働き方改革・生産性向上を進めるうえでのIoTとは?導入事例も紹介

ビジネス

働き方改革のキーワードの一つ「生産性向上」を図るためには、製造業の視点から見れば、工程のムリ・ムラ・ムダを洗い出して改善するところから始めるでしょう。つまり「業務プロセスの可視化」がまず求められるわけですが、これはテクノロジーの力を借りれば難しくありません。
「モノのインターネット」と訳されるIoTは、製造業における働き方改革で、大きな働きを見せます。事例を交えてご紹介していきます。

世界の製造業におけるIoT

製造業における技術革新を振り返ると、これまで3度の産業革命が起こり大きな技術革新を担ってきました。そして今は、第4次産業革命の時代といわれています。それぞれの技術革新の特徴をまとめてみます。

第1次産業革命:1700年代後半のイギリス:工場の機械、蒸気、資本主義の原型誕生
第2次産業革命:1800年代末のアメリカやドイツ:電気、石油、化学、鉄鋼、大量生産、軽工業から重工業、大量消費時代
第3次産業革命:1970年代~:コンピュータの導入、自動化
第4次産業革命:ドイツ政府が推進イするインダストリー4.0、スマートファクトリー、IoT、CPS

インダストリー4.0

「インダストリー4.0」にはIoTが大きく関わってきます。インダストリー4.0とはドイツ政府が推進する、製造業の高度化を目指す国家プロジェクトです。「スマートファクトリー」はインダストリー4.0の重要なキーワードで「考える工場」と訳され、そこにおける高付加価値を与えたモノやサービスの製造に、IoTは必須の技術になります。インダストリー4.0とはモノとインターネットの融合のみならず、モノとモノ、複数の業務プロセスも融合させます。

インダストリアル・インターネット

米国の「インダストリアル・インターネット」を主導するのはゼネラル・エレクトリック社ら大手5社が組織する「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」です。米国発のこの技術革新は、製造業のみならず、エネルギー、ヘルスケア、運輸、製造業、公共の5つの業界を対象とします。インダストリアル・インターネットは、IoTが収集したデータを、CPSが加工・分析し、将来的には産業ロボットが指示を出すまでになる世界を目指しています。

中国製造2025


出典:日本経済新聞

中国2025とは、建国100年を迎える2049年までに、中国が「世界の製造強国のトップ国家群入り」することを目指す長期発展計画3段階の第1段階の呼称です。「2025年までに世界の製造強国入り」することを目指し「中国製造2025」と呼んでいます。第2段階では、2035年までに「世界の製造強国群の中位」に、第3段階では、2045年に「製造強国のトップ」になることを掲げています。「5つの基本方針」を設け、「品質優先」「環境保全型発展」「人材本位」など、中国製造業の問題点是正にも併せて取り組みます。

スマート・ファクトリー

先述のインダストリー4.0、インダストリアル・インダストリー、中国製造2025は全て国家プロジェクトですが、日本も世界の流れに追随して、2017年に「コネクテッドインダストリーズ」という戦略を発表しています。「第4次産業革命」と呼ばれる世界的な技術革新において、IoT技術を採用したスマートファクトリー(考える工場)は重要なキーワードです。スマートファクトリーは、どのようなことを可能にするのでしょうか。

リアルタイム分析が可能に

スマートファクトリー(考える工場)の第一の特徴は、工場の機械に搭載したセンサーから工場の稼働情報をリアルタイムで収集できることです。従来のオフラインのデータ管理、バッヂ処理とは異なりリアルタイムでデータを確認できるため、素早く不具合や故障を認知できます。設備がインターネットにつながることで、リアルタイムでの対処が可能になりますし、収集されたデータは予防策を立てるために有効に活用できます。

継続的なモニタリングで新ビジネスも

下記は、モニタリングによって誕生した新しいビジネスモデルです。今後このようなビジネスが誕生していくでしょう。

ロサンゼルス市では、パーキングメーターに埋め込まれたセンサーから駐車スペースの空き状況をリアルタイムに把握し、空車率、すなわち場所の需要度に応じて駐車料金を変更するという取り組みを実施しています。これにより駐車場の売上は全体で2%増え、逆に顧客が支払う平均駐車料金が11%減、駐車場利用率11%増という成果を実現しています。
アクセンチュア

 遠隔操作が可能に

スマートファクトリーは、現場でのオペレーションのみならず、遠隔操作ができるようになります。家電でも一般化した遠隔操作が工場用機械に応用され、温度調整のための出力抑制や、オンオフ操作も可能になります。遠隔操作の普及を可能にするのは、次のような技術の発達です。

  • 多様な無線通信技術の普及
  • IPv6 IPアドレスVer.6IPアドレスの枯渇問題を解決)の実用化
  • 機器(モノ)と操作する側のデバイス(スマートフォンなど)の発達

働き方改革とIoT

高齢化により人材確保が厳しい将来を迎える日本にとって、労働生産性の向上は必須課題であると「働き方改革」は訴えています。他国においても、生産性向上のために、IoTなどの先端技術導入を国家プロジェクトにこぞって導入しています。それがスマートファクトリーや、日本で言えば「コネクテッドファクトリー」です。
2018年版ものづくり白書は、IoT化で生産性向上に成功した日本の製造業の事例を取り上げています。いずれもIoTにより収集したデータの活用に成功した事例です。

ワールド山内

北海道北広島市の(株)ワールド山内は板金・プレス業の下請け業者です。同社はIoT を活用し、工場の稼働状況を「見える化」することで、生産性向上を実現しました。生産工程の見える化には、2003 年から先進技術を導入して取り組みました。独自で開発した生産管理システムは、すべての設備をネットワークで管理します。自社開発ソフトウェアを工場の機械に搭載し、進捗や不具合などをシステムで分析。そのデータはタブレットやスマホで社員全員が確認・共有できる体制を敷いています。

日進工業(株)

日進工業(株)は自動車部品加工などをおこなう自動車サプライヤーです。工場のIoT 化に伴い設備稼働状況監視システムを自社開発しましたが、のちにこの製品を販売する新ビジネスを展開し、子会社としてITソリューション会社も立ち上げました。IoT時代の新ビジネスモデルの好事例を示したといえるケースです。IoTが話題になる前から製造業の IT・IoT 化に着目し、稼働データを読み取り伝票を自動印刷するシステムをはじめ、様々なIoT商品・システムを開発してきました。

(株)島精機製作所

(株)島精機製作所は、コンピュータ横編機、デザインシステムの世界トップメーカーです。アパレル業界市場のグローバル化、多様化を背景に、高速化が求められるなか、世界初の横編ニット業界専用 PLM ソリューションを開発しました。商品企画から生産までのプロセスを可視化し生産効率の改善に成功し、世界初の横編ニット専用 PLM(製品ライフサイクル管理)システム を開発しました。顧客とのデータ共有も可能で、全工程のトータルトレーサビリティを実現しています。

まとめ

日本のものづくりを支える製造業に、IoTなど最先端の技術が上手く導入された事例をご紹介しました。特徴は、モニタリングしたデータをタブレットやスマホで遠隔管理できることと、蓄積されたデータを分析に用いることが出来るため、機械動作の精度を向上できることです。生産性向上のための改善点が格段に洗いやすくなったうえ、今後続くであろう技術革新によってスマートファクトリーの機能性はもっと向上するでしょう。