となり、品質管理業務の効率化に成功しました。

特定が困難だった問題を発見し、自動修正:有限会社共伸精機

有限会社共伸精機は、各種樹脂成形金型の設計・製作や各種金型部品加工などを手がけている会社です。同社が品質管理システムを導入したところ、2,000以上の箇所で問題が発見されました。システムにより自動修正を行うことで、工数の削減を果たし、業務効率化に成功しました。

まとめ

品質管理の手法には「トレーサビリティ」「PDCAサイクル」「不良分析」などが挙げられます。トレーサビリティを取り入れることで製品の製造プロセスの追跡ができるようになり、顧客満足度や市場へのアピールが見込めるでしょう。

また、PDCAサイクルを適切に回すことができれば、管理プロセスの改善が。そして、不良分析を行えば品質に問題が生じやすい箇所を特定することができ、品質の向上に繋がります。

そして、品質管理をIT化することにより、トレーサビリティの強化やコスト削減効果が期待できます。自社の品質管理業務をしっかりと分析し、適切なシステムの導入を目指しましょう。